混んでるだろうなあ、でもなかなか見られんだろうなあ・・・とあれこれしていた挙句、
会期終了(5/26)間際になってようやく出かけたのでありますよ。
「奇跡のクラーク・コレクション -ルノワールとフランス絵画の傑作-」展に。
なかなか見られんだろうなあというのは、このコレクションを所蔵するクラーク美術館のロケーションから。
アメリカ、マサチューセッツ州のウィリアムズタウンというところにあるのですけれど、
「Sterling and Francine Clark Art Institute」のHPでDirectionsを見ても、
北、東、西の方角から車でアプローチするルートの紹介が主になっている。
辛うじて下の方に「ウィリアムズタウンまではニューヨークやボストンからのバス便あり」とあるものの、
どうやらボストンからは車で3時間かかるとなれば、バスだといったいどのくらい?となるわけでして。
とまれ、かくも行きにくいなれば見ておくにしくはなしということになるわけですが、
いささか積極性を欠いたふうで出向いたところ、その展示の数々はといいますと
まさに山椒の味わい、小粒でぴりりの連続であったのですね(大ぶりな作品もありますが)。
ルーヴルやメトロポリタン美術館に所蔵されるような超有名作が並んでいるというわけではないですが、
クラーク夫妻が集めたプライベート・コレクションをベースとしている作品群は
コレクターの目利き度合いを量るに十分というべきでありましょうか。
それにしても図版などを通じて目にする機会があまりない作品にも
驚かされるものがたくさんあるものだと改めて。
印象派は概して色遣いが鮮やかではあるものの、
例えばモネの「レイデン付近、サッセンハイムのチューリップ畑」やルノワールの「日没」といったあたりは
鮮やかさといったところを超えて「鮮烈」とも言える「強さ」が目を眩ませるところでありますよ。
と、名だたる大御所画家の間にあって、あまり聴きなじみのない作家にもまた
目が釘付けになるような作品が見られました。
ひとつはジョヴァンニ・ボルディーニの「道を渡る」(1873~75年)という作品です。
写実的ながら静謐さの故にあたかもストップ・モーションをかけたかのような背景の中、
真ん中に置かれた一人の女性だけが「動き」をまとったように描かれています。
「動き」の眩惑にはついつい目をぱちくりさせて見直してしまうところでありますよ。
マッキアイオーリの作品に影響を受けたとも解説されるボルディーニですけれど、
作品を見る限りでは(出身がイタリアだという思い込みもあろうかと思いますが)
「イタリア未来派」に繋がるものを感じたりもするのですよ。
ボナールの「乗合馬車」を見たときと同じような感覚ですね。
もうひとつはジェームズ・ティソの「菊」(1874~76年頃)でしょうか。
フランス生まれながら後年イギリスで活躍したという情報がインプットされたせいか、
いかにも同時代イギリスのヴィクトリア朝絵画を思わせるところがあるような。
絵の解説に曰く「ヴィクトリア朝時代にあるべき女性の『教養』にも結びつく」てなことがあるのを見ると、
やっぱりなと思ったりもするところでありました。
このコレクション展は全73点と、量的におなかいっぱいとなるものでは必ずしもないながら、
おいしいところを少しずつあれもこれもと詰め込んでいった結果の充足感を得られるのではないかと。
6月からは兵庫県立美術館に巡回となるわけですが、
さぞや待ち遠しく思われる方も多いことでありましょうね。