と、本居宣長記念館
を後に松坂城跡
から下ってまいりますと、
かように長い長い屋根の連なりが見えるのですなあ。
御城番屋敷というものですけれど、
「松坂城御城番、四十石取りの紀州藩士二十人の組屋敷として」
文久三年(1863年)に建てられたのだそうでありますよ。
もちろん改修はしてのことと思いますが、
「今なおその子孫を含む多くの人々が日常生活を送っている建物」であるとは、
木と紙の建物の国・日本では珍しいのではないでしょうかね。
そんな御城番屋敷もある辺りは静かな住宅地。
その中にひっそりと佇む(たまたま案内ガイドマップで見つけた)食事処へ向かうことに。
少々遅めの昼飯というわけで。
実は松阪に来たからにはやはり松阪牛くらい食して帰るかと思っていたですが、
いいものは値段もそれなりであることは覚悟していなければいけなかったようで。
個人的に想定するレベルをはるかに超えた贅沢であるとも思えましたし、
先に訪ねた旧長谷川邸のボランティアガイドの方が
「地元の人間はあまり食することがない(高いから)」とも聞いて、
一度はこんなんで「食べた」ということにしようかと思ったりもしたわけです。
これはこれでおいしくいただきはしましたけれど、松阪での最後の食事に臨んで
「やっぱりモー太郎弁当だけではねえ…」という気持ちがむくむくと湧いてきて。
で、立ち寄ったのがこちらの食事処、松燈庵でありました。
「旧き良き時代 蔵のある和食処&カフェ」をキャッチフレーズに、
確かに趣きある店内(食べるのにそわそわして写してはいませんが)で
おちついたくつろぎの得られるお店だと思いましたですよ。
オーダーは松阪らしく「豪商のまち御膳」ということにして、
あれこれの食材とともに松阪牛の陶板焼きをいただくことにいたしました。
すき焼きと陶板焼きとで大いに迷ったものの、まあ、モー太郎弁当も食したことですし、
決して肉の量が多いわけではありませんからなるべく牛肉そのものの味わいを
大事にいただくことを念頭に置いたのですな。
つけだれがいろいろと出てきて味のバリエーションも楽しめたわけですが、
思いのほか塩で食すのがいいですね。肉本来の味をしっかり受け止めることができます。
「A-5」ランクですよという証明書まで見せてくれる本物の松阪牛、おいしくて当然。
(ですが、個人的にはかような贅沢はしばし遠ざかるべしと肝に銘じて…笑)
ところで、後付けながらそもそも「松阪牛」なるものを探究しておきたいと思いますが、
まずもって「三重県内の限られた生産地域(旧22市町村)で肥育した、
出産を経験していない黒毛和種の雌牛」、これを「松阪牛」と呼ぶのだそうですね。
ブランド牛として夙に知られたところですけれど、
日経MJ「国産ブランド牛」調査(2013年)では、品質、味、安全性の高さ、ブランド力、
知名度など、17項目中9項目でトップ評価を得て、総合評価で断トツの第1位であったそうな。
まあ、高いのも致し方無しだったのですなあ。
かほどなブランドである「松阪牛」を最後の最後に堪能したところで、
このほどの伊勢路紀行は全編の語り終えとなりまする。
訪ねきれない場所も多々ありはしたものの、
旅自体は大いに満足できるものだったなと思いつつ、帰途に就いたものでありました。






