ブリュッセルの古典美術館でもうひとり取り上げておきたのがピーテル・パウル・ルーベンスでして。

これまた10年前にブリュッセルからアントウェルペン、そしてオランダへと回ったときに

たぁっぷり見ましたなあ、巨大作品の数々を。例えばこのような。

 

 

全貌をつかむに苦労する、こうした大型作品が量産されたわけですけれど、

それは展示解説に「PETER PAUL RUBENS EN ATELIER」とありますように、

要するにルーベンス工房の作品なのですなあ。

 

 

ご本人はちゃちゃっと指図して「あとはよろしく!」てなもんで、

外交官(スパイ)としての役割が忙しかったでしょうから。

 

どうもルーベンスはその名が超有名なわりに「代表作はこれ」てな言われ方があまりないのはそのせいかも。

もっとも日本人にとってはアントウェルペン大聖堂の「十字架降下」が「フランダースの犬」との関わりから

代表作と目されているやもしれませんけれど。

 

ともかく工房作と言われてしまうといささか興ざめるところがあるわけですが、

ルーベンス本人が小さめの作品には素人がどうのこうの言えない画家の力量といいますか、

そうしたものが見てとれることは上野の西洋美術館にある小品からもよおく分かりますですね。

そんな一枚と言えそうなのが、こちらでしょうか。

 

 

「EN ATELIER」とは記されていないので、ルーベンス本人が描いているのでしょう、

「カトリックの信仰の勝利」という作品。

西洋美術館の小品でも、アントウェルペンのルーベンス・ハウスに残されたものを見ても、

筆さばきの早さ(忙しかったから?)はルーベンスらしいところではないですかね。

 

工房作の大型作品はきっちり塗り終えた、いかにもな「完成品」であるのに対して、

本人作は必ずしもそうではなくって、いくぶん粗い仕上げとも思えるところに

ルーベンスらしさを感じたりもするのでありますよ。

 

 

昔は筆跡を残さないような仕上げが求められたわけですが、ルーベンスは筆跡が残りまくり。

こうしたところはついつい「ああ、ルーベンスが描いたんだなあ」と思い巡らすことになったりしますものね。

 

と、そんな具合に小品を細かく見てみるのと同じような感じで、いざ超大作に立ち返ってみますと

工房作とは言ってもルーベンスのDNAがやっぱり入っているような気がしてくるものでして。

たとえばこんな部分でしょうか。

 

 

「描いてるなあ」って感じです。

こうしたことに思い至りますと、これまで「工房作ね」と言ってさらりと通り過ぎたりもしてきたのは

もったいないことだったのではないかとも思えたり。

なかには巨大作でないものにこうした作品もありましたし。

 

 

解説に「アトリエ作?」とあるので、もしかするとルーベンスと関わりなかったりするのかもしれませんですが、

この女性の肖像画はルーベンスが丁寧に描くと(?)こうなる・・・といったふうが濃厚ではありませんでしょうか。

 

ということで、10年前のベルギー、オランダでのたっぷりルーベンスが事始めとすれば、

今回は見直すきっかけといいますか、そんなことにもなった古典美術館のルーベンスなのでありました。

 

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