下諏訪の「時の科学館 」のことを書いていて思い出したものですから、

ちょっと前のお話を。


先にもタワー 絡みで高層ビル の話をナショナルジオグラフィックチャンネルで見たですが、
普段は「何だか戦争というか、兵器の番組が多いよなぁ…」と余り近寄ってはいなかったものの、
(ディスカバリーチャンネルもその傾向があるような気がしますですね)
中には少ないながらも面白そうなプログラムがあるようで、
「水車からボーイング777へ」という副題に釣られてまた見てしまっていたわけでして。


「The Link」というシリーズの中の一つで、
科学技術の発展史を辿るような内容かなと思って見始めたですが、
どうも科学技術の分野にとどまらない、ひとつのことが別のことにつながってさらに次へと
リンクしていく流れを見せてくれる番組といったらいいですかね。


では、水車に始まってトリプルセブン(B-777)に繋がるプロセスはどうなっていたのか、
ちとおさらいしておこうかと。

(番組の中でも何回もおさらいをするので、かなりの刷り込み効果です)


始まりは中世の修道院。
厳しい戒律故に世俗から離れて自給自足の生活を送る修道士たちでしたけれど、
日々の糧としてのパンを作るにも小麦の粉挽きが大変な作業で、
一日7回(!)の礼拝時間の確保にも支障を来すほどであったそうな。


そこで水車を用いて粉挽きの手間を省くことに成功したということなんですが、
水車を動力として利用するのは紀元前からあったにはあったようですので、
新たな発明というわけではなさそうです。


それでも実用化という点ではクリーンヒットだったわけで、
修道士たちがの礼拝時間確保はもとより、自給に必要以上の粉が挽けるものですから、
これを売買することで修道院は裕福になっていったのだとか。


で、先に科学技術史の面ばかりでないと言いましたように、

富裕になった修道院が何に蓄財を使うかが次のステップですが、
ゴシック建築による大聖堂の建立に繋がっていくという。


先に「タワーの文化史」でゴシック建築では大きな尖塔を持つ教会の高さ競争みたいな面も
見ましたけれど、それを底支えしたのが水車に端を発して蓄えられた財産だったのですなあ。


教会の尖塔は鐘楼として使われることが多いわけですが、
ここで鐘を鳴らすのも人力だのみの作業であり、また鐘撞きのタイミングもまた難しい時代、
結果として自動で定時に鐘を撞くためのシステムが作られることになるのですね。


そして、鐘撞きで実現した定時性は当然のように

「今が何時であるか」を容易に知ることのできる機械式時計の発明へと繋がります。

(ここらへんはやっぱり科学技術史ですが、かつ中国の水運儀象台とは違う成り立ちですね)


それまでは明るくなったら起きて作業し、暗くなったら寝る…みたいな生活だったものが、
時計によって1日は24時間であり、それを分割した時間の長さが意識されるようになると
例えば地主が小作農に「毎日、きちんと同じ時間だけ働きなさい」、

「はあ、そんなもんですか…」と労働時間の概念が生まれることになったのだそうです。

(ここらは科学技術史でないですね)


結果的には毎日きちんきちんと働くことが生産性を向上させることになり、
生産物に余剰が生じれば(元の修道院ではありませんが)商品として交易が行われる。


こうしたことが一時期海を制したヴェネツィアの繁栄とも関わるのでして、
遠隔地との貿易ともなれば、商品輸送のために船舶需要が高まることになりますですね。


船があちらにもこちらにも物資を運んでいくとなると、その数が多い分、
難破の可能性が高まることになりますから、危うい海域には灯台を建てて、

航海の安全を図る必要が出てくる。


例えば干潮時には海の上に頭だけ出しているような岩場に、
その姿が見えなくなる満潮時に不用意に近づいては

たちまち座礁の憂き目に遭ってしまいますから、灯台を建てて…となるところですが、

いつも海面上にあるわけではない場所にどうやって灯台を建てるのか。


当時のセメントは乾ききるまでに時間がかかり、
中途半端に水をかぶって波の勢いを浴びてしまうとすぐさま倒壊してしまう…と、
そんな事情から防水セメントが考案されることになったそうでありますよ。

まさに必要は発明の母というわけです。


防水セメントの考案は水場近くの工事が格段にやりやすくすることに繋がりますけれど、
これで恩恵に浴したのが内陸部の都市であったというのですね。


何となれば、当時の物資輸送の花形はやはり船であって、

これは川を遡上する水運においても同様。
自然の川ではそうそううまくいかないにしても運河があれば大丈夫だったわけです。


が、本来的に水は高いところから低いところに流れるものながら、
運河は文字通り運ぶための河ですから、なだらかな方がいい。


かといって、どうにか土地の高低差は克服しなければならない…

との必要から、閘門が作られる。
この閘門建設に防水セメントは大いにその力を発揮したのだといいます。


こうして内陸部への通運手段が確保されると、
アメリカのような広大な国土にも例えばエリー運河のような輸送路が作られ、
内陸の都市デトロイトあたりも一躍工業都市としての繁栄を誇るようになっていくという。


と、この部分からのリンク度合いはちと無理矢理っぽいですが、
工業都市であればこそ引きつけられたのか、

ヘンリー・フォードがやってきて自動車生産を始める。


何とか大衆にも販路を拡大せんとすれば、低価格を実現せねばと考えだされたのが、
生産ラインによる量産体制の確立、まさに映画「モダンタイムス」の世界でありますね。


で、ようやくボーイングの出番ですが、トリプルセブンのような大型航空機の組み立てにも

実は流れ作業の発想は活きているのだそうであります。


「モダンタイムス」でもそうですけれど、生産ラインはその流れが速ければ速いほど、
量産が可能であるのに対して、トリプルセブンの動きは実にスロー。
それでもラインを動かさないよりは、

組み立て箇所に必要な部品を持っていく手間が減じられるのでしょうね。


ま、このように(番組をなぞっただけですが)
水車からトリプルセブンへと見事な(?)繋がりが示されましたけれど、
何だか「風が吹けば桶屋が儲かる」的な感、無きにしもあらず。


それでも、歴史の何かしらに接する際にいろんな要素を複合的に見ていかないと

片手落ちになるなぁと改めて考える切っ掛けにはなりましたですよ。


それにしても、この「The Link」というシリーズもの、
長い歴史を顧みればいっくらでも作れるでしょうなぁ(笑)。