ご覧のようにカールスルーエの美術館 (Staatliche Kunsthalle Karlsruhe)は
バーデン大公の宮殿 を中心とする円の円周部にあって、植物園に隣接しているのですね。


たくさんの絵画を見て廻っていささか草臥れ感のあるところなだけに、
植物園に入り込んで(無料です)ひと休みということに。



ところで、ヨーロッパではよく王宮に付属していたり、

あるいは王立であったりという植物園をよく見かけますですね。


これは(おそらくですが)何も花々を愛でる王侯の楽しみというのが
本来の目的とされているのではなかろうと思うところでありまして。


大航海時代を経て、ヨーロッパの人々にとって珍しい品物やら動植物やらが
持ち込まれるようになった。そうした珍奇な品々を集めて自慢したいがために
ヴンダーカンマー なるものがあちらこちらで作られたわけですけれど、
こと植物を生きたまま保つというのはヴンダーカンマーのように収集するだけではない
大きな維持費が必要になりますですね。


もちろんそうした費用を弁ずることができると示すのも権威の示し方ではあるものの、
例えば香辛料の類いなど、ヨーロッパ原産ではないがために希少価値があるものを
自前で育てて利益を独占できないかといった実利的な一面もあったのではと思うのでありますよ。


そのために植物園は花々を愛でるという以上に、

植物栽培の研究施設であったのでもありましょうなあ。
ロンドンにあるキューガーデンなどはその典型でしょう。


時に江戸期の日本では徳川八代将軍吉宗 が小石川に療養所を作って薬草園を併設し、
今では東大の小石川植物園になっていますけれど、吉宗の考えるところも
ヨーロッパの王侯と同じであったかと言えば、そうではなさそうな。


薬草園だけに本草学の研究、つまりは医術に役立てようということであったろうと。

療養所とともに作ったのですものね。


と、余談が過ぎましたが、カールスルーエの植物園の現在は
とにもかくにも市民の憩いの場、つまりは公園としてあると言ってよさそうです。



麦藁帽子をかぶって作業に勤しむような人がいて、きれいに保っていてくれるのでしょう。
すぐ外は車がばんばん走っているのに、とても気持ちのいい空間になっているのですよ。



また、散策路の向こうに宮殿機能の一部でもあろうかと思われる建物が見えて、
その姿形を草花越しに眺めれば、あたかもおとぎ話の絵本の中に入り込んだような気にも。



で、ちと目を転ずると、
鉄骨の梁だけになった何かしらの残骸?かと疑う構築物に目がとまったですが、
この鉄骨むき出し感がなんとも19世紀末の雰囲気を醸しているではありませんか。



もしかして、これには一面にガラスが貼ってあって大温室か何かだったのではと。
近づいてみれば、思いのほか装飾的だったりするのがまた世紀末感ありですよね。



たまたまにもせよ昼飯時も過ぎつつある頃合い、
この鉄骨張りぼてのところにカフェがあって食事もできそうでありましたので、
今回の旅で最後の食事を植物園のカフェでとることにいたしました。



前の年にフランクフルトで最後の食事とがっつり肉を頼んで大変なことになったものですから、
ここでは肉もほどほどということで。きのこのソースでおいしくいただいたのでありますよ。



ひと休みと昼飯とを済ませて、さて次ですが、
実はカールスルーエの美術館を散々見て廻ったといいながら未だ本館だけだったのですな。
一番上の写真に見える円形ドームを頂いたオランジェリーという建物、これが別館。
こちらも是非覗いて帰らねばなりませんなあ。


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