しばらく前にアメリカ南部 のことに触れ、
思った以上に(アメリカとしては)歴史あるところに気付かされたわけですが、
アメリカの中でも取り分け歴史の浅いエリア、つまりは太平洋岸、
今で言うウエストコーストのお話であります。
と言いますのも、
「ゴールドラッシュ 49ers」(原題Gold Fever)というDiscovery Channnelの番組、
これが4回シリーズということもあって一気見のタイミングをはかって
録画したままになっていたのをようやっと見たから…というわけでありますよ。
アメリカ大陸は(白人の歴史観から言えば)西へ西へと開拓が進められていきましたけれど、
途中には山や砂漠、大河、それに野生動物、気候その他もろもろの障害があったことから
太平洋岸にまで到達するのはずいぶんと時間がかかったようでありますね。
何しろ1848年当時、サンフランシスコの人口は何と524人であったそうですから。
ただ、ここで1848年当時の人口と言ったのは何とも象徴的なことでありまして、
翌年以降はどんどん人が入ってきて溢れんばかりになる。
ちなみに1849年には9万人もの人が押し寄せてたのだとか。
こうして火がつくのがゴールドラッシュなわけですが、
この辺りのことはほとんど何も知らんかったなぁと番組を見ながら思いましたですねえ。
しかしまあ、「金」を発見したとすれば隠しておきたいと思うのが当然の心理ではないかと。
それが爆発的な人口流入に結びついてしまったのは、
やはりそこに仕掛け人がいたというわけですね。
その名をサミュエル・ブラナンと言いますが、全く聞いたことがありませんでした。
このブラナンという人は、サンフランシスコの商店主であり、新聞発行人だったそうですけれど、
何しろ500人くらいしか住んでいない町となれば、上がりのほども知れたものではなかったかと。
ですが、この人の狡すっからいところは、
サンフランシスコの東、山沿いの辺りで金が採れたと知るや、
隠すどころか大いに触れ歩いたそうなのですね。
自らの新聞にも書き立て、それをわざわざ東部の方にまで伝わる算段までしている。
こうなると、アメリカ中(海外からもですが)からひと山当てたい連中がわんさかやってくる。
そうと踏んで自らは、山に入って採掘するのに必要なスコップやらテントやらバケツやら食料やら、
とにかく一切合財を買い占めるという行動に出た。
大陸横断をしてようやくにたどり着けるカリフォルニアまで、
予め必要な物資を全部取り揃えて来る者はそうそういるはずもなく、
基本的に現地調達を想定しているわけですが、
金鉱探しに必要そうな品物はブラナンの店で買うしかないという状況に直面するのですね。
ブラナンの店はもはや独占企業でありますから、値段などは吹っかけ放題。
あっという間に財を気付いて、サンフランシスコの大立者になってしまうという。
自らは金探しという、見つかるかどうかも分からない、それこそ山師的なところには手を染めず、
実にうまく立ち回ったというべきでしょうか。
こうした点は自ら石油を掘ることなく、石油を牛耳ったロックフェラー
を思い浮かべたりしますが、
ブラナンの財は一代限り、というより手広く事業を手掛けたはいいけれど、
最初の買い占めのような大当たりになることなく、亡くなるときには文無しになっていたのだとか。
いやはやでありますなぁ。
金でひと山当てようとした人たちの側も、
それこそひと山どころかひと粒も当てられなかった人もいたでしょうし、
また実際に金鉱を発見できた人も、鉱脈を隠し通そうするあまり、家族も友人も信用できずに
隠遁者のような生活を送らざるを得なくなった人たちもあったそうな。
こうなると、いわゆる「幸福」とはどういうことであろうか…と思ってしまいますですね。
そも「ひと山当てる」という発想が多分に博打的であって、
そうしたことに夢というか、ロマンというか、そうしたことを感じる向きもあるのでしょう。
まあ、考え方というか、性分でもありましょうけれど、
こうしたことを思うにつけ、昔から言われる「過ぎたるは及ばざるがごとし」という言葉に
思い至ったりするところでありますよ。
今でも「ひと山当てよう」という向きが山ほど集まっているのでしょうから。