年始には友人と七福神巡り をしたりすることがありまして(正月休みの運動不足解消ですな)、半ば恒例行事化しつつあったのですが、今年はちとタイミングが合わずに見送りに。


ところで、七福神というのはそれぞれ異なるご利益を司る神様を集めたもので、

いわば「ご利益の百貨店」みたいなところがありましょうけれど、

寿老人が延命長寿の神様であるのと同時に、福禄寿もまた道教の長寿神であると。

つまりは、かほどに人は長寿にあこがれ、長命を寿ぐ傾向があるということかもですなあ。


と、そんな思いを巡らしつつ2019年最初のEテレ「にっぽんの芸能」 を見てみれば、

登場した人間国宝の筝曲家・米川文子は1926年生まれとは御歳92歳でらっしゃる。

矍鑠とした琴の弾きぶりを見ておりますと「ほお~」と思いますし、

こういう方が「松竹梅」なるおめでた系の筝曲 を演奏されますとありがたみが増すような気も

してくるようでありますよ。


で、このあとのお話は、都心で午前中に小雪の舞った寒い寒い日に2019年の演奏会始め、

読響 の演奏会を聴いてきたということにつながるのですが、いやあ、長い前置きですな(笑)。


読売日本交響楽団第213回土曜マチネーシリーズ@東京芸術劇場

とまれ、話の枕とのつながりは何ぞということですけれど、プログラムの1曲、

ラヴェルのピアノ協奏曲のソリストとして登場したピアニストがホアキン・アチュカロでして、

何とまあ1932年生まれだそうですから、御歳86歳でしょうかね。


ラヴェルのピアノ協奏曲は(極めて個人的な印象によりますれば)

若い女性ピアニストが似合うような気がしてまして、

ちょうど先日放送されたEテレ「クラシック音楽館」(要するにN響の演奏会)で弾いていた

アリス・紗良・オットあたりはしっくりくるなあと思って見ておりました。


これは曲自体の持つ若々しさといいますか、

遊びにも溢れた、おもちゃ箱をひっくり返したといいますか、

そうした曲調から思うところでもあるわけですが、86歳のホアキンさん、

若々しく瑞々しく、そして「ここで飛び上がるぞ」的なところでは外さず飛び上がってくれたりして

お元気なところを見せてくれましたですよ。


鳴りやまない拍手の中で、何度もステージに呼び出しては大変なのではという思いをよそに

終始笑顔で何度も登場、アンコールではスクリャービンの左手だけのための小品を。


右手をだらりと垂らして左手だけで演奏するわけですが、

ピアニストにとっては片手を遊ばせて楽するどころか、

反って片手では負担が増すのではとも思うところながら、どうやら心配ご無用であったようで。


ところで、この日のメイン・プロはリムスキー=コルサコフの交響詩「シェエラザード」。

夜ごと王様に面白い話を聞かせ続けないと殺されてしまうというお姫様の立場ながら、

これを千一夜にわたって乗り切って生きながらえた…となれば、これもまた長寿の物語ですな。

(ちとこじつけで、プログラミングのキーワードが「長寿」であったとは思いませんが…)


とまれ、たっぷりした金管の鳴りっぷり、微細な弦のピツィカートは

コンサートホールならではの演奏体験となるところでありまして、この日の読響も祝祭感満載、

演奏会始めには験のいい曲と言ってよろしいかと。


そんな演奏会を聴きながら、長生きするなら楽しく過ごさないとと思う一方、

楽しく過ごしている人こそが長生きしているのでもあろうなとも。

長生きしたいと思っているわけではありませんですが、結果長生きは「あり」なわけで、

それは毎日の過ごしようであろうなと(ま、当たり前のことながら)思うのでありましたよ。