唐突ですが、このレリーフはニーダーヴァルト記念碑
の台座の部分にあったもの。
雰囲気的に何かの神さまっぽい男性と女性の像でありますけれど、
右側の男性はライン川の擬人像、左側の女性はモーゼル川の擬人像ということで。
ドイツ語の名詞には男性名詞、女性名詞、中性名詞と3種類あることはご存知と思いますが、
一般に「川」は女性名詞とされる中で一部の川だけ男性名詞とされ、ライン川はその代表格とか。
この日の歩き出しであるリューデスハイムは「Rüdesheim am Rhein」、
つまりライン川沿いのリューデスハイムと呼ばれておりまして、
「am(an demの省略形)」に「dem」という定冠詞があることで、
ライン川が男性だと分かるわけです。
これがモーゼル川沿いにあるコッヘムという町になると「Cochem an der Mosel」、
ここに「der」が使われているので、モーゼル川が女性だということも分かるわけですね。
もっともここに出てくる「dem」、「der」は定冠詞の4種類ある格変化の3格ですので、
普通は1格(主格)の定冠詞を付けて「Der Rhein」、「Die Mosel」という形で見るのが一般的かもです。
と、大学の第二外国語でドイツ語を選択したような方には懐かしいのではというひと幕でしたが、
では何だってライン川は男性名詞なのかということを勝手に想像してみますと、
ドイツにとってラインという川が相当に特別なものなのではなかろうかと。
日本語では「母国」、英語では「Motherland」という言い方がありますけれど、
それに相当するドイツ語は「Vaterland」、つまり「父国」なんですね。
「父国」とは聞きなれないので「祖国」とでも言っておきますか。
(「Mutterland」という言葉はあるようですけれど…)
そうした根源的な拠り所を男性系と意識しているのがドイツということからすると、
ライン川を敢えて男性名詞としているのは、古来ラインが特別な存在であることを
示しているのではなかろうかと…と、想像ですが。
さて、ニーダーヴァルトでの果て無き(?)逍遥
による疲れも、
アスマンスハウゼン
でのひと休みでだいぶ回復してきたところで
続けてまたしばしののんびりタイム。
Ring Ticketによる最後のお楽しみとして、父なるライン川のミニ・クルーズでありまして、
桟橋にちょうど到着するところの観光船に乗り、リューデスハイム
まで45分間かけて戻ります。
これはライン下りならぬライン上りになるコースなわけですが、
数多の観光客で賑わうライン下り本来のハイライト、
つまり次々登場する古城もローレライも実はここより下流なのでありまして、
ここでライン川を遡上してどうするよ?てなご意見もおありかと思いますが、
どうも普通の観光客とは異なる行動をとる性質だものでして…。
進行方向と反対側、つまりは下流の方向は
斜面にブドウ畑というよりはもはや山がそのまま川に切れ落ちている地形で
この辺りがライン渓谷と呼ばれる所以であるとともに、
日本でも木曽川にライン下りと称するものがあるのも
この山がちな地形だからこそ日本と似てると言えることにもなるのでしょう。
とまれ、船はアスマンスハウゼンを出航し、
ちょっと前までひいこら言いながら登った斜面を左に見ながらゆる~と進んでいきます。
敢えて「ゆる~」といいますのは、
斜面の方から通航する船を見下ろしていたときも思ったですが、
ライン川というのはかなり流れが速く、しかも流量が多いなという感じなのですね。
ですから、遡上する船がゆるく思えるのも当然のような気が。
そうこうするうちに、やはり先ほどは上から見下ろしたエーレンフェルス城が見えてきました。
今度は見上げる形ですけれど、よくまあこういうところに造るよなあと。
ライン川沿いには山の斜面に、時に川の中州に築かれた城の類いが多いのですけれど、
一番の目的は川を航行する船から通行税を取り立てるための監視のようで。
それでもそそくさと無銭通航をする船もあったことから、出先機関も造られたという。
これは左岸側ですけれど、「ねずみ塔(Mäuseturm)」という名前が伝わるこの塔からも
往時は通行税をすり抜けようする輩に対して追跡隊が出動したのかもしれませんですね。
そんな想像を巡らしながら船に揺られているうちに、リューデスハイムに戻ってきました。
船の上もまたほどよい休憩時間となったことで体力的には回復基調…かと思ったですが、
この過信が大きな間違いのもと。次にはそういうお話になっていきます。






