先に国立国語研究所の一般公開イベント で見聞きしてきたところをもうひとつ。

方言に関してのあれこれでありますよ。


まずもってパネル展示で見かけたのは、

とある言葉を地域によってどう呼んでいるかの違いを探ったものですけれど、

あなたは(またはあなたの出身地では、でしょうか)どの言葉を使いますかとの問いに

使われたサンプルの言葉がユニークと言いますか。

答えとして用意された選択肢は次のとおりでありますから。


①バンソウコウ

②バンドエイド

③サビオ

④カットバン

⑤リバテープ

⑥キズバン


これだけ並ぶと、日常的にどれを使っている方でもおそらく「モノ」のイメージは

同じくなるように思いますが、同じものに対してこれだけ呼ばれようが異なるのですなあ。

もっとも中には明らかに商品名であって、たぶんその商品名をモノ自体の名前として呼ぶ場合は

それだけ該当地域におけるそのブランドの浸透度が高いということになるのでしょう。


で、それぞれの言葉の使われ具合ですけれど、

①のバンソウコウは関東に多く、②のバンドエイドはおしなべて関西に多いようす。

③サビオの利用が目立つのは北海道と山陽地方、④のカットバンは

全国的に使用されていると窺えるものの、東北地方に比較的多いような。

⑤のリバテープが使われているのはもっぱら九州から沖縄にかけてであって、

⑥のキズバンは全国的にぽつりぽつりと使われているようですね。

対馬では使用例があるようです。


とまあ、かようにモノの呼び方に違いがあるわけでして、方言分布を調べてみますと

東西対立型(東では「ナス」といい、西では「ナスビ」というとか)、

南北対立型(東北や日本海岸で「ユキヤケ」、本州太平洋岸から九州にかけて「シモヤケ」)、

はたまたABA型といって中心から離れたところに同一表現が出るようなパターンなどが

現れるのだそうで。


最後のABA型で思い出すのは柳田國男の「蝸牛考」ですけれど、

学問的には「方言周圏論」というらしいこの説はどうやら仮説の域を出ないということに

なっているのだそうでありますよ。


というあたりは方言の整理ということになりますが、

ある言語の中の地域特性みたいなものでもある「方言」が

実は「方言」という以上にひとつの「言語」だったりすることはないのか。

この辺はミニ講義で聴いた話になってまいります。


そもそも日本にはいくつの言語があるのか…ということに対して、

ユネスコが調査をしたところ、9つの言語があるとされたのだそうですね。

日本語、アイヌ語、八丈語、奄美語、国頭語、沖縄語、宮古語、八重山語、与那国語の9つ。

調査にあたってざっくりと示された「方言」と「言語」の違いとは

聞いて何とか分かるのが「方言」、ほとんど分からないのが「言語」ということであったようです。


ただ、この調査は詳細がよく分からないということらしく、
国語研では独自に調査をしてみたようですね。
例えば沖縄北方や沖永良部の言葉とされる国頭語と
宮古島のあたりで使われる宮古語との関係を、それぞれの話者の言葉を聞いて
それぞれがどれほど理解できるのかを実験したみたというのでありますよ。


結果としては互いに「ほとんど分からない」。
となれば、ユネスコ言うところの「言語」ということになりましょうか。


地域的には近いどうしでこうですから、

講座の中では実験に使われた音声を聴かせてもらいましたが、
それこそ関東の人間には理解のとっかかりが全くない。音を耳にするだけは

外国語(それも何国語か皆目見当のつかない)と同じ状態だと思えたものですよ。


かつて何かしらを通じて、イタリア語とスペイン語の関係よりも
日本のいわゆる共通語と沖縄の言葉とは遠い関係と聞いたことがありますけれど、
その沖縄の言葉というひとくくりもどうやら的外れであるようですね。


そしてドラマ「ちゅらさん」の中で聴けるような言葉は(ドラマでもあり)相当に
共通語化されたものであることを再認識いたした次第でありますよ。


ちなみにユネスコが分類した9つの言語のうち、
日本語を除く8つの言語は「消滅危機言語」とされているのだとか。
共通語化によって多くの人たちの意思疎通が可能になったとは言えましょうけれど、
そのやり方を含めて省みたうえで先を考えることは必要でありましょうね、きっと。