ベルニナ急行に乗車してサンモリッツ駅からティラノ駅までやってきた。
日本語の駅名表がお出迎え。
スイスからイタリアへ、国境を跨いだことになる。
時刻は16時前。
明日はミラノ空港から帰国ということになる。
今宵はミラノに宿をとっている。
goolgeでミラノまでの経路を検索すると、ティラノからミラノへは直通列車があり、2時間ほどで行けてしまう。ティラノに到着したらあとは、イタリア国鉄に乗るだけ。楽勝のはず。
まずは切符を買う。
何気に出発案内をみると。
「MILANO 16:08 CAN」と書かれている。
その下に「SONDORIO 16:08 1」とある。
下の方は分かりやすい。16:08に1番線から出発であろう。
ふむ。「ミラノ は 16:08 に CAN=できる!」な訳がない。
はて「CAN」ってなんだ。
Google殿に聞いてみると、ミラノ行は16:08にティラノ駅から出発すると申される。
とりあえず、カッコいい列車の先頭車両の写真を撮っておく。何やら周りの客が騒がしい。
やはり「CAN」というのは問題のようだ。
私が不安そうに出発案内を眺めていると、香港か台湾の方と思われるお兄さんに声をかけていただいた。
お兄さん 「ミラノに行くの?」
私 「そうです。」
お兄さん 「聞いた?」
私 「何をですか?」
お兄さん 「ミラノへ行く列車はキャンセルだって。」
私 「キ、キ、キ、キャンセル!!!???」
お兄さん「でもね、この列車に乗って、コリコへ行って、コリコからバスに乗ってレッコに行って、レッコからまた列車に乗ってミラノまでは行けるみたいだよ」
私 「・・・ サ、サ、サ、サンキュー、ヴェリーマッチ、・・・」
「CAN」とは「CANCELED」
のことだったようである。
とても親切なお兄さんだった。ミラノへの行き方もサラッと教えてくれた。けど、頭は真っ白で、全然記憶できなかった。
でも、なぜか、何とかなるわ・・・と思った。今振り返ると、なぜそんなに度胸が据わっていたのか、不明であるが、ミラノまでの乗換手順を聴き直すことなく、列車に乗り込んだ。
「どうせ、ここにいる大半の4,50人が皆、ミラノへ行くんだろ。最悪、みんなに付いていったらいいやん。」と。
列車に乗り込んで、動き出すと、車掌さんのお姉さんがやってきて、検札を開始した。その時、「ミラノへの行き方はきいた?」と尋ねてきた。「いや、よくわからないんだ」というと、懇切丁寧にさきほどのお兄さんが言ったことを教えてくれた。今度は、必死にメモった。これで一安心。
それにしても、ひとたび国境を跨ぐと、こうも違うのか。
スイス国の列車の正確性が懐かしい。
これが一つ目にイタリアの洗礼であった。
イタリア国鉄のHPを観てみると、サラリの、全国ストライキと書いてある。
まったく迷惑な話だ。
列車はイタリアの農業地帯をひた走る。アルプスが北側にそびえたち、とても見ごたえのある風景がつづく。
イタリア側からアルプスを眺めると、それはもう険しく、山の稜線と平地の標高差がとてつもない。日本で見る北アルプスや南アルプスの感覚とはスケールが違う。ローマ帝国の人たちはこのアルプスを越えて、帝国の領土を広げていったわけだが、この山を越えて国を広げようと考えたことが凄いことだと思われた。
列車には幸い、ディスプレイがあって、現在どこを走っているのかとか、次の駅名とかが表示されて、降りるべき駅は分かるようになっている。バスに乗り換える「コリコ」へ到着。すぐさまに、人々は民族大移動のごとき止まっていたバスに向かって歩き出す。我もそれに従う。そしてバスに乗り込む。さきほどの香港か台湾からのお兄さんも乗り込んだ。間違いない。安心だ。
大型バスは満員で出発、とても快適だ。高速道路をひた走り、車窓には美しい湖がみえる。
ただ、途中でアル中みたいな爺さんが突然、車内を歩きだし、私の席の後ろにあった真ん中の出入り口の階段に座り込み、何やら叫びだした。みんな、ガン無視であるが、怖い。なんか、突然暴れたら、殺されるのではないか。。。まだ死にたくない。ビクビクしていたら、バスはレッコ駅に到着した。
出発案内板をみると、ミラノ中央駅行きがあった。これで一安心。
さきほどのティラノ駅の券売機で切符を買ったときに、おつりがでなくて、代わりにおつりの引換証みたいなのが出てきたので、その引換証をもってみどりの窓口的なところにいく。そして「券売機からこんなのがでてきたので、おつりをいただけますか」というと、めっちゃ面倒臭そうな対応で、調べだして、「ID」って言ってきた。「IDがないとダメだよ」。「IDって何?」って聞くと、もう東洋人は失せろ的な感じで引換証を返してきた。腹がったけど、IDって身分証のことだからパスポートでも出したらいいのか、と思いパスポートを渡すと、やはり面倒黄さそうに何やらパソコンを打ち出した。おつりって3ユーロくらいだったのだけど、3、4分くらいなんかして、やっとお釣りをくれた。
この対応ひとつとっても、スイスとは全然番うな、とつくづく思った。スイスの人の優しさが懐かしい。
気を取り直して、ミラノ中央駅行きの列車を待つ。
ここでもホームにいた人が鉄道公安みたいな人に逮捕されて、大声を出して暴れていた。スイスと全然雰囲気が違うんですけど!イタリアは2度目で、10年ほど前に訪れたのだけど、こんな感じの国だたったけ?もっとイメージがよかったんだけど。
19時01分。ミラノ中央駅行きの列車に乗車。
これで今日中にはミラノのホテルに着けて、明日の飛行機に乗れると思い、安心した。
途中、モンツァというF1好きなら知っている、イタリアGPのサーキットのある街を通過した。
約1時間の乗車で19時50分にミラノ中央駅に到着。
普段の倍くらい時間がかかったが、明るいうちに着けてよかった。
それにしても巨大な駅。さすが世界のミラノ。