天下一のうどん屋 でたぬきよろしく腹鼓を打った後は、
界隈でいちばん遠いスポットへと向かうことに。


駅前の観光案内所でもって「途中にさほどの坂道なし」と一応確認した上で、
先程のうどん屋さんの並びにある自転車預かり所がレンタサイクルの貸出場所と教えられ、
館林市のレンタサイクル、通称「ポンチャリ」を早速借りに行ったのでありました。


以前、足利 に出かけた帰りに群馬県立館林美術館 に寄ろうと、
多々良駅(館林の先、ひとつ足利市寄り)の駅で「ポンチャリ」を借りたことがありますけれど、
これが利用料無料でしてポッと訪れた者には実にありがたい、ありがたい。


ですが、さすがに無料というだけあって、多少の整備不良は致し方無しといいますか、
ブレーキの利きが悪くて難儀しましたが、今回もまたほぼ同様。ま、ただですから。


注意をしながらも、駅前通りをまっすぐ東へと駆け抜けていきますと、
やがて水辺に出て、「おお、ここが城沼か」と。


「しろぬま」だとばかり思っていましたら、どうやら「じょうぬま」と呼ぶらしい水辺の
北岸をたどっていく最終目的地は善導寺というお寺さん。


で、そこまでの途中に善長寺というお寺さんがありまして、
「ここがそうじゃあないかな…」というところへ到達したものですから、
一度止まって、観光案内所でもらった(アバウトな)地図を確認しようと。


するとそこへ「どこ行くのよ」みたいな感じで散歩中らしきおじさんが声を掛けてきたという。
ほのかな訛りが北関東だなと思う瞬間でありますね。


目的地より先にまず場所の確認と思いまして「善長寺へ」と答えますと、
「ここだぁ」と背後の建物を指して言う。やっぱり…。


「どこから来たの?」と訊かれましたので「東京から」と言えば、
おじさんの曰く「そう、遠くからわざわざ…」と。
ああ、このおじさんは館林に根付いている人なんだなぁと思ったですよ。


ところで、こうした状況となりますと善導寺はさておいても
こちらに立ち寄らないわけでも行かず(ま、帰りがけに寄ろうとは思っていたですが)、
おじさんに感謝の言葉を述べて、巨法山善長寺で「墓まいらー」と化すことにしたのでありました。


巨法山善長寺@館林


ここでいちばんの館林ゆかりのこととなれば、
やはり「つつじが岡伝説」にまつわるお話になりましょうか。


豊臣秀吉の小田原攻め(1590年)が終わますと、

徳川家は関東に所領を移され、家康が江戸に入ってきます。
その際、徳川四天王のひとりである榊原康政は破格の待遇とも思われる出世で

館林十万石の領主になるのですね。


関東は徳川のものといっても当時は下野国はその領外であったようで、
北への備えとして腹心を配置したというところではなかろうかと。
同じく徳川四天王のひとり、井伊直政が高崎に置かれたのも同じ背景でありましょう。


とまれ、これによって榊原康政は初めての城持ちとなったわけですけれど、
康政の愛妾お辻の方とその侍女お松の供養碑が善長寺にあるでして、こちらになります。


お辻の方・侍女松女供養碑


で、これが「つつじが岡伝説」とどう絡むのかは、善長寺の解説板から引用してみることに。

(榊原康政の)愛妾お辻の方は寵愛を一身に集めていたが、それを嫉む他の妻妾の仕打ちに堪えられず、侍女お松を伴い城沼に身を投じて自殺したという伝説が残されています。康政はその死を悼んでお辻を弔うために沼の丘に上に植えられた一株のつつじが今日の県立つつじヶ岡公園の起りとも、いわれております。

愛憎生々しい感じもしますが、別説によれば、

お辻の方と侍女の松とが城沼で舟遊びをしているときに

沼の主(竜のようなものでありましょうか)に見入られ、

主の機嫌を損ねて類害が他に及ばぬようにお辻は沼に身を投げ、松女もこれに殉じた…と

この方が伝説らしい気がしますですね。


つつじが岡公園は城沼の南岸にあって、

善長寺からはちょうど沼越しに眺めやる場所になります。
季節になると辺り一面につつじの花が咲き乱れ、

このときばかりは(?)館林にも観光客が詰め掛けるようす。


康政が植えた一株のつつじに続き、

歴代藩主がつつじを植え続けたことでつつじだらけになっただそうでありますよ。


このほかに善長寺には、榊原家三代目の館林城主・忠次の母である祥室院の墓所があり、
また、かの剣豪・千葉周作…の師匠であったとされる杉江鉄助(館林藩士だった)の墓所も

あるということでありました。


榊原忠次の母・祥室院の墓所@館林善長寺

千葉周作の師・館林藩士杉江鉄助の墓所


と、ここでつつじが岡公園を対岸に望む城沼の写真でも配したいところですが、
どうした手違いか、ボケまくっていて見るにあたわず。

ま、つつじが咲いているわけでもありませんしね。
この際、さっさと切り替えて、善導寺へと向かうことにいたします。