ツァイル
というフランクフルト随一のショッピング・ストリートに来ていながら、
差し当たりの買い物はマイツァイルなるショッピングビルで済んでしまいましたので、
もはやおもて通りのブティックだのには用事もなく、裏道に廻りこんでみることにしたのですよ。
このあたりかなと思ってみれば、「おお、ここか」と。
「Kleinmarkthalle」(英語にすれば、Small market hall)という屋内市場ですが、
その昔交易で名を馳せたフランクフルトの市場にしてはずいぶんとちいさい。
もっとも「Klein(小さい)」と名乗ってますから看板に偽りなしですけれど。
2階部分の廊下に面した店では、その場で小腹を満たすような買い食いが可能なようす。
1階の多くは食料品の店ですね。
ふと思うんですが、
東京の築地市場などは個人で行っても全く買い物ができないことはないものの、
基本的には卸売市場であって、小売の場所ではないわけです。
クラインマルクトハレは規模からすると、
日本なら大きなスーパーマーケットくらいなところですが、
中では(おそらく)個人商店が軒を連ねて、商売をしている。
こういう形が何故日本に無くなってしまったんだろうかと。
まあ、理由は想像がつくところながら、
消費者サイドの考え方というのも大きく影響しますよね。
スケールメリットによる安価な商品提供ができるシステムなのかもしれないですが、
その方向性はどんどん地域経済を(あっという間に撤退してしまうかもしれない)大手に頼っていると、
しっぺ返しを食らうのはそれこそ消費者かもしれない…。
そんなことを考えつつ、今度はすぐそばにあった教会に入ってみました。
この日もなかなか暑い日でしたので、日影でひと休みに教会は打ってつけでして。
日本のガイドブックには載ってなさそうな教会でしたが、
どの程度の来訪者があるのか、堂内を紹介する日本語解説の資料が置いてありましたですよ。
その資料によりますと、このLiebfrauenkirche(聖母教会)は
「1325年に…聖堂参事会の教会として発足」したとあって、なかなかの歴史を感じさせます。
内陣の本祭壇を飾っているのは「8人の小天使と雲の輪、聖三位一体と聖母被昇天の群像」で、
1765年頃にマインツ
の職人の手によって作られたものだそうで。
と、このあたりの教会といえば…と思い出したのは、St.Katharinenkirche(聖カタリーネン教会)。
こちらはガイドブックにいささかの紹介が載っておりまして、
1749年にゲーテ が洗礼を受けたという教会なのですね。
「ステンドグラスが美しい」てな紹介でもあったので覗いてみましたが、
ぼっこいカメラではステンドグラスを写すのは難しいようですなあ。
こちらの教会にも日本語で書かれた案内があり、
それによれば1790年にモーツァルト
がこの教会を訪れて、オルガンを演奏したのだとありました。
亡くなる前年ですので、こんな時期にいったい何しにフランクフルトくんだりまで?と思うや、
神聖ローマ皇帝ヨーゼフ2世の逝去に伴い即位するレオポルト2世の戴冠式に同行したのだとか。
(確かにフランクフルトは戴冠式のための町
であったわけで…)
wikipediaによりますれば
「私費を投じてコンサートを開催し、ピアノ協奏曲26番ニ長調 K.537「戴冠式…」などを演奏するも
聴衆は不入りだった」とありますので、モーツァルトこの時期のフランクフルト行は
死期を早めることにも繋がってしまったような気がしないでもないですね。
とまあ、思わぬところで思わぬ史実にでくわす町歩きなのでありました。