神田から八重洲 (現在の)へと歩きますとその道すがら、
「十軒店跡」てな解説板を見かけましたけれど、江戸初期から商家が十軒ほど並んでいたのだそうな。
最初は桃の節句の人形や端午の節句の鯉のぼりを売る仮の店から始まったようですが、
(これが日本橋人形町とは、どう関わってどう違うのかは別の探究になりましょうか…)
賑わいがあれば別の店も出、その数も増え、常設店化し…てな具合は想像がつくところでして、
18世紀末の寛政年間には40軒を超える店が並んだと言われているようで。
今は日本橋室町と括られているこの辺り、
江戸時代の一大商店街ということになりましょうけれど、
そうした場所だからこそ越後屋呉服店、今の日本橋三越もここにあるのですなぁ。
まあ、買い物する予定はないので、三越は素通り…のはずであったものの、
ちらり見かけた催しものの案内に「琳派名品展」開催中とあって、つい足をとめた次第。
それでも「どうせデパートの催事場だろうし…」とネガティブな眺め方をしとりましたが、
どうやら伊勢丹のカード(三越のカードなら当然に)を持っていると入場無料になることを発見し、
「タダで見られるなら」と立ち寄ってみることにしたのですよ(何とも現金な…)。
入る前には「どうせデパートの…」と思っていたわけですけれど、
これがなかなかどうしてでありましたですね。
俵屋宗達に始まって、尾形光琳・乾山、江戸琳派の酒井抱一 、鈴木其一、
そして琳派の継承を窺い見るものとして、速水御舟や加山又造まで、
点数もほどほどでそれなりに見栄えのする展覧会であったように思われます。
会場内では琳派の特徴といった辺りを解説してくれるビデオ上映もありましたし。
紹介されていた特徴のひとつが「余白」ですけれど、
尾形光琳の「菊図屏風」や酒井抱一の「月に秋草図屏風」あたりを見ると、
描かれたところ、描かれていないところのバランスに思わずうなってしまうところかと。
また、時代を追って見比べることで、抱一、其一の江戸琳派が
必ずしも金地の華やかさに頼らない、色彩の艶やかさが際立つようになっており、
これがそれを受け継ぐ(とは言わずとも意識する)後の画家たちへのつながりが
感じ取れることにもなるのですね。
そうした、はっきりと琳派の継承とまでは言わないまでも、
先人たちが磨いた技法を意識した作品群の最後に登場するのが、加山又造 の「初月屏風」。
ひとつの到達点である上に、抽象にまで踏み込んだ感のある六曲一隻の大画面は
実に見応えがありますですよ。
ちなみに、今回の展示作品は全て箱根の岡田美術館所蔵のものであるそうな。
知らなかったんですが、この美術館は2013年10月の開館とまだまだ新しいもの。
また、そのうちに訪ねなければというところが出来てしまったなあと思ったのでありました。