国立美術館
には閉館間際まで粘って各展示室を廻っていたのですけれど、
正確にはまだ閉館時刻でないのに警備員がそそくさと部屋を閉め始めるさまを見せられては
「もう、無理!」とあたかも追い立てられるように建物を後にしました。
が、折悪しく雨が降り出し、
(といって、コペンハーゲンでは常に降ったり止んだりの天気続きでしたけれど)
毎度のことながら何故か平然と雨に打たれて歩いて行く欧米人を
目の当たりにしたのでありましたよ。
朝から空模様がすぐれず、今日もまた振ったり止んだりであろうことは予測可能なわけでして、
日本人ならおそらく折り畳み傘を用意しておろうものをそうではない人たち。
頭から濡れるがままにしておくのは、どういう習性なんだろうかと思うところでありますね。
歴史的には天文気象に疎いとはとても思われず、
実際、雨の中をゆるゆる歩いてたどり着いたラウンドタワー(Rundetårn)という建物は
欧州最古の天文台であるというのですから(…また、タワー
のお話)。
1642年にデンマーク王クリスチャン4世
(またまた登場!)によって建造されたもので、
1861年までの200年余り、ここで天体観測が続けられていたのだそうです。
デンマークの天文学者といえばティコ・ブラーエが有名ですけれど、
生没年が1546年~1601年となればこのラウンドタワーでの観測は行いようもないわけですが、
天体望遠鏡の発明(17世紀初頭)以前に肉眼による超新星の発見のほか、
膨大な観測記録を残したのだといいます。
ティコ・ブラーエ自身が地動説にたどり着くことはなかったようですけれど、
彼の残した観測記録を研究に活かしたケプラーが天文学に大きな足跡を残しているのは
誰もが知るとおり。
こうした経緯もあって、デンマークでのティコ・ブラーエ評価はさぞかし高いものなのでしょう、
中央駅からほど近い湖(貯水池ですかね?)の畔には彼の名を冠したプラネタリウムが
なかなかに斬新なデザインで建っているのですね。
ところでラウンドタワーに話は戻りますが、
中に入ると石床の螺旋状スロープがずぅっと続いておりまして、
これをぐるぐるぐるぐる登っていくこと7周半、頂上に到着し、
今では市街を眺望する展望台になってます。
展望台部分は高さ34.8mとざっくり言って10階建ての屋上てな感じですから、
展望台としてはそう高いものではありませんが、周囲の建物が低いので見晴らしは十分です。
(もちろんコペンハーゲンでより高い展望施設もありますが)
で、旧市街と思われる道幅の余り広くない裏通りにラウンドタワーはあるものですから、
たどり着いたときにはその円筒形の建物にばかり目が行ってましたけれど、
地上から頂上まで7周半する途中途中に円筒部分から横に張り出した
建物と繋がってるスペースがあったのでした。
これが何とも奇妙な感覚と言いましょうか、円筒形と信じて疑わなかっただけに
建物の途中でなぜここに床があるのか的に思ってしまうところなわけです。
昔、TVアニメ版「ゲゲゲの鬼太郎」のだるま(だったと思う)の話の中で、
やはり塔状の建物にあるときは無かった層が別のときには現れるてなところがありましたけれど、
唐突にそんなこと思いだしたりしたのですね。
とまれ、その途中の脇スペースは、塔そのものがコペンハーゲン大学の施設であるところから
大学図書館となっていたそうですが、今ではショップ、カフェ併設のイベントスペースのようですね。
カフェ併設とは言ったものの、実際はショップに行って20DKKを払ってコーヒーカップを借り、
コーヒーマシンで勝手に注ぐというだけですが…。
登って下りて、改めて塔を見上げますと、
外壁上部に取り付けられた文字がどうもヘンテコだなと。
特に王冠の上あたりは「一部、剥落しちゃってる?」とも。
実はこれが、クリスチャン4世王自らがデザインした判じ絵なのだとか。
「神よ、クリスチャン4世王の心に、正しい知恵と正義を与えたまえ。1642年」
と読み解くことができるそうなんですが、いささか自己満足的な気も。
ま、絶対王政の時代でしょうかねえ。