以前、プロコフィエフのピアノ曲のCD のお話をした際に、
昨年6月に(ああ、何と時間が経ってしまったことか…)まとめ買いしたCDの中から
次に取り上げるのもやはりピアノ曲でと申し上げたままになっておりました。
それがこちらでございます。
スウェーデンの作曲家、ヴィルヘルム・ペッテション=ベリエルのピアノ曲集ですが、
そも作曲者の名前(Wilhelm Peterson-Berger)はCDには「ペッタション」とあり、
検索で一般的なのは「ペッテション」でありという具合。
試しに「Peterson」のスウェーデン語での発音(こんなのも今ではすぐに聴けるのですなあ)を
聴いてみますれば、どうも「ピエタソン」と言っているような。
例によってカタカナ書きは難しいものですから、
取り敢えずここでは(CDでなく)一般的な方に従って「ペッテション」としておきますかね。
ところで曲のタイトルの方ですが、
組曲「フレースエーの花々」というもので第1巻から第3巻までその全曲が収められておりますよ。
ご存知のように北欧、スウェーデンの冬は厳しく長いですね。
しかもタイトルにあるフレースエーとは、スウェーデン中部のイエムトランド地方、
ストゥール湖にある島の名前となってきますと、そこに花々が咲く季節というのは
とても限られた時間なのではなかろうかと思うところです。
それだけに3巻で21曲に及ぶ小品は太陽の恩恵に受けて楽しく陽気に過ごすようす、
またそんな時間を慈しむようすが曲調に表れているものと思うわけなのですよ。
特にこの曲集で聴きたかった第1巻の第2曲「夏の歌」は実に素敵な曲でなのありますよ。
第1巻第5曲の「お祝い」、第3巻第2曲の「夏の隠れ家に入居して」なども、
作曲者自身、夏にこの地方を訪ねてハイキングをしたりしたそうですけれど、
楽しさが伝わってくる気がしますし、曲の感じ(特に後者)は
アルヴェーンの「夏至の徹夜祭」(おそらくスウェーデンの曲で一番知られてるのでは)を
思い出させたりして、実に楽しげです。
こうした陽気さは容易に想像できるところではありますが、
第2巻第2曲の「イエムトランド」に聴くような慈しみの方は
たぶん季節の感じが相当に隔たっているので、想像する以上にというべきでしょうか。
なにしろ長く暗い冬を経験したことがないと、その心情的対比を実感しにくいでしょうし。
ちなみにCDカバーに使われている絵画は、
オスカー・ベルイマンというスウェーデンの画家によるゴットランド島の風景ですけれど、
この夕暮れを惜しむようなところがまさに慈しむふうでもありましょうかね。
そうはいっても、タイトルどおりに小さく可愛い「花々」を花束にした曲集と受け止めて、
曲に心地良く身を委ねるとすれば、スウェーデンから遠く離れたところで
そんな楽しみ方をしている者がいると知れば、作曲者は喜んでくれるようにも思いますけれど。

