大阪・万博記念公園をして「廃墟感がある」てなことを申しましたですが、
当時の建物として太陽の塔以外に唯一残されているのが鉄鋼館ということになりましょうか。
今では「EXPO'70パビリオン」となって、大阪万博の記念館となっているということです。
元々の鉄鋼館はも日本鉄鋼連盟が出展したものとあって、
とにもかくにも「鉄」がテーマだとばかり思っていたのですけれど、実は「音」が主役でもあったようで。
建物中央は大きな円形のホールになっておりまして、1008個ものスピーカーが天井、壁面、床下に配され、
音響勝負の側面もあったというのですから。
常設展のコースでは、「スペースシアター」と名付けられたこのホールを当時のままに見ることができるのですな。
武満徹を演出プロデューサーに迎え、このホールでは武満自身の作品はもとより、クセナキスや高橋悠治などによる
前衛的な音楽に身を委ねる体験ができたことでありましょう。
前衛音楽を思うとき、「鉄」のイメージは必ずしも遠くないようにも思うのは
単に自分個人の印象に留まらないことであったかと、鉄鋼館のその実に触れて思ったものでありますよ。
と、そのような「スペースシアター」を中央して、それを取り巻く通路部分には
1970年大阪万博にまつわる展示・解説がありまして、そこからさまざまなデータを拾ってみるといたしましょう。
まず、万博の入場料ですけれど、大人が800円、小人400円。果たして安いのか、高いのか。
さる統計によりますと、1970年当時の映画館入場料が300円~400円だったようですので、
決して安いものではなかったとは言えようかと。ま、当時の感覚としては世紀の祭典ですものねえ。
(17時以降に利用できる夜間入場券は半額だったようです)
総入場者数642万人余、迷子が4万8千人余で、尋ね人は12万5千人余。
映像を見ても会場は人、人、人…。ごった返していたようすが偲べますですね。
ちなみに会期中、会場内では出産が1件あったそうで、
きっと万博ベビーなどと呼ばれたことでしょう(その方も、今年で50歳ですか…)。
とまあ、ごった返す会場内で緊急連絡などのために配備されたのが電気自転車であったとか。
未来の乗り物と目されたかもしれませんですが、今からみるとなんともレトロ感が漂っているような。
未来イメージにも関わらず、レトロ感のようなものを感じてしまうものとしては
こちらも同様でしょうか。昔のSFに出て来そうではなかろうかと。
エスコート役を務めたという「ホステス」の方々が
このようなコスチュームで会場内にいるのを見かけると「未来」を感じたのでありましょうか…。
ついついぼんやりと遠くを眺めるような目をしてしまいそうな、そんなEXPO'70パビリオンなのでありました。