富士五湖を巡るのに本栖湖
、精進湖
と来れば、お次は西湖になるわけですが、
ここではちょいと寄り道を。
青木ケ原樹海をぶち抜いて敷かれたと思しき国道139号を進み、
西湖への入口を一旦やり過ごしてもそっと行きますと、「富岳風穴」に到着となります。
しかしまあ、国道139号には「富士パノラマライン」の愛称が付けられてますけれど、
右も左も樹林ばかりで、すこしもパノラマではありませんですな。
もっともそうした富士山の噴火の跡だからこそ、「富岳風穴」なるものもできたわけですな。
洞窟の生成過程をリーフレットの記述から引用すると、このように。
流れ出た溶岩流の上部が先に固まり、下部の溶岩がそのまま流れ続け、その間にできた隙間が固まってできた空洞が富岳風穴です。
まさに溶岩流の作り出したものということで、洞窟というと鍾乳洞を思い出すところながら、
全く性質のことなるものなのだそうでありますよ。
ちなみに、洞窟への入口のところに立てられている案内板には、
溶岩の外部が冷めて収縮する段階でも内部は高熱の流動体であるために、
固まり始めた部分の中で弱いところを押し破ってガスや溶岩が噴出した後の空洞…
てなことが書かれてありました。
ですが、この成り立ちは「富岳風穴」ではなくて、
お隣(樹海を抜けて行き来できる)にある「鳴沢氷穴」の方であるようす。
ずいぶん古い看板でしたから、これまた研究成果で説が変わったのかもですね。
(どちらも似たようなものだと思って、氷穴には行かなかったですが、ちと残念…)。
青木ケ原樹海には似たような洞窟がそこここに点在しているようですけれど、
ここ「富岳風穴」は天然記念物に指定されているくらいには、その謂われがあるものなのでしょう。
とまれ、早速に入ってみることにいたします。
基本的に洞窟内は横長であまりアップダウンは無いようなのですが、
入口だけはかなり急に下るようになっておりますね。
直前に「天井が低い所があるので注意」と書かれていますように、
思い切りしゃがむ感じで潜り抜けて行くと…「そこは氷の世界であった」とは大袈裟ですが、
やおら氷の柱とご対面です。
これはかつて「天然氷をブロック状に切り出し積み上げて天然冷蔵庫として使用していた」様子を
再現したものなのですけれど、それでも後ろの壁面に見えるつららは本物のようで。
年間を通じて洞内の温度は平均3度だといいますし。
洞内の道を曲がって入口からの外光が無くなりますと、
壁のところどころに付けられた灯りだけを頼りに進んでいくことになります。
途中、溶岩棚であるとか、縞状溶岩であるとか、溶岩流の名残を感じさせる壁面の中を通るも、
何せ暗いので写真には写せませんでしたが、最も奥まったところに至ると狭まった穴の奥が
ほわんと明るくなっておりました。
看板には「群生する珪酸華」と記され、要するにヒカリゴケであるそうな。
「洞窟に住む、目のない微生物の餌」になるものだそうですね。
目の無い微生物とやらも光を感じるのでありましょうか…。
通路としてはこれより先に進むことは出来ず、折り返しの通路を進むことになりますが、
案内には「この奥は、人間の進入が許されておりませんので、棚を回りお進み下さい」と。
「人間」の進入が許されておらないとは、あたかも神の領域でもあるかのような表現に
いささか苦笑しつつ、引き返したのでありました。
ところで、先の案内ある「棚を回り…」という「棚」ですけれど、1955年(昭和30年)頃までは
種子やカイコの繭を冷蔵状態で保存する貯蔵庫としても使われていたそうで、
それを再現する棚が置かれていたのでありますよ。
・・・てなふうに風穴内をひと回りし、遠くに再び外の光が見えて来ました。
洞内にいて「おや?」と思いましたのは、入ってくる人たちが会話をしていても
トンネル内にいるときのような反響がないこと。
「気泡の多い玄武岩でできているため」と解説がありましたっけ。
ということで、本栖湖、精進湖、西湖を分断した溶岩流の痕跡の中を巡った後は、
東西に並ぶ富士五湖の真ん中、西湖へと進んでまいります。


