東京・昭島市の多摩川べりに無料の水族館があると聞き及んだものですから、
出かけてみることに。平日しか開いていないので、休日出勤の振替休日利用です。
住まっているところからは6キロ余りでしょうか、自転車で向かいましたが、
多摩川に向かっていくとどんどん下っていってしまうわけで、後が思いやられる…。
ですが、それは後のこととして「多摩川ふれあい水族館」に到着いたしました。
大きく魚のシルエットがあるあたり「水族館だあね」という主張はわかりますが、
その水族館らしいところはエントランスロビーのほんの一角、
あっけにとられるくらいなものでありましたですよ。
左の水槽から多摩川上流の魚、中上流の魚、中流の魚と来て、
見えていない右側には生簀状になったところに下流の魚とありましたけれど、
これだけといえばこれだけ…。
文字が小さくなってしまってますが中央の水槽の上にかかれてある文字、
すでにかすれているもメンテされていないのがさして力の入っていない証拠だったりしますが、
「多摩川ふれあい水族館」とある隣にミニ水族館と。なるほど間違いないわいな。
でもって、その上に黒文字であるのが「多摩川上流水再生センター」と。
要するにここは東京都の、昔風にいうならば下水処理場というのが本来であって、
当該施設で再生(処理)した水では魚も生きていられるのですよということを示すための
水槽展示であったというわけです。
ふむふむと水槽を覗きこんで、イワナ、ヤマメ、アユ…と見ていくにしても
あっという間に終わってしまうだけに、これまたわずかばかりにあった施設本来の解説展示にも
目を向けたのでありますよ。
昭和の40年代まで多摩地域の下水道普及率はなんと20%程度だったそうで、
生活排水は多摩川に流れ込み、多摩川の川面は洗濯の泡だらけということもあったようです。
そこで昭和43年(1968年)以降、下水道の整備が進み、
現在の水再生センターのようなところで水質汚濁対策に取り組んだ結果、
ミニ水族館の水槽で川魚が元気に泳ぐまでに水質を改善できるようになったそうな。
そして、ここで再生された水は他にも多摩川に流すばかりでなく、他でも利用されている。
それが先に「地形で解ける! 東京の街の秘密50」 という本で読んで驚いたように
玉川上水に流されているのですありますよ。
西武拝島線・玉川上水駅のほど近くに東京水道局小平監視所というのがあって、
そこまでは本来の多摩川の水が玉川上水を流れてきていて、
その後は東村山浄水場に送られてしまう。
入れ替わるように多摩川上流水再生センターで処理された水がこの地点で地表に顔を出し、
玉川上水として掘削されたところを流れていくのだということなのですね。
この間、この地点のもそっと下流にあたる平櫛田中彫刻美術館 のそばで見た流れは
かなりの勢いで流れていましたけれど、まさに下水を処理した水だったのですなあ。
と、そのような展示解説に触れた後に、
事務所に申し出れば展望塔に登れることに気付いたのでありますよ。
一番上、入口のところの写真に移っている塔にです。
せっかく来たのだからと2階にある事務所にひと声かけにいきますと、
ぷんと臭いが鼻につく。やはり下水処理場なのですね。
この中で始終仕事をしている人たちも大変でありますなあ。
それはともかくとして、えっちらおっちら階段で展望塔へ。
まずは「なるほどここが処理場の施設であるか」という建物群。
そして、目を転じますと「お!富士のお山が!」と。
うすぼんやりとしてはいるものの、妙に巨大に見えるのはズームをきかしたからですが、
多摩川の川っぺりともなると遮るものが少なく、見晴らしがききますね。
最初は水族館のつもりでやってきたところながら、
いろんなものを見聞きすることになった多摩川上流水再生センターなのでありました。