ちょいと立ち寄った「富岳風穴 」から西湖の湖畔に至る道もまた青木ケ原の樹林の中。
それで、風穴のところで書き忘れたことですが、この樹林帯の珍しい点でありますね。


青木ケ原樹海に生えた木の根


はっきりと分かりやすい写真が撮れていなかったので、つかまえにくいやもしれませんが、
この樹海に生える木の根元をご覧になって気付かれることがおありかと。

木が生えているのは土の地面ではないということなんですね。


今では青木ケ原樹海と言われ、海のように木々が繁っている場所は
もともと富士山が噴き出した溶岩に占められた地帯であって、土がない。


にも関わらず木が生えているとは、気付かされると不思議に思えてくるわけですが、
種明かしを「樹海特有の露出する樹木の根」との解説板から引用してみるといたしましょう。

青木ケ原樹海16km四方に跨る溶岩地帯の上にわずか数センチ、何百年もの長い間蓄積した樹木の葉、数十種類の苔などの栄養と水分を吸収し、わずかな溶岩の切れ目に広がる根は、他の山に比較して、その長さもはるかに長く伸び、樹齢300年以上をへても、大きく太ることなく、互いに抱き合う様に密生し、昼なお暗い原生林、これが青木ケ原樹海です。

普通ならば土の中へしっかり根を伸ばすはずのところが、
潜り込まず(潜り込めず)に地表を這うように根が伸びている。
これが特徴と言われてみれば、上の写真の根も蛸のあしのようだなと

見えてくるのではなかろうかと。


というような青木ケ原樹海の間を抜けていく途中では
「竜宮洞穴」(およそ観光地っぽくないので富岳風穴より野趣に富んでいるかも)や
「西湖コウモリ穴」(今でもコウモリの冬眠場所になっているらしい)といった溶岩洞穴の

いくつかをやり過ごし、西湖の根場浜というところに到着いたしました。


西湖から望む富士


本栖湖精進湖 に比べて距離的には富士山に近付いたように思うところながら、
手前の山並みがすっかり裾野を隠しておりますなあ。


ところで「西湖」というネーミングは何ともシンプルでありますね。
他の湖には「本栖湖」「精進湖」「河口湖」「山中湖」と名付けられておりますのに。


一説には北側から山越えでこのエリアに入るときに見える大きめの湖(河口湖)の
西側にあるから「西湖」…てなふうにも言われているようですが、果たして…。


勝手な想像としてはもそっとドラマティック(?)に
中国は杭州の西湖(日本語での読みは「せいこ」ですが)にその景観が似ているとか、
何かそんな謂われがあっていいように思ったり。


かつて南宋の都であった杭州にある西湖は、
その風光明媚なところから「西湖十景」と言われる画題を山水画に提供して、
日本でもそれを真似た形で「西湖図 」らしき作品が数多描かれているようですから、
名付けに繋がりがあってもいいのかなと思ったわけでして。


もっとも杭州の西湖の方は、昔々の春秋時代、
呉越の抗争に巻き込まれた絶世の美女・西施(せいし・中国古代四大美女のひとりらしい)が
身投げした湖であったところから来ているてな伝承が広く流布してますので、
杭州・西湖の名を借りてきたなら「さいこ」でなくって「せいこ」になっていたでしょうけれど。


ちと余談が過ぎましたけれど、西湖の湖岸にも近付いてみることに。
近付いてもやはり手前の山、特に左側(東方向)になだらかな稜線を描く足和田山(1355m)は
それ自体が富士を望む展望台として有名ですから、それはそれで致し方なしですが。


ところで、湖畔に出て良かったことがひとつありました。
わりと風があったものですから、湖面は(本栖湖、精進湖同様に)小波立っていましたけれど、

岸に近い、水溜りっぽくなったところから富士を望むとこのように見えたのですよ。


西湖畔での逆さ富士


いわゆる「逆さ富士」というやつですね。
湖面が波立っておらなければ、他の湖でも見られる光景なのでしょうけれど、

こたび富士五湖を巡る中では唯一遭遇した「逆さ富士」でしたし、

なんだかいいことありそうな気がしてくるところですな。


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