ムットーニ のオート・マタを見に、八王子 に出かけたのでありますよ。

八王子市夢美術館 ではたびたび「ムットーニワールド からくりシアター」なる展覧会を開催、

今回は4回目ということでありました。


「ムットーニワールド からくりシアターⅣ」@八王子市夢美術館


土日にはムットーニ自身が自作の動きに語りを合わせる「上演会」なるイベントが

開催されるものですから、開演時間ともなれば続々と人が詰めかけてくる。

以前にも上演会には接したことがありましたけれど、

これほどに混雑するのは初めてという状況でありました。

それだけ知名度が高くなったということなのでありましょうね、ムットーニのオート・マタが。


元来さほどに大きくはない作品であるだけに、

あまりに混雑してしまうと人の頭越しにしか眺めることができず、

そこらへんを推し量って前列の方はしゃがんでくださいというアナウンスもあるものの、

そうすると角度的に作品鑑賞が楽しめないてなことにもなる。

いやはやなのでありますよ。


なにせ、ムットーニ作品は小さく細かいですものね。

この精妙さに加えて、静謐さを湛えた作品も多いものですから

どうしたって作品世界に浸って思いを巡らすには、

欲を言えば他に誰もいない方がいいくらいだものでありましょう。


もっとも、フライヤー写真に使われた新作「ヘル・パラダイス」のように

ダンスホールのように賑やかな音楽を奏でるものもありますけれど、

例えばこれならこれで魔女のような歌姫に骸骨たちのバンドという具合に

独特の世界を展開しているわけで、それをどう受け止めるかと考えるには

やっぱりひとりで作品に向き合いたいと思ってしまうところでして。


まあ、絵画作品に接するときにも同様で…と考えてみれば、

そういう状況ばかりでなく、いついかなるときでも混み合っている状況は好まないという

性格の故でもありましょう。


とまれ、「ヘル・パラダイス」を見ていて思い浮かぶところは

「禿山の一夜」でありましょうかね。

夜中に魔物たちが大騒ぎを繰り広げるも、夜明けの鐘とともに静寂にかえっていくという。


作品自体は賑やかでもこうした思い巡らしを楽しむには

やはりひっそりとした感があった方が思うわけですが、こうした怪しい系の作品でなくして

父親の夢を子に語り継ぐといったシチュエーションの「ギフト・フロム・ダディ」や

摩天楼の片隅にある小さな公園で男女が束の間の逢瀬に月を眺める作品のように

ほのぼの系、ほんわか系ではなおのこと、ひとり静かにといきたいところ。

若山牧水の酒ではありませんが、ムットーニはひとり静かに見るべかりけりでありましょうか。


そう考えると、ムットーニ自身の語りによる上演会は面白いと思うものの、

見る側が勝手な想像を広げるには敢えて上演会の無い日に出かけた方が

いいのかもしれませんですねえ。



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