先にも申しましたとおりに銚子は関東平野の東端にありまして、
海に臨んで眺望がよろしいというお土地柄だからでしょうか、
いわゆる展望台といえる施設が3箇所あるのですなあ。
ひとつは「地球の丸く見える丘展望館」で、辺りではひと際高い丘の上にあるものですから、
海とは反対側の千葉県内陸側も見渡せるところがポイントになりますかね。
もうひとつは銚子ポートタワー。こちらは利根川の河口近くにあって、
坂東太郎とも言われる大河が海に注ぐところが間近という点にそそられるような。
で、最後のひとつが犬吠埼灯台でありますね。
本来は前の晩にその灯りを目の当たりにしたように航路標識ですから、
展望台としては見劣りするかもしれませんですが、歴史を背負っているところが魅力ですなあ。
3つもあるのですから、ひとつくらいは立ち寄ってということになりましたけれど、
日の出が見えずじまいだったお天気がなおのこと不安定な様相を呈していましたので、
結局のところ宿から一番近い(歩いても行けそうな)犬吠埼灯台へと向かったのでありました。
歴史を背負っているといいましたが、完成は明治7年(1874年)11月15日。
完成したその日から灯が点されたことは灯台の上り口のプレートからも見てとれます。
日本初の洋式灯台は以前訪ねた三浦半島の観音崎灯台
(明治2年完成)で、
歴史の長さではこれに及ばないものの、犬吠埼灯台は「国産レンガで造られた初の灯台」なのだとか。
設計と施工監督に当たったイギリス人技師のリチャード・ヘンリー・ブラントンは
日本で造るレンガの強度を不安視(当時のレンガはイギリスから輸入する相当高価なもの)しましたが、
結果的にはそのレンガは140年を越えてなお灯台を支えているのですから、
明治日本の面目躍如たるところではないでしょうかね。
まずは灯台上り口の左手にある建物、資料館に入ってみますと、
上にも記した歴史的なあたりの紹介とともに、
灯台の天辺にあって周囲に灯りを届ける巨大レンズが展示されておりましたですよ。
一見したところ扇風機
?とも思えるところながら、
2階から見下ろしてこの大きさですからいかに巨大なレンズであることか。
これを使って、19.5海里(約36Km)先にまで光を届けるというのですなあ。
光の強さは110万カンデラ…って、いったいどのくらいよ?と思いますが、
カンデラはキャンドル(カンテラも)と同じ語源らしく、
1カンデラはアバウトにロウソク1本分でもあるらしいので、110万カンデラはロウソク110万本分。
どうにもイメージしにくい話ですが、とにかく明るい!ということでありまして…。
資料館を出て、さらに灯台の裏側(海側)に回り込んでみますと、また別棟の建物が。
明治43年建てられたというこの建物は霧信号所霧笛舎として使用されていたそうな。
霧が吹雪で見通しが利かないような、いかな強い光でも届かせらないような天候のときには
大きな音(霧笛ですな)を発して、航行中の船舶に灯台の位置を知らせ、
ひいては自船の場所も推測させるという役割を
長年にわたり(何と2008年まで)担ってきたのだそうでありますよ。
屋根から突き出したホーン状の管が霧笛舎であったことの名残りですな。
建物の中には大きな音を発生させる装置があり、
音量は抑え目ながらも霧笛の音を聴くことができるようになっています。
「ぼぉ~~~!!」という霧笛の音は何とはなしに「ううむ、ノスタルジー…」的な気分になりますね。
さて、外周を廻って灯台の上り口に戻り、いよいよ昇ってみることに。
展望台部分までは99段の階段(どうやら九十九里浜に擬えているようで)昇りになりますが、
最後の最後は階段というよりはしご段になるので、いささか心の準備が必要かと。
まずは東側、掛け値なしの太平洋です。
北の方向に目を転ずれば、左側の塔が銚子ポートタワーでしょうか。
さすれば、その向こうが利根川の河口ということになりましょう。
そして、西側、内陸部方面に目を向けますと、風力発電機がにょきにょきと。
海から吹きつける風がけっこう強くあるということなのでしょうね、きっと。
ウチワサボテン
ではありませんが、やはり利根川の向こうの茨城県神栖市には
波崎ウインドファームと呼ばれて風力発電の風車が並ぶ光景
が見られるとのこと。
安定した風が得られるからこそと思いますが、犬吠埼灯台から見えたあたりも
条件がいいということなのでしょうなあ。
と、灯台の展望台から降りてきて、改めて岬の突端に佇んで大海原を見渡しておりますと、
遅まきながらも水平線がわずかながらも湾曲しているように見えてきました。
やっぱり地球は丸いのですなあ…(感慨)。