まだ日のあるうちに横浜中華街 をふらりとした折、

さてひと休みと普段ならばコーヒーでもと思うところながら、

何せ場所が中華街ですから「ここはひとつ中国茶でも」と入り込んだのが

関帝廟からもほど近い悟空茶荘でありました。


中国茶の香りと味を十二分に堪能するための極意(とは大げさですが)を

店員さんに教わりながら喫茶のひとときと考えたわけですが、そんな折も折、

「ジャジャ~ン!」と、ステレオタイプ的に中国っぽさを演出する音楽が流れ始めたのですなあ。

気付けばちょうど店内イベントとして開催される「布袋戯」の始まりだったという。


お店にあったチラシによりますれば、「布袋戯」とは「中国に古くから伝わる指人形劇」であると。

さりながら「なぁんだ、指人形…」てなふうに思うと、たちどころに印象は覆るのでありますよ。


布袋戯@悟空茶荘

簡易な舞台、布の裏側に身を隠した演者ひとりが両手にはめた人形を使い分け、

物語を演じるのですけれど、観客側からどう見えるかは演者側から見えない。

それを見る側にとって「ああ、いい動きをしとるなあ」と思わせるには

かなりの修練が必要なのではなかろうかと思うところです。


ちなみに演目の合間に入る語り口調がなんともとってつけたような中国訛りふうの日本語。

ゼンジー北京(昔、「大正テレビ寄席」のような寄席番組によく出ていたマジシャン)を

思い出さずにはおれない独特の語りに「まさかね…」とは思ったですが、

後から調べるとやはり演者は日本人。ただステージネームはチャンチンホイと中国風。

実はの名前もいわばインチキ中国名であるそうな。


そうは言っても、このチャンさん、中国に留学して京劇俳優となる一方で、

布袋戯を台湾の人間国宝・陳錫煌のお弟子さんに学んだとかいうことでして、

決して生半可なものではなさそうです。


とまあ、思いがけずもかような見世物に接したものですから、

改めては「布袋戯」のことをあれこれ検索したりしましたところ、

いやあ、チャンさんの一人芝居に関心しているどころではありませんなあ。


台湾では伝統の布袋戯にCGを加えて、なんとも壮大な映像を造り上げているようす。

「霹靂布袋戯」なんつうふうに言われているようですけれど、

いわゆるゲーム好きの人たちにはツボでしょうなあ。


たいだいゲームの中の登場人物を、CGなどを駆使していかにリアルに作ろうとも、

そこはそれ、人間を実写したものとは違いますよね。映画「アバター」なんかもそうですが。


それが「霹靂布袋戯」では、そもそも登場人物は人形なのですから、

むしろ反って感情移入が容易になるのではなかろうかと思うところです。


さしあたりNetflixあたりで見られるてなことでもありますが、

やがてはBS、そして地上波でも見られるときがくるかもしれませんなあ。

それまではYoutubeでさわりを見ておくことにいたしましょうか。

もっとも素朴な布袋戯の技を見るにはチャンさんの動画を検索した方がいいかもですが。