朝の散歩ついでにライプツィヒ音楽軌道を少々たどってと思いつつ、
やおら「ライプツィヒ・オールスターズ」の紹介展示に足を止めてしまったわけですが、
その展示コーナーのあったパサージュはこのような中庭につながっておりましたよ。
右側の壁には音楽軌道のところどころで見かける解説板が取り付けられておりまして、
今ではメンデルスゾーン音楽演劇大学になっている、かつてのライプツィヒ音楽院がここにあったことを
教えてくれているのでありました。メンデルスゾーンがイニシアティブをとって1843年、
ライプツィヒ音楽院はまさにこの中庭から始まったのだということで。
そして、この旧音楽院跡の目と鼻の先にあるこちらの建物にも、やはり音楽軌道の解説板がありますけれど、
まず目を引くのは中央入り口上にある像ですな。見上げてみますと、「ああ、これは!」と。
神聖ローマ皇帝マキシミリアン1世の像でして、いささか細おもてに過ぎる気もしますが、
デューラー描く肖像画に通ずるところはあるなあと思ったものでありますよ。
ライプツィヒは歴史的に商業都市として知られるわけですが、それを確固たるものにしたのが
皇帝マキシミリアン1世によって定期市(メッセですな)の開催が認められたことによるのだそうな。
帝国領土内で初めてとなるライプツィヒメッセの400年を記念して、
19世紀末に皇帝の像とともに銘板が取り付けられたということです…が、
音楽軌道の解説板に書かれてあるのは別のことなのでありまして。
日本語訳では織物会館と呼ばれたりもするゲヴァントハウス、今ではすっかりコンサートホールとして認識されますが、
その織物会館、ゲヴァントハウスの初代の建物はこの場所に建てられていたのだということで。
1781年、会館の中で演奏会を開いたのが始まりで、今のコンサートホール、ゲヴァントハウスに繋がるわけですね。
でもって(先に一度お目に掛けましたですが)こちらが現在のゲヴァントハウス。
名前はそのままながら、今では完全にコンサートホールとなっておりまして、
夏のオフシーズンではあったものの、ちょうど滞在期間中に開かれる演奏会を見つけ、出かけることに。
と、これはドイツの「ぶらあぼ」みたいな、演奏会開催情報などを紹介している「concerti」という冊子の抜粋ですが、
枠囲いのところが(2019年)8月31日(土)にライプツィヒでは20時からゲヴァントハウスで開かれたコンサートです。
ライプツィヒ・ゲヴァントハウス管弦楽団の、まさしく本場もの演奏会で、
現在のシェフであるアンドリス・ネルソンス(今年2020年のニューイヤーコンサートを振ってました)が振って
バルトーク、ドビュッシー、ストラヴィンスキーが演奏されるとは楽しみにしていたわけでありますよ。
さりながら当日出かけてみますと、プログラムとソリストが変更になっておりまして、
当初は上の情報誌にありますようにアンドラーシュ・シフのソロによるバルトークのピアノ協奏曲第3番だったものが
マルティン・ヘルムヒェンの独奏でモーツァルトのピアノ協奏曲第17番K.453に代わっていたのですなあ。
心構えとして(?)20世紀音楽というまとまりで期待を高めていただけに、ここで拍子抜けしたことも
なかなか演奏に入り込めないという原因にもなってしまったのでありましょうか、
ニューイヤーでご覧になった方は想像がつくと思いますが、ネルソンスのきびきびとした指揮が
「そうそう、こういう曲だよね」というには十分ながら、どうにもそれ以上でもそれ以下でもなく…。
個人的にはなんだか残念な思いの残る演奏会ではありました。
…というようなことを自宅で書きながら、
生演奏を聴きそこねたアンドラーシュ・シフのピアノ演奏をCDをかけておりましたですが、
このCDの収録曲がなんとまあモーツァルトのピアノ協奏曲第17番だったのですなあ。
おそらく手持ちの中でシフのピアノはこれ一枚だけというにしては、なんたる奇遇といいましょうか。
ずいぶんと以前ですが、やはり中古CDショップに立ち寄った際にこのCDが流されており、
「今かかっている、これください!」と言って買ってきたという曰くつき。
そんなこともあって、シフの生音を過剰に楽しみしていたのかもしれませんですよ。
ただ旅先での経験としては、この後、ライプツィヒ歌劇場でもって
ゲヴァントハウスの無念を大いに晴らす(?)ことに。と、そのお話はまた別に機会に。