唐突に「植物学の日 」の話を入り込ませてしまったものですから、
ヴェニス・バロック・オーケストラ (VBO)の演奏会を聴きに行ってきた…という話が
ちと後回しに。


アヴィ・アヴィタル&ヴェニス・バロック・オーケストラ@三鷹市芸術文化センター風のホール


この合奏団の演奏は何度か聴きに行ったことがありますけれど、
その度に伴っていたのはジュリアーノ・カルミニョーラであって、
そのヴァイオリン独奏をフィーチャーした形のプログラムが組まれていたような。


ところが今回のVBOが共演するのはアヴィ・アヴィタル。
気鋭のマンドリン奏者であるところから、曲目の方も演奏された全8曲のうち
5曲に独奏マンドリンが加わるというものでありました。


その5曲のうち4曲がヴィヴァルディの作品とは
やはりヴェネツィア らしいお土地柄ということになりましょうね。


マンドリン登場の最初はヴィヴァルディのリュート協奏曲ニ長調RV93、
ギター協奏曲とも言われて映画「リトル・ロマンス」に第2楽章が使われて、
その波間に漂うような揺れ具合がヴェネツィアを舞台にした映画と
うまぁくマッチしていたことが思い出されます。


このコンチェルトは第1楽章のアレグロが清冽に迸る雪解け水のようで、
しかも今回はリュートやギターよりも一音一音が尖った感じるのするマンドリンでの演奏、
尚のことエッジの立った感じがしたものでありますよ。


そんなふうにリュートでもギターでもない音色を持つ楽器であるマンドリンですけれど、
膨大な協奏曲を作ったヴィヴァルディでさえもマンドリン向けはわずかですし、
今回演奏された中でもパイジェッロ(ハイドンと近い世代ですね)の
すでにバロックを離れつつある響きでのマンドリン協奏曲は当時でも珍しいものだったかも。


どうもオーケストラの中のマンドリンと言いますと、
ちょうどこの間「クラシック音楽館」でN響による演奏が放送された「ローマの祭り」などで
ある特徴的な情景を描き出すための特殊な楽器といったふうに使われているような。


ですから、いわゆる普通のオーケストラとは袂を分かって
マンドリン・オーケストラなる独自編成の合奏に向かっていったのかもしれませんですなあ。
高校の時の友人が大学でマンドリン・オーケストラに入ったというので、
どれどれと聴きに出かけたことがありましたけれど、かの友人はそこでギターを弾いていた…。


マンドリンの仲間ばかりの中にあって今度はギターが
独特の音色を醸す楽器てな位置づけになっているんでしょうかね。


それはともかく、アヴィ・アヴィタルの独奏を立てた演奏が次々披露されたわけですけれど、
どうも技巧的にプレーヤーとしてマンドリン向けの曲では物足りないのか、

最後に置かれた曲はヴィヴァルディの「四季」から「夏」。


本来はヴァイオリンが引っ張る曲ですけれど、

音の持続がきかないマンドリンで果たして?と思ったですが、

そのアグレッシヴなプレイぶりにすっかり眩惑されてしまった気がしたものでありますよ。


とまあ、春の足取りがずいぶんとゆっくりな気のする頃合いにあって、

かような具合で耳から春の爽やかさを注がれる心地のする演奏会でありました。

何だかさっぱりしたな(笑)。


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