ということで、両親のところで一泊してきたわけですが、

何分にも年寄夫婦でありますから…と言ってよいのかどうか、

「相も変わらずTVを友としておるなあ…」と思ったものです。

(そうでない年寄夫婦もありましょうけれど)


晩には美空ひばりの歌をVTRで振り返るような番組を見ており、

翌朝になっても「サキドリ↑」あたりを見ているときには「やっぱりなあ」と思ったところが、

9時になろうかというときにやおらチャンネルをがちゃがちゃと替えだした…。

(と、今でもひねるタイプのチャンネルがついたTVではありせんが)


どうやらこれを見るのかとリモコンの手を止めたところの番組は何と「題名のない音楽会」。

両親とは長い付き合い(当たり前ですが)ながら、

かような番組に目を留めることがあろうとは露知らず。

今さらのように新たな側面に気付くこともあるのですなあ。


と、両親のことはともかく「題名のない音楽会」のお話。

ゲストとして登場したのがピアニストの辻井伸行でありまして、

のっけからじゃじゃ~ん!と始まったのが、ベートーヴェン の「エンペラー」冒頭でありました。


2011年ですから5年も前になりますけれど、

辻井君(やおら君付けですが)のピアノ独奏による生「エンペラー」を聴いたことがあり、

痛く感激したことがありまして、今回またTVを通じて聴こえてくる粒立ちの良い音は

演奏会での印象をフラッシュバックさせるものなのでありました。


2009年のヴァン・クライバーン・コンクールに優勝してから俄然注目されて、

先の演奏会もそうした盛り上がりが持続する中で設けられたものと思いますが、

その後は落ち着いた活動になっていたから余り名前を聞かなくなっていたかと思うところで、

TV東京「美の巨人たち」のテーマ曲の作曲・演奏を担当するようになってきましたので、

彼の歩む道はそっちの方向なのかな…とも。


ですが、27歳となった辻井君の「エンペラー」は、「エンペラーと呼ばれる大きな協奏曲の

必ずしもニックネームどおりの大仰さでない きれいな音楽として提示してくれていました」と

5年前に書いたそのまま。もちろん、5年分の熟成は重ねているものと思いますが。


そうした若さという意味では、(日曜朝の番組なので普段見ないもので知らなかったですが)

昨年から「題名のない音楽会」の司会にあたっているという五嶋龍のヴァイオリンもまた、

このところ気になっておりまして。


昨年のNHK音楽祭の一環であったhr交響楽団の演奏会で、

チャイコフスキー のコンチェルトを弾いていたのを「クラシック音楽館」で見たのですが、

これが実に良かったなと。


チャイコフスキーのヴァイオリン協奏曲は、スカッとした第1楽章に比べて

その後の第2楽章、第3楽章がどうもしっくりしないように感じていたところを

「うむ、こうか!」と思わせてくれたものですから。


弾きっぷりの方も宿敵に対峙した剣豪のようなふう(ちょんまげが似合いそうですな)でもあり、

「おぬし、やるな…」と思ったものです。


どうやら五嶋君(また君付けですが)も辻井君と同じく27歳ということですが、

それぞれにこれからどんな演奏を聴かせていってくれるのかが楽しみになりますですね。


とかく重鎮の円熟をありがたがりがちのクラシック音楽の演奏にあって、

一概に老若でどうのこうのとは言えないものだと改めて思い至ったところで、

ふと両親のことに立ち返れば、かつては見たことのないクラシック音楽番組に聴き入る姿、

こちらの方も老いたからといって関心が広がらないわけでもないのですなあ。

(もっとも「エンペラー」全曲を聴くには40分くらい掛かると言うと、びっくらこいてましたが…笑)


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