大阪の万博記念公園を巡っては「廃墟感が…」てなふうに勝手なことを思ったりしたわけですが、

ふらふら歩き回るうちに「現代美術の森」なるところにたどり着いたのでありますよ。

 

 

木立の中のそこここにオブジェが点在しておりまして、

万博開催35周年を記念して2005年にオープンしたのが「現代美術の森」であるということですが、

展示点数がオフィシャルサイトの中で、13点とあったり、14点とあったりするのはどうしたことでしょう?

 

決してケチをつけたいわけではありませんが、まあ、園内を歩き回っておりますと、

万博当時の展示物などが各所にオブジェとして置かれてありますので、

ま、園内で現代アート的なるものとの遭遇率はけっこう高いとは言えましょうかね。

と、そんなことはともかくとして、早速に作品を眺めてみることにいたしましょう。

 

 

この作品などは相当に素直な方でしょうかね。「床屋か歯医者の椅子みたいだな」と思ってタイトルを見れば

「男 床屋の椅子と髭そり」とある。なんだ、まんまではないか…と。ですが作者の言葉はこのように。

この作品では床屋がお客の喉にカミソリを当てる瞬間をとらえている。リラックスして椅子に横たわらなければいけない。が、よく知らない床屋を信頼もしなければならないという状況を劇的に表現している。

単に床屋の椅子に座る男と床屋をイメージさせるというだけならば、

そこには写実で勝負するとかいう話しかなくなってしまうところながら、

実は安穏と座ることと刃物をあてがわれるという緊張の同居があるということにハッとさせられる、

まあ、ここがポイントなのでありましょう。

 

オブジェは黙って語りませんでけれど、見る側には語り掛けが伝わるような。

このへんが芸術作品の面白いところなわけですね。

 

 

こちらも分かりやすい作品ですね。ビルの一室で何やら仕事をしているふうでもある。タイトルの「夢の貿易会社」とは、

夢のような貿易会社の仕事風景であるのか、あるいは「夢」を貿易の対象としている会社なのか。

 

いずれにしても物語がいくらでも膨らませそうな感じではなかろうかと。もっとも作者にしてみますと、

「標準化され、正規化されたサラリーマンの日常を切り取り、現代の文化や人について熟考することで、

我々自身の生について振り返り、再び光を当てたいと考えた」となるのですから、「夢」という言葉は

多分に揶揄であるのかもしれませんですなあ。こうした、受け止め方の食い違いもまた楽しからずやです。

 

 

まあ、全部が全部、想像力のついていける作品ばかりではありませんけれど、

木立の中にあってすでにそこにあるものとして見過ごしてしまいがちな屋外アートにも

ちと足を止めてぐるりひと回り眺めてみれば、「ん!」という何かしらの発想が湧くものだということを思い出した

万博記念公園の現代美術の森なのでありました。