ビーナスライン を外れた寄り道のひとつが北八ヶ岳ロープウェイ であったわけですが、
もうひとつはざっくり言うと奥蓼科というあたり。


中央本線の茅野駅や中央道の諏訪ICから蓼科へ向かう場合のアプローチは、
いわゆるビーナスラインを上っていくことになりますけれど、
奥蓼科はそのビーナスラインの延長上とは別の道の奥まったところ、
横谷峡という渓谷を隔てて多少行き来のしにくい場所にあるのですね。


で、そんなところへ出向いたわけはと申しますれば、こういうことになります。

ハーモ美術館 のところで少々触れたように、
以前市川の芳澤ガーデンギャラリーへ素朴派展を見に行ったことがあるんですが、

その足で鉄道の駅にして二駅ほど先の東山魁夷記念館にも立ち寄りました。


そこで画伯の作品の中でも有名な「緑響く」という作品の舞台となった場所が
奥蓼科にある御射鹿池(みさかいけ、みしゃかいけ)であったことを知ったのですよ。


東山魁夷「緑響く」(部分)


気付いた時は折しも、やはり蓼科にあるマリー・ローランサン美術館が閉館目前という頃合い。
こりゃあこの機にまとめて見に行くかぁと一頻り盛り上がったものの、
都合のやりくりがつかぬままにローランサン美術館は閉館と相成ってしまい、
何か別途の機会に御射鹿池には出向いてみようと常々思っていた…と、こういうわけです。


作品が湛える静穏な佇まいからすれば、さぞかし山間にあるように思われ、
比較的近くで行ったことのある場所とすれば、かつて北横岳に登る前に小休止をした雨池か、
それほど山の中ではないにしても白駒池あたりが雰囲気に適うところという気がしてました。

が、実際は…。


近付いていくと、忽然と路上駐車した車が列を作っている場所に行きあたると、
その車道沿い右手に御射鹿池はありました。


路駐の車があるということは当然に乗ってきた人たちが池を見に、
というより写真を撮りにわんさか出張っている状況。


そして予め知っていたことではありますが、ここは灌漑用の人工池であって、
車道側から見て右の方にはいかにも人口的な堤が築かれているのですね。


こうした語り口調からして、がっかり度合いが伝わってしまうところかと思いますが、
実のところ「世界三大がっかり 」にはさほどがっかりしなかったにも関わらず、
こちらの方はどうも。


秋の御射鹿池



もっとも、時節柄(「緑響く」とのタイトルの印象とは異なって)紅葉が水面に映え、
確かにきれいな場所だなと。そして、アプローチが困難なわけでもない。
東山画伯にしても、通りすがりにたまたま見かけた池にインスピレーションが湧いたのでしょう。
他にも池(やはり農業用ため池?)はあちらこちらにあるんですから。


ですから、がっかりはともかく、ここから「緑響く」を生みだした東山魁夷という画家の技に
改めて感心するという思いが新たに湧きおこってきましたですよ。


そのことに気分を持ち直して、

もひとつ、御射鹿池からは歩いて訪ねられる場所へ向かいました。
どうやらこちらまでは皆さん、あまりお出向きにはならないようで。


明治温泉と書かれた看板を見て脇道に入り、下ることしばし。
渓谷を流れる水音が高くなってきたところで河原へ降りる段々を下ると、ありました!


おしどり隠しの滝


おしどり隠しの滝、横谷峡の渓谷遊歩道の終点とも言うべきところです。
夏場だったら、涼を求めてこの渓谷遊歩道を歩くというのもいいでしょうなあ。