この間のTBS「世界遺産」 ではウィーン歴史地区を取り上げて
「危機にさらされている世界遺産」に指定されてしまったてなことを紹介しておりましたなあ。
ベルヴェデーレの上宮からなだらかな斜面越しにウィーン中心部を見晴らすとき、
ちょうど正面になるあたりに高層ビルの建築が予定されていて、これが建てられては
世界遺産たる景観が台無しではないかというのが、当面の危機であるようで。
具体的にはコンツェルトハウスとインターコンチネンタルホテルの間のようですから、
冬場にはスケートリンクになる、あの場所でしょうか。
確かにベルヴェデーレからの見晴らしには邪魔な存在になりそうですけれど、
番組で見たところでは計画されているビルは十数階程度のような。
今日もはや高層ビルとも言えないくらいのものでもありそうです。
それにリングからは裏通りに当たるので中心街を観光してあるいている限りでは
おそらく全く気にならないのではなかろうかと。
だから「危機」とまで言わずとも良いんでないの…とまでは言いませんですが、
大きな都市がそのまんまでいるということの難しさは感じられますよねえ。
都市の機能が生きているからには利便性やらも追及することになりましょうし。
現にドレスデンがエルベ川に新しい橋を架けたことで
世界遺産登録を抹消されたりしていますけれど、
ひとえに「世界遺産」の看板を頼りに観光に依存する小都市ならばいざ知らず、
大きな町をまんま温存することは何とも難しいことでありましょう。
そうはいっても一方で、世界遺産であるかどうかに全く関わりなく
ヨーロッパの町々では昔ながらの建物を基本的には活かして使う方向性がありますね。
ベルギーのメヘレン
でもぶらぶら歩きの道すがらに工事現場に出くわしましたが、
どう見ても由緒がありそうな建物でなく、むしろ感覚的にはぶっ壊して建て直した方が…と
思うところながら、現場を見る限り外側は生かして中を大改装する方向のようですよね。
こうした考え方の基本路線が世界遺産の委員会の方々の中にも息づいているのかもです。
まあ、単に観光客目線でいうのならば、
こんな感じの建物ならば保存して使ってほしいものだと思ったりしてしまいますが、
実際にその都市空間で生活する人の考えるところとは必ずしも一致しないもの。
冒頭のウィーンの例でいえば、ウィーンの行政側はどんなふうに考えているのかなと思えば
番組のインタビューに答えた市の担当者は焦点になっているビルの建築推進派であるようで。
元よりウィーンくらいになればこのことで仮に世界遺産登録が抹消されたとしても
おそらく観光的には痛くも痒くもないでしょうしね。
話の規模は小さくなりますけれど、日本で国の登録有形文化財(建造物)になっても
維持管理に関しては別に国が何かをしてくれるわけではないことに、以前触れましたですね。
同様に世界遺産登録された場合にも、こうでなくてはいけない、ああしてはいけないという
義務や制限ばかりがあって、ユネスコが何か手を差し伸べてくれるわけではないのでしょう。
これまでに世界遺産登録を抹消されたのは先のドレスデンと
オマーンにあるアラビアオリックス保護区の2例だけということですが、
世界遺産ともなると保護のためにファンドができやすかったりもするのかも。
ちなみに国の登録有形文化財であったものが抹消されたケースで
「解体等によるもの」は181件だそうで。
もうこれ以上個人で維持し続けるのは無理ですということかもですねえ。
あれもこれもいっしょくたに話をするのは適当でないとも思いますが、
保存保全にはいろいろな観点がありましょうし、ひとつの方向だけから
「かくあるべし」みたい言うのではうまくおさまらないところでもありましょう。
なかなかに難しい問題ではありますね。
と、本当はウィーンの話は単にまくらとしてメヘレンの街歩きの話をするつもりだったですが、
またしてもまくらが長くなってしまいましたなあ。