書き忘れてしまいましたけれど、高知県立美術館で見た企画展
「―破壊 COLLAPSE―」 の作品は高橋元尚というアーティストによるもの。
御歳94歳と知って「柔軟な感性であるなあ」と思いつつ、
「六十、七十は鼻たれ小僧」といった平櫛田中 を思い出しておりましたですが、
突然の訃報といいますか、昨6月22日に亡くなられたとは。
作品を見たばかりであるだけに、ご冥福を祈りつつ、
それでも新作展の開催中であったとはアーティスト冥利に尽きるもののようにも
思えたりしたのでありますよ。
と、ここでは高知県立美術館の石元泰博展示室で見た写真のお話でありまして。
高知ゆかりの写真家の作品がコレクションされておるのでしょうなあ。
その収蔵品を並べての展示は「カリフォルニアの住宅 グリーン・アンド・グリーン」なるもの。
写真家の作品展ということになりますが、関心はひたすらに被写体に向いてしまったのという。
グリーン・アンド・グリーンというのは、チャールズとヘンリーのグリーン兄弟による建築ユニット。
写真はもっぱらグリーン兄弟による邸宅建築作品を撮ったものだったのでして。
ちょうどこの館内で配布されている案内の真ん中にあるのが
彼らの代表作とも言われるギャンブルハウス…ということなんですが、
これの展示を目の前にして「おお!」と思ったのでありますよ。「おお、行った、行った!」と。
2010年でしたので、もう7年も前かぁと思いますけれど、
ロサンゼルス近辺の美術館(思いのほかいくつもあるのですよ)を総ざらいしてきたときに
近郊パサデナ市のノートン・サイモン美術館への行きがてら、このギャンブルハウスを
見に行ったのでありますよ。
アメリカのロサンゼルスという先端都市の近郊にあって、
「木」を大事に扱っているのが何とも印象的でありましたけれど、
グリーン・アンド・グリーンのひとり、チャールズ・グリーンはこんなことを言っているそうなのですね。
木にはそれがどんなにありふれた種類であっても、歳とともに深みの出るつや、名状しがたい木目模様、繊細なかげなど、私たちの想像力を刺戟するなにかがある。
「ほお、ほお」ではありませんか。
とはいえ、「大草原の小さな家」や映画「刑事ジョン・ブック 目撃者」でアーミッシュたちが
納屋を建てるところを思い出すまでもなく、アメリカにあっても(もちろんその他の地域でも)
木造家屋が造られてきてはいたのですよね。
それが、例えば「三匹の子豚」のおとぎ話ではありませんが、
藁の家よりは木造の家、木造の家よりは煉瓦の家が耐久性がよろしい点な面が根付いてか、
いかにもな木造の家というのは少なくなっていったのかもしれませんですなあ。
(まあ、今でも都市部から離れればあるのでしょうけれど)
ちなみにグリーン・アンド・グリーンの信ずるところ、「住宅建築のスタイルは、
可能な限り次の四つの条件を考慮に入れて決められなければならない」として、
第1条件に「気候」、第2条件に「環境」、第3条件に「その土地にある材料」、
そして第4条件に「建築主とその家族の生活様式(習慣、好み)」を挙げているという。
単純に「木がそこにあるから」というだけでもなく、
他の要素も考慮して木造の家を建てていったのですな。
そんなグリーン・アンド・グリーンの手がけた邸宅はギャンブルハウスばかりでなく、
パサデナ西寄りの木立に囲まれた邸宅街(軽井沢の別荘地を思い浮かべてもいいかもです)に
他にもブラッカー邸やファン・ロッサム邸、トーセン邸といくつかあるという。
そして、よくよく写真で見てみれば、
木々の組み方やら装飾やらに「おや、神社仏閣?」というところが垣間見られたのですな。
そもそも日本の木造伝統建築にも影響を受けたといいますから、むべなるかなですけれど、
返す返すも住宅地の一帯をもそっと見て回ってくればよかったと思いましたですよ。
どんな家?と思われた方は、少なくとも「ギャンブルハウス」は検索で出てくると思いますので、
ご覧になりますと「住みたい」と思うかはそれぞれですが「見てみたい」とは思うのではなかろうかと。
…と、気づけば高知ゆかりの写真家氏の話はちいとも出てこなくなってしましたですが、
パサデナを思い出しつつ、アメリカの木造邸宅のお話でございました。

