ブリュッセルの王立美術館の中の古典美術館を訪ねてブリューゲルとルーベンスを見てきましたですが、
この調子で画家ごとに見て行ってはきりがありませんですな。
残りをひっくりめて落ち穂拾いとは不遜な物言いではありますけれど、さらっと見ていくことに。
まずはこの三連祭壇画ですけれど、ヒエロニムス・ボス作の「聖アントニウスの誘惑」。
その異形の造形ぶりにはブリューゲルのところでちと触れましたですが、大した才能でもあろうかと。
このレトロSFの世界とも言える思いつきにかけてはブリューゲルも及びませんなあ…と、
本来はそんなところにばかり目を向けていてはいけんのでしょうけれど。
お次はクエンティン・マサイスによる「聖母子像」。とてもとてもきれいな作品ですけれど、
これがあのロンドン・ナショナルギャラリーにある老女の肖像を描いた作家の作品とも思われず…。
もっともマサイスとて醜悪なるものばかりを描いていたはずもありませんですよね。
こちらはヘラルト・デ・ライレッセの「受胎告知」。いかにもバロック全開の作品で、
「受胎告知」の図像もずいぶんドラマティックに変わるものだなと思うところでありますよ。
少年の笑顔に思わずこちらも釣り込まれそうになる一枚は
「笑いの画家」とも言われるフランス・ハルスの作品。異名どおりにいい笑顔ですよねえ。
こちらはおそらく一目瞭然、「バベルの塔」ですけれど、
有名なブリューゲル作品に比べるとずいぶんと塔が高く積み上がっているようす。
ヨース・デ・モンペル2世(人物は別人だそうで)が描いたこの塔は確かに高くまで建設が進んでますが、
これだと天に届くのは無理なことに気付いてしまいそう。
ブリューゲルも土台の大きさからすれば天までとは難しいと想定できてしまいますけれど、
それでも描かれていない部分にはこれからという期待が持てなくもない。
ま、単にブリューゲルびいきなだけですが(笑)。
次いではちょいと目先を変えてだまし絵を。
南ネーデルラント派の作者未詳ということですが、わりと知られた絵ではありませんでしょうか。
ブログにあげる場合に写真の回転は簡単ですので、どうせですから向かい合わせにしてみましょうかね。
人物画としてみるのならばこの向きの方が適切なはずですけれど、
このようにしてしまうと結構印象が変わるような。
立てて見たときのことまでもそっと考えて描かれていたなら、作者未詳とはならなかったかも…とは想像ですが。
と、いささか時代を進めて、アングルの「『アエネイス』を読むヴェルギリウス」。
中世までの絵画に動きが乏しいのは技法の点で成熟を待つしかなかったのでしょうけれど、
新古典主義の静謐さはまた独特ですよね。バロックやロココへの反動があるにしても、です。
同じく新古典主義のダヴィッドが描いた「マラーの死」も同様ですけれど、これはまあ題材が題材ですから。
ですが、やはり背景に何もないことと併せて、この静けさは革命の熱狂との裏おもてのものでもありましょうかね。
とまあ、古典といっても範囲は広く、落ち穂拾いともなれば尚のこと雑駁な印象は免れませんが、
古典美術館に見どころが多いことには変わりはなし。しかも、どこも空いているのが(個人的には)最高です。
近くにあったら折り折りに立ち寄りたいところですけれど、そうも行かない現実ですから、
西洋美術館@上野の常設展でしのぐことにしておきましょうか(笑)。