ちょいと前に、後にも先にも自ら買ったたった1枚の民謡のCDの話 をしましたですが、
きっかけはたまたま運転免許試験場の待合スペースのTVから聞こえてきた一曲であったと。


それと似たようなきっかけで、ふと聞こえていた曲が耳に残ってCDを買ったという経験が
もひとつあったなと思い出したものですから、今度はその辺のお話を。
もっとも20年以上も前のことなのですけれどね。


サイパン島のガラパン地区に定食屋兼居酒屋ふうの食堂がありましてよく利用しましたけれど、

昼飯はホテルの部屋でのんびりとと、食堂のひとつふたつ裏の通りにあるテイクアウトのお店

(食堂の系列店と記憶するも定かでない)に行ってみたわけです。


何をオーダーしたのかも忘れてしまいましたが、依頼のものが出てくるまで店先で待つ間、
店の奥にあったTVから何やら涼しげな印象の曲が流れていたのですなあ。


画面の中で歌っている人がカウボーイハットを被っておりましたので、
おそらくはカントリー・ミュージックの歌い手でもあろうと想像したものの、
およそ馴染みの無いジャンルですので、曲も歌手も全く知らなかったという。


幸いにも?かの涼しげな曲が終わるまで品物が出上がらなかったことで、
歌手の名はGeorge Strait、曲名は「Chill of an Early Fall」と知るに至ったわけですが、
日差しががんがん照りつける南の島の昼ひなかに立ち尽くしていた者にとっては
この「Chill of an Early Fall」というタイトルまでいかにも涼しげな曲が
清涼飲料水ごくりひと口と同じような印象であったのでありますよ。


で、帰国後にCDを探して購入したのがまさに「Chill of an Early Fall」という一枚。
タイトル曲が日本語では「秋風のバラード」というイージーリスニングっぽいものに
なっていましたけれど。


Chill of An Early Fall/George Strait

とまれ、このCDを聴き通して思ったところには、

「ああ、アメリカ映画の酒場でよく流れているような音楽でもあるかな」ということ。

ときにはにぎやかに、ときにはスローなバラードもあって。

「Chill of an Early Fall」に付けられた「秋風のバラード」というタイトルも

そんな印象から来ているのでありましょうね。


3曲目に収録されている「If I know me」も同系列でこうしたバラード系の曲ですけれど、

このCDでカントリー・ミュージックを聴いてはみたものの、

くくっと来たのはこれらのしみじみした曲なのであって、にぎにぎしい方に近づくには

慣れが必要だなと思ったものでありますよ。

映画の中のシーンで部分的に見聞きする分にはともかくです。


それにつけても酒場の音楽てなふうに言ってしまいましたですが、

カントリー・ミュージックはダンス音楽でもあるなあということ。

単に酒場で流れている以上に、にぎやかなのは皆で踊りまくる音楽でしょうし、

一方でバラード系が流れれば「さあ、チークタイムです!」といったような。


そんなところに加えて、

おそらくは「古き良きアメリカ」的なイメージのもとにある白人の音楽であるかなと思うとき、

良きにつけ悪しきにつけ「開拓者たちの心のふるさと」的存在なのかもしれんなあと。


そこらあたりに寄り添ってみることができれば、

あるいは「アメリカ文化」なるものに深く入り込んでいったならば

もそっとカントリー・ミュージックに近づくことができるかもしれませんですね。


個人的にはどうやらそうした深まりに至らなかった関係か、

その後も同系列の音楽ではウィリー・ネルソンを少々聴いたくらい。

それも「ええなあ」と思ったのは、「スターダスト」というスタンダードを歌ったものですから

カントリー・ミュージックに近づいたとは言えなかろうと。


とはいえ、全く無縁であったところの扉を少々開けて覗いてみた。

何事もこうした経験はふいに訪れるものなのでありましょう、たぶん。