昨年ベルギーでワーテルローの戦跡 を訪ねたときから

(ワーテルローに直接関係はしないものの)ナポレオン 戦争との関わりから

この際だから読んでみるかいねと思っていたのでありますよ。

レフ・トルストイ作「戦争と平和」を。


ですが、大作なだけについついもたもたと。

そうこうするうちにCSでBBC制作のドラマ版(45分×8話)を年末に見る機会があって、

それでちょいと満足してしまったところもあったのですなあ。


さりながら、先にも触れましたように小説と映像化の違いを考えるに及び、

かの大作小説がドラマ版で描き切れているはずもないわけで。

(そもドラマ版が小説を描き切ることを目論んでもいませんでしょうし)


そんなことから改めて「読む」ことを企図し、GWに向かう今頃になって

ようやっと第1巻を手にとったと、まあ、そういう次第でございます。


戦争と平和(一)(新潮文庫)/トルストイ


かようなとっかかりですけれど、読み始めて即座に思いましたのは

ドラマ版で予習しといてよかったなということなのですね。


始まりは貴族たちが集う夜会の場面。ご想像のつくところかと思いますが、

長くまた必ずしも見た目に馴染みのないロシア名前の人たちが集まってくるわけです。

そして、誰もが公爵であったり、伯爵であったり、その一族郎党は愛称で呼び合ったりしますし。

(ニコライをコーリャといったり、アレクセイをアリョーシャといったりする、あれです)


早い話がなかなかにとっつきにくい幕開けであるところながら、

だいたいの登場人物をドラマ版で把握していたので助かったというわけですな。

ただ、太って鈍重そうなピエールがポール・ダノだったりするものですから、

ドラマのキャストと描かれた人物像(とりわけ外見)に印象の違いが生じて困りはしましたが。


とまれ、夜会ではせっせとコネクションを作っては猟官運動に利を得ようとか、

あるいは娘にいいお婿さん、息子にいいお嫁さんいないかしらと縁組が目論まれたりとか。

ある種「平和」とも言えるところにじわじわと迫り来るのがナポレオン率いるフランス軍の影ですな。


当時の常として(トルストイにしても若い頃は同様だったかもですが)

愛国心に燃える若者たちは続々戦場へと向かっていき、

ともすればそこで決戦に遭遇することを望むわけです。

若者なりの生きがいとしてだったり、はたまた功名心や出世願望であったりを胸にして。


第1巻の後半はもっぱら、アウステルリッツ会戦の話になっていきますけれど、

「講釈師、見てきたような…」ではありませんが、トルストイは戦闘のようすをよく描き出してますね。


会戦の場所は異なるものの、ワーテルローでも

かような戦闘が繰り広げられたのではという想像が浮かんでくるところでありますよ。

実に凄惨なものです。


前哨戦ではロシア陸軍ここにありと力を見せたものの、実際のアウステルリッツ会戦では

ナポレオン軍に完膚なきまでに叩きのめされてしまったロシア・オーストリア連合軍。

そんな中で、主たる登場人物のひとり、アンドレイ・ニコラーエヴィチ・ボルコンスキィは

ロシア軍の総司令官クトゥーゾフ将軍の副官ながら、一方で戦闘での功を思い、

一方で敵方ながらナポレオンという人物に畏敬の念(ベートーヴェン のような感じでしょうか)を

持っていた人物ですが、この戦いで生死をさまよう傷を受けることに。


傷ついて原野に横たわり、ふと見上げた大きな空に比べれば

「戦争も、ナポレオンも何もかもむなしい」と悟るアンドレイ。

フランス軍に発見され、捕虜となったアンドレイの運命やいかに…。

さあ、続けて第2巻を読まなくては(笑)。