したたか打ちつけてしまった尾てい骨の痛みもかなり薄れてきましたので
(先の旅路での負傷は、つまりそういうことでありまして…情けない…)
ようやく出かける気にもなり、東銀座の東劇に行ってきたのですね。
(いつもと違って、近くのMOVIXではやってないもので)
オペラハウスのオフシーズンに当たる夏の時季、
ここぞとばかりに「METライブ 」のアンコール上映を連続的にやっていますので、
今まで見逃したりした分を拾っておこうというわけです。
このほど見たのはドニゼッティの「連隊の娘」という一作。
クラシック音楽とは長い付き合いになりますけれど、
オペラにまで目を向けてからさほどでもないこともあって、
ガエターノ・ドニゼッティという作曲家の名前は知っているものの、
オペラ以外にあまり作品が無い(一応Wikipediaを覗いてみました)せいか、
およそこれまでの接点はなし。
ですから、この「連隊の娘」がベルカントの超絶技巧を要していて、
あのルチアーノ・パバロッティが「キンゴ・オブ・ハイC」と呼ばれるようになったのも
本作を歌いきってからということらしい。
話は、戦争のさなかに戦場でフランスの連隊に拾われて兵士たち育てられたマリーが
敵側であるチロルの青年トニオと恋仲になって…とくれば、悲恋であり、悲劇であって、
だからこそハイノートがばんばん出てくる嘆き節アリアが盛り込まれているのではと
思ったところが、コメディーだったんですなあ、このお話。
しかもこのプロダクションのために書き直されたという台詞部分(これが結構多い)も、
そして演出そのものからして客を笑わせてやろうという意識が実に高いものであったという。
本来はナポレオン戦争を時代背景としていながら、
マリー奪還のためにトニオが戦車に乗って登場してきたりする荒唐無稽さは、
個人的にはいつもなら時代考証がどうのとついつい眉根を寄せてしまったりするところが、
むしろドタバタにも徹した潔さというか、とにもかくにも楽しめたといいましょうか。
これに目くじら立ててもしょうがないないような気がしたものです(いつもと違う反応かも)。
ひとえにヒロインのマリーを演じたナタリー・デセイのコメディエンヌぶりはお見事。
舞台が先で声楽を後から学ぶという変わり種?のなせる技でもありましょうかね。
とはいえ作品の本来はオペラであって、ナタリー・デセイもさることながら、
トニオ役のフアン・ディエゴ・フローレスも超高音を涼やかにこなしてましたですな。
それに加えて随所に出てくる合唱がまたよろし。
と、検索してみますと、どうやら主役二人はそのままに(METではなく)ロンドン
の
ロイヤルオペラハウスでの公演がDVDになっているようす。
こりゃあ、買いですな(好き嫌いは分かれる演出なのかもしれませんですけどね…)。


