先月の読響公演でラモー の曲が取り上げられたところで、ラモーでお気に入りのCDである
歌劇「優雅なインドの国々」からの管弦楽組曲をまた聴きたくなったと言いましたですが、
よもやこの曲を原曲に近い歌唱入りの生演奏で聴ける機会が来ようとは。
中途半端に遠い横浜(とは、単に住まいから見てなだけですが)で開催される演奏会ながら、
そそくさと出かけていったのでありますよ。
ちなみに会場となったのは歴史的建造物たるこちらです。
以前、横浜に出向いた時にもつい写真を撮ってしまった横浜三塔 のひとつで、
「ジャックの塔」と言われている横浜市開港記念会館ですけれど、改めて見てみますと、
三塔の中では断然フォトジェニックさで優る建物だったのですなあ。
と、それはともかくそのような建物の講堂で聴くバロック音楽というのは、
それなりの雰囲気を醸すといいますか。
演奏はアンサンブル山手バロッコという古楽器の団体でして、
かつてテレ朝、今フリーのアナウンサー朝岡聡が創立メンバーのひとりであるところから、
この日もたっぷりMCで曲の解説をしてくれておりましたよ。
そんな解説のお陰によって、これまではただただ「音楽」としてCDに耳を傾けていたですが、
「ふむふむ、なるほど」と思うところがありまして、そのひとつがタイトルのこと。
「インドの国々」という言葉は今の感覚からするとしっくりこないところがありますけれど、
ここでの「インド」は「ヨーロッパ圏外の異国」の総称として用いられているのですな。
ですから、全体を構成する4つのエピソードで扱われるのは、
トルコであり、南米のペルーであり、ペルシアであり、はたまた先住民たちのアメリカでありと
様々なので国々なのでありました。
ここで余談になりますが、ラモーがこの曲を発表したのは1735年で
当時の「インド」という認識がかようなものであったとするならば、
それより200年以上も前に航海したコロンブスがアメリカ大陸に到着して
「インドと間違えた」とは言われるものの、実は間違えたという認識はなく
広い意味での「インド」の一部に到着したというふうに考えていたのかも…などと想像したりも。
と、それはともかく「優雅なインドの国々」なる曲は、先にはこれを歌劇と記したですが、
正式には「Opéra-ballet」であって、歌唱と舞踊が交互に演じられるような内容のようで。
そして曲を構成する4つのエピソードは相互に関連性はなく、オムニバス形式と言えますから
ひとつのまとまった作品を鑑賞するというより、娯楽性の高い要素を組み合わせたものと
言えましょうかね。
辛うじてプロローグ部分で語られる「愛の拡散」が
世界のさまざまな場所で「愛の成就」となって現れるのが4つの個々のエピソードという
大枠でのまとまり感はありますけれど。
そうした作品であることを知った上で曲を振り返りますと、
CDで管弦楽曲集として聴いていたときに、一曲一曲の個性がバラエティーに富んでいると
思われたのも当然ということになりましょうね。
今回、実演で聴けたことをもちろん良しとしているわけですが、
欲を言えばいつか踊りも付いた形で見られたらと思ったりしたのでありますよ。
それも、例えばプチ・トリアノンとかあまり大袈裟でない宮殿的なところでならば
これまた雰囲気でましょうなあ。