観光客でごったがえす人魚姫の像 を後にして、
海を左に見ながら水上バス乗り場に向かっていきますと、
かの人魚姫の像に比べると遥かに立派な像が見えてくるのですね。
ヨーロッパの他の都市であればギリシア・ローマ神話に基づくものと考えるところですが、
ここはデンマークのコペンハーゲン、やはり北欧神話の女神ゲフィオンとのことであります。
コペンハーゲンにこの像が作られたのは「なるほど!」の理由があるのでして、
スカンジナビア政府観光局の紹介文をちと引用させてもらうとしましょう。
その昔、「一晩で耕せるだけの土地を与えよう」と約束したスウェーデン王の言葉を信じ、女神ゲフィオンは自分の息子4人を牛に変えて必死に耕し、その結果、スウェーデン領土だった島を獲得しました。
それがコペンハーゲンのあるシェラン島(Sjælland)だという伝説があります。像はその伝説を表現しており、水しぶきを上げながら邁進するゲフィオンと牛の表情は圧巻です。
ということで、コペンハーゲンの生みの親と言ってもいいような存在なれば、
あって当然のモニュメントということになりましょうか。
ちなみに上の紹介文では「単に土地を耕した」と思えるところですが、
海の上をいくら耕したところで土地ができるとは不自然(神話ですけどね)なわけで、
別の土地をほじくり返してきて、土を盛り、均してシェラン島が出来上がった…
というお話のようです。
では、どこの土地をほじくり返したのかと言いますと、
何とまあスウェーデンのストックホルムからというではありませんか。
土を持っていかれてしまったところが今ではメーラレン湖になっているのだそうです。
ゲフィオンに変な約束をしてしまったと時のスウェーデン王は歯噛みしたんではないですかね。
という建国神話ならぬ建都神話ゆかりのゲフィオン像を通り過ぎると、ほどなく水上バス乗り場。
ここで待つことしばし。「おお、来た、来た!」と。
前方の扉がバタンと開いて接岸すると、そそくさと乗り降りがあってたちどころに出発。
なるほど「バス」だなと思いますね。
通っているところは実際には海なんですが、対岸が常に見えている水路状のところですので、
どうも川のように思えて仕方がない。ま、隅田川の水上バスも川と海の境はあいまいですけれど。
どこでもわりとユニークな建物にしたがる傾向のあるオペラハウスは
ここでもいっぷう変わったふうで(オスロ
ほどではありませんが)、
そうした建物を見やりつつバス停(船着き場)にして5つほど乗り、
たどり着いたのは王立図書館前。
この王立図書館というのがまた、
「ブラック・ダイヤモンド」と呼ばれるように変わった建物なんですが、
到着地点からでは建物が大きすぎて写真に撮れなかったものですから、
ご興味おありの方は検索を。
と、ここから石造の、といってもあまり特徴のない街並みを抜けて歩いていきますと、
ようやくにして「ニイ・カールスベア・グリプトテク(Ny Carlsberg Glyptotek)に到着。
(場合によってはニュー・カールスバーグ美術館と呼ばれたりしているようです)
カールバーグと言えばビールということでなりますけれど、
やはりビール会社創業者二世のコレクションを展示する美術館でして、
ニイ(ニュー)というからには「旧」があるのかと言えば、
どうやらこの二世の方は一時期創業者から離れて
「ニュー・カールスバーグ」という会社を作っていたのだとか。
美術館の名称はそれの名残のようですね。
グリプトテクとは「彫刻陳列館」の意とのことで、確かに考古学的史料と思われるものから
いわゆる彫刻的作品の数々はちょっとやそっとでは見きれないほどの収蔵量。
そんなときには亜熱帯の植物を配した中庭で小休止するのもよろしいかと。
一方で絵画作品の収集にもコレクションが広がっていった結果として、こちらの展示もなかなかですが、
たまたま入館無料日だったために(コペンハーゲンカードを持っていると何だか損した気分…)
大層な混み具合で、楽しみにしていた特別展「Degas' method」は
日本での印象派展 にも近い状態。
残念ではあるものの、混んでる展覧会が苦手なたちとしては、早々に退散することに。
ここにはまたの機会に再訪と行きたいところでありますよ。