ほんの出来心で?放送大学 の「数学の歴史」なる講義を録画してつまみ食いしてみたのですね。
度々申し上げておりますとおり、こてこての文系頭ながらも折りに触れて理数系方向のことにも
ピクリとしてしまうことがあり、こたびもその類いと言ってよろしいかと。


講義としては全15回ですけれど、まず見たのはその9回目で「ルネサンス数学」というもの。
全くもって今さらながらではありますが、ルネサンス とは何も芸術分野に限った話ではないのですなあ。


14世紀から16世紀にかけてヨーロッパを覆った大きな思潮とでもいいますか。

ルネサンスは言うまでもなく「再生」を意味してギリシア・ローマの古典復興が掲げられましたが、

その中では数学もまた同様であったと。


つまり、中世にはイスラム世界の数学なども入ってきていたわけながら、
改めて古代ギリシアの数学にも目を向けようということのようで。


ですが、折りしもユマニストがその名のとおりに人間本位の研究をしていく中では
人間による自然の制御みたいなことにも目が向くとなれば、

自然を克服するための実用性が科学に求められ、
数学もまた例外でなく実用数学が指向されたというのですね。


どんなことが実用的かといって端的な例ですけれど、

ワイン樽の容量を導く計算式の研究なんかもあったようです。

ご存知のようにワイン の樽はドラム缶のようにずん胴の円柱ではなくして、

真ん中あたりが膨らんでいる。


計算するにはずん胴型の方がよほど簡単でしょうに、敢えて単純でない形にしているのは
「…一定の膨れを作ることで、横にすると摩擦面が小さくなるため比較的容易に方向を変えつつ
転がすことができるようになり…」(Wikipedia)てなことですとか、それなりの事情があるのでしょう。

ですが、ルネサンス期の人たちには(といって、自分は現代人でもできませんが)

難しい計算であったろうと。


さらに実用性という点では、

天文学とも絡んで航海術に寄与する側面があったということに気付かされると、
1492年のコロンブスの航海に象徴される大航海時代は

技術革新の進捗によって用意されたたものとも、

大航海への必要が技術の進歩に拍車をかけたものとも思われてくるような。
ルネサンスと大航海時代を並べて考えることも無かったですけれど。


ところで、レギオモンタヌスやらアダム・リーゼやらとか
これまで聞いたことのない数学者の名前が出てきたりする中で

デューラー の名が挙がったときには「画家の?」と思ったところが

果たしてその人そのものでありました。デューラーは数学者でもあったのですなあ。


画家としての認知度が圧倒的なせいか?版元が中央公論美術出版になってますが、
デューラーのこんな著作が出版されているようで。


「測定法教則」


「測定法教則」というタイトル、そして表紙カバーに描かれた曲線のいずれからも
実用数学との関わりらしきところが素人目にも想起されようかと思うところです。


ですが、カバー絵の曲線のほかにもデューラーは様々な曲線の描き方を模索したようで、
多様な図形を的確に描出するための手法は絵画制作にも活かされていそうですね。
また、違った意味で「数学者だったのだな」と思ってみれば、
有名作の「メランコリアⅠ」なども「ふむふむ」と違った感慨が起こりそうな。


アルブレヒト・デューラー「メランコリアⅠ」(部分)


天秤やら砂時計やらコンパスやらはいかにもな小道具ですし、
左側のどっしりした不等辺の立体も決して適当に描いたのではなく計算づくなのかもと。


ちなみに右上の壁面にある4×4の数字の組み合わせは魔方陣なのだそうですね。
縦、横、斜めいずれの4つの数字を足しても同じ数が導かれるのはよくあるとしても、
四隅を足してもまた同じ数字になるといった極めつけの魔方陣だそうでありますよ。


とまあ、そんなこんなで思いのほか「ルネサンス数学」の回が興味深かったものですから、
気をよくして次の第10回「デカルトの時代の数学」を続けて見たところ、
「Σ」なんぞが出てきてあらあらら…と思う間もなく微分積分という言葉まで登場。
いやあ、数学の進歩は速いですなあ(笑)。


と、すっかりついていけなくなったわけですが、それでも「へえ、そうだったの」ということが。
古代の数学は(イメージしやすいからでしょうか)代数であったも図形的に捉えていたようで。
例えばaの2乗と言ったときには「それは平面なのね」と理解する。
そしてbの3乗と言ったときには「立体なんだね」と理解する。
そこで、xの2乗=yの3乗と言った数式は(それこそ文系頭にも)あり得るものと分かりますが、
昔の人は2乗は平面のことで3乗は立体のことなのだから、平面=立体とはあり得ないと
受け止めたそうなのですよ。


ほどなくそうした理解は克服されて、数学はどんどん発展していくようでありますが、
どう考えてもこの先には寄り添っていけないことを確認できた講義なのでありました。


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