今夏に北ドイツを訪ねることにした誘因はさまざまあれど、
その中のひとつにシュレスヴィヒ・ホルシュタイン音楽祭があったのは紛れもない事実。


「旅に充てられるのはこの頃かな」という辺りのプログラムを見てみますと、
ちょうど面白そうなコンサートの開催日だったりしたわけですが、
分けてもリューベック にわざわざ4泊もすることにしたのは
このシュレスヴィヒ・ホルシュタイン音楽祭の演奏会を聴かんということでもありました。


シュレスヴィヒ・ホルシュタイン音楽祭2014


「シュレスヴィヒ・ホルシュタイン音楽祭」と度々書くのは長いので、
以下「Schleswig-Holstein Musik Festival」を略して「SHMF」と記しますが、
そもこのSHMFは夏の時期(つまりはクラシック音楽のオフ・シーズン)に
ヨーロッパ各地で開催される音楽祭の一つでして、その名のとおりに
シュレスヴィヒ・ホルシュタイン州内の各地に加えて

ハンブルク(ここはひとつの都市で州扱い)のホール等を会場に

日ごとあれこれの演奏会(クラシックがメインですが、時にジャズやポップス系も)が開かれるもの。


ヨーロッパで夏場の音楽祭と言うと、ザルツブルクやバイロイト、ルツェルンあたりが大所で、
もそっと気安い感じならロンドンの「PROMS」などが有名かと思いますが、
音楽祭はそればかりでなくたぁくさんやっているのでして、

それぞれのプログラムを見比べてみると、
同じ演目を引っ提げて音楽祭を渡り歩いているようなオーケストラもまま見かけるという。


有名どころになればなるほどチケットは取りにくく(チケット代も高く?)なったりしますから、
むしろいささかローカルな風の方が穴場と言えましょうか。


ですが、先ほど名前を出したザルツブルク、バイロイト、ルツェルン、ロンドンのいずれもが
ひとつの都市で連日コンサートが開かれるのに対して、SHMFの方は非常に広域で
小さな町々を巡回しながら、展開されるものなのですね。


こうした開催形態は、他の国にもありますけれど、ドイツには多い気がしますですね。
SHMFの他にも、同じ夏の時期にお隣の州内で開催されるメクレンブルク・フォアポンメルン音楽祭とか、
ヴィスバーデンを中心にライン河畔の町々で開催されるラインガウ音楽祭とか。


音楽ファンを広く集めるためには、一都市滞在でたくさんのコンサートが聴ける

ザルツブルク型の方が有利なのにな…と思っていたですが、
これまでにリューベックとその周辺の町を訪ねたりしているうちに思い付いたのは、
小さな町のひとつひとつがそれぞれ自立したところがあって、

極端な大都市がない地域なのだろうということ。
(ハンブルクは、知らなかったですけれど、ドイツ第二の都市で大きな町ですけれど)


それに、過密化と過疎化が同時に点在する日本よりは、

それぞれの町がそれなりに平準化しているような。
ですから、どこにも分け隔てなく音楽ファンがおり、

そのいるところへ音楽会の方が出向いていくのだろうと、
まあ、こんなふうに思ったわけです。


で、小さな町の教会を会場にしたような演奏会も捨てがたいとは思いつつも、
何せ近いようでも鉄道の本数は少ないし、なかなか行き来に難儀しそうなので、
リューベックの2回に絞り込んだような次第でありました。


トラヴェ河畔に建つMusik- und Kongresshalle@リューベック(聖ペトリ教会から)


ちなみにリューベックのMusik- und Kongresshalleで聴いたコンサートですが、
ひとつはヴァレリー・ゲルギエフ指揮、マリインスキー歌劇場管弦楽団の演奏会で、
一昨年秋に所沢で聴いたときに何とまあ心地良い音を出すものかと思ったものですから、
相当な期待のもとに出向いたのでありますよ。


ブラームス の交響曲3番、4番をメインに置いたプログラムでは
なるほどやはりマリインスキーの音は強奏部分でも余計な「圧」がない、
シルクのような肌触りに包まれた感がしたものです。


が、どうしてゲルギエフという人は

ステージ上であんなに詰まらなそうに振ってる(振り終えてもですが)んですかね。


CDなどで音だけ聴いているのとは違いますから、どうしても目に入りますし、
視覚的要素も含めたところに生演奏に接する妙味もあろうと思うと、

気分的には下降気味になってしまうような…。


ヴァレリー・ゲルギエフ ザビーネ・マイヤー


もう一つも同じ会場、北ドイツ放送交響楽団の演奏会で指揮はマルクス・シュテンツ。
ですがこの日の主役は、プログラムの真ん中におかれたウェーバーのクラリネット協奏曲第1番の
ソリストとして登場したザビーネ・マイヤーでありましょうねえ。


名前を聞いただけでカラヤンとベルリン・フィルの確執を思い出すものの、

思い浮かぶのはただそれだけでしたですが、
思いがけずも結構な長身で、ステージ栄えする人がこれまた振りも大きく、吹いてらっしゃる。


低音から高音まで実にのびやかで、やはり視覚的効果がプラスアルファとなって、
素敵な演奏だったなと思ったものでありますよ。

後にCDのBoxセットを購入して、これまた聴きながら反芻したりしておりますよ。


Sabine Meyer Clarinet Connection-Clarinet Concerto/Sabine Meyer


リューベックのホールは、その名前からすると会議場なんかにも使われるのだねと

高を括っていたものの、どうしてどうしていい会場ではなかったですかね。


Musik- und Kongresshalle@リューベックのホール内


実のところ、このたびの北ドイツ行きではこの後、ハンブルクで

もうひとつSHMFの演奏会を聴いたですが、それはまた後ほどハンブルクでのお話の方で。