「14番線に代わったよ」

ハンブルク中央駅 の電光掲示板に従って8番線で待っていたものの、

リューベック行きのICEは全くもってやってくる気配がない中、

ふらりと現れたドイツ人青年のひと言に弾かれたようになったのでありますね。


辛うじて「Vielen Dank!」と感謝の言葉を投げるのを精一杯に

火事場の馬鹿力よろしく荷物を持ち上げ、階段を駆け上り、目指すは14番線。

ホームへ降りる階段から見れば、そこには確かにICEが停車中でありました。


例によって頭の中では「銭形平次」のオープニングテーマが過ぎりつつ、階段を駆け下り、

「滑り込みセーフ!」とこれまた頭の中でひとりごちる。


ほっとしたところで「よく間に合ったなぁ、発車時刻はとうに過ぎているのに…」と思うも、

落ち着いてしまうと今度は一向に列車が発車しそうにないことが気になって仕方がない。

結局のところ、6分遅れでICEはハンブルク中央駅を出発したのでありました。


もしかして番線変更があったから出発を遅らせたのかなとも思ったですが、

本来ならリューベック着21:40のはずのところ、6分遅れで行くと21:46の到着。

駅前ホテルだから、何とか10時までには掛け込めるかな…と算段したところで思い返してみると、

「たぶんあれが番線変更のアナウンスなのだな…」と思い当たることありだったのですね。


よもや自分の乗る列車、しかも特急ですし、やおらの番線変更など想像していなかっただけに、

ホームでのアナウンスをほとんど気にかけていなかったですが、

「フィア・ツェー」とかなんとか言ってるなというのがあったですよ。


が、この「フィア・ツェー」をてっきり「Vier C」だとして聞いてしまった。

ホームがやたら長く、1等車と2等車の分かれ目があったり、

列車によっては途中切り離しもあったりの関係か、

ホームのところどころに「A」とか「B」とかいう掲示が出ているのを目にしていたからでしょう。


これが後になって思うところは、

アナウンスが言っていたのは「フィア・ツェー」ではなくして「フィアツェーン(Vierzehn)」、

要するに「14番線」と言ってくれていたのだなと。


とまあ、そんなことを思い返しながら、リューベックへの車中の人となったわけですが、

10分遅れでハンブルクを出発したICE、言わばドイツの新幹線ですから、

多少は遅れを取り戻してくれるかもとの期待が高まる中、

車内の速度表示によると「お!150㎞出とる!」という時があるかと思えば、

やおら100㎞くらいになってしまったりと、駅でもないのに妙に加速減速をせわしなく繰り返す。


刻々と時間は過ぎて行く中、遅れを取り戻すどころか、さらに遅れを上積んで

ようやっとリューベック中央駅に到着、時刻は9時56分になろうかという辺りでありました。


事前にGoogle Mapでもって「この辺りだな」とインプットしていたホテルの場所を目がけて一目散、

幸いにしてイメージしたよりも格段にリューベックの駅前はこぢんまりとしており、

たちどころにホテル名のネオンサインが見え、まだ灯りのともったロビーに掛け込んだときには

ほぼ10時になっておりましたですよ。


クローズ間際にやおら掛け込んできた東洋人がひたすらぜいぜい息を切らすようすは

さぞ胡散臭いものであったろうと想像しますが、こちらも慌てていたものですから

「イッヒ・ハーベ・レザベイション」などと英独ちゃんぽんの言葉しか出てこないのには

胡散臭さ倍増でもありましたでしょう。

(正しくは「Ich habe eine Reservierung.」(イッヒ・ハーベ・アイネ・レザヴィールンク)てなとこかと)


とまれ、名前を告げるとレセプションにいたおじさんが満面の笑みでもって、

そそくさと鍵を渡してくれましたですよ。


「10時過ぎると、玄関のドアは閉まってしまうのですよね」と聞けば、

ルーム・キーを指して「これがあれば玄関も入れるから大丈夫!」とにこにこ顔だったんですが、

そのルーム・キーをちゃんと受け取りたいがためにダッシュしたのであって…。


ようやっとリューベックのホテルに到着


ちなみにこの写真は、いったん部屋に落ち着いてから煙草を吸いに外へ出たときに撮ったもの。

そも辿りついた瞬間はチェックインのことで必死ですから、写真を撮るような余裕はないわけで…。


で、そのころにはすっかりロビーは灯りが落ちて

経営者ご家族もプライベート空間へと移動したあとだったのでしょう。

先のルームキーを玄関脇のもうひとつのドアに差し込んでみて、

ちゃあんと錠が開くことを確認できました。


何しろ翌日の晩にはひとつオーケストラの演奏会を聴きに行って、

帰りが10時を過ぎることは必定。

念のためにも試しておきませんとね。


とまれ、都合22時間ほどの移動を要した、長い長い第一日は終了。

シャワーを浴びて、ベッドにもぐりこみ、さぞや「ぐ~!ぐ~!」だったことでありましょう。