クリムゾンワールド -3ページ目

クリムゾンワールド

独自のジョジョの世界。

受け継がれる血統だが、本編とはまるでかけ離れた世界。


主人公の名前は『ジョルト•ジョースター』。

この物語は真実の是非を問われる内容になる予定です。


何も期待せず読んでください。

今日の気分は最悪だ。



見るもの全てが赤く、そして紅く見える…。






街に出ても、家で過ごしても、そして寝ている時でさえも瞼の裏側も紅く見える。












僕はただの大学生だ。周りから見ればきっと『普通』に見えるだろう。







しかし、自分ではそんなことは少しも思っちゃあいない。









人にはない『力』を持っているからだ。



…だけど、それを便利だとか、人よりも有利だなんて考えたこともないし、この『普通』という概念が大多数と『同じ』であることが求められるこの世界では、僕の持っている『力』なんて無い方がいい。



僕はただ『普通』に生きたいだけなのだから。















今日は本当に気分が悪い。

原因はよくわかっていて、体調が悪いとか、イライラしているとか、そして『悪夢』を見たからとかではない。










9月17日







毎年この日にはやっておかなくてはいけない事があったし、それを考えただけで気分が悪くなる。







ただそれを行わないことだけは決してしない。











この世界には『忘れたいこと』や『忘れた方がいいこと』は沢山ある。

しかし、『忘れてはいけないこと』も必ず存在する。
それがどんなに辛く悲しいことであっても。












「身分証や手荷物、そしてポケットの中身を全てここに置いて、こちらでチェックを受けて下さい」







30歳前くらいの若い男性は事務的な声でジョルトに伝えた。







「手荷物はこれだけですか?」





ジョルト「…はい」






「そうですか。それでは中で座って待っていて下さい」









男性から許可を受けたジョルトは薄暗くカビ臭い部屋へと通された。








…部屋というには語弊があるかもしれない。









強化ガラスによって二つに隔てられた部屋、そこは世間では『面会室』と呼ばれている。







ここは嫌いだ。


見ただけで、居るだけで、空気を吸うだけで吐き気がしてくる。








でもこれから会う「あいつ」には吐き気なんかでは収まらない程の嫌悪感、いや恐怖感、もしくは絶望感。

この世のあらゆるマイナスな感情表現では表せないくらいの感情が湧き上がってくる。








まるで濁流に飲み込まれ、身動きが取れず呼吸も出来ないのに、苦しくても苦しくても楽に死ぬ事なんて出来ず、強制的に生かされているような…。



そんな表現が1番しっくりくるのかもしれない。
















「入れ、囚人ナンバーM2075624」











ガチャ…











ドアが静かに開き、そのドアが開く向こう側には、短めの銀髪で身長が180センチは超えているであろう初老の男性が、静かに面会室へと入ってきた。












「座れ、面会時間はいつも通り10分だけだ。いいな?」






何も答えない初老の男性は静かに椅子に座った。

彼の両腕には手錠が付けられていたが、正直な見た目の感想は、誰もが彼は根っからの紳士で名家の出身であるだろうと思うに違いない。





囚人服を着ているのにもかかわらず、そう錯覚させてしまうほど彼は気品に溢れていた。













この初老の囚人の名は、











『アドゥーソン•タイラー』








かつては普及活動を行う神父を生業としていたが、今では服役して早10年。









罪状は『殺人 及び殺人未遂』




死刑囚として死刑執行を待つばかりの身だ。












タイラー「…よく来たな。義息子よ」





ジョルト「……」





空調のない面会室では換気口の音だけがうなりを上げ部屋中に響いていた。













タイラー「…君がここに来てくれると、もう秋になってしまったんだな、と季節の移り変わりを感じることが出来るよ。…今年も何も喋らないつもりかい?良かったら私に君の近況を話してくれないだろうか?ここはどうも退屈でね…。本を読む日々にもさすがに飽きてきたところなんだ」















ジョルト「……」












一方的にタイラーが話すなか、ジョルトはじっとうつむいたまま黙っている。















タイラー「話し相手も看守や囚人達だけでは物足りなくてね。私にとっての楽しみは今では1年に一度君に会うことだけだし、そして今の目標は久しぶりに君の声を聞くことだよ…ジョジョ」














目を合わせてしまうと普段忘れかけていた感情が強制的に思い出され湧き上がってくる。


しかし、目を合わせることがジョルトには苦しく、嘔吐してもおかしくないくらい気分は最悪になってしまう。






…でもあの日を忘れないためにはタイラーの顔を、目を、全てを見なければいけない。















ジョルトがこの世で1番恐れていることはただ一つ、それは『忘れる』こと。






それだけは決してしてはいけない。





『忘れることが大切』と知った風なことを言う者もいるだろうが、ジョルトにとっては『忘れる=死』と同じ意味なのだから…。

















タイラー「どうすれば君の声を聞かせてもらえるかな?…フフッ」






気持ちでは見なければいけないと思いながらも身体は拒否し、うつむいたまま動けないでいる…。



それほどまでのトラウマがジョルトには根付いているのだ。










「残り時間5分だ」











タイラー「…もうそんな時間か。楽しい時間はあっという間だね、ジョジョ。…そうだ、1年ぶりの再会を祝してここは一つ思い出話でもしようじゃあないか」













とても殺人鬼とは思えないような気品のある表情を浮かべ、タイラーは嬉々として話を続けた。













タイラー「あれはもうちょうど10年前になるのかな?あの時のことはよーく覚えているよ、私はね。君はどうかな、ジョジョ?」

















タイラー「…あの娘は私にとっても君の次にお気に入りでね。純粋で清楚で、私を「お父さん」って呼ぶ時の顔がたまらなく好きだった。血は繋がっていないのに本当の娘のように感じたものだったよ。でも一つ残念だったのは最期の言葉が「お兄ちゃん」だったことが非常に残念だったね」













小さく震える身体をジョルトは必死に抑えた。



小刻みに手が、足が震える。

それを抑えるように握りしめた手は爪で血が滴っている。











タイラー「…あの日の事は忘れてはいないよ。ジョジョ、君も覚えているだろう?「お兄ちゃん、お兄ちゃん、お兄ちゃん……」と何度も口にしながら死んでゆく彼女…。とっても可愛らしくて……」













ジョルト「…れ。…まれ……れ」

















タイラー「…なんだい?」

















ジョルト「…れ。…まれ。…だまれ。…黙れ黙れ黙れ黙れ黙れ黙れ黙れ黙れ黙れ黙れ黙れェッ!」













怒号を吐きながら顔を上げたジョルトは、顔に一筋の泪を浮かべそう言い放った。













タイラー「…やっと声が聞くことができたね」














ジョルト「…黙れ。それ以上口を開くな…!」




















ピシッ












突然二人を隔ていた強化ガラスにヒビが入り無残にももろく割れていた。












ガシャガシャガシャン……ッ












「おい!何をしている?!」









看守が異変を感じ駆け寄ってくるが、ジョルトとタイラーは一歩も動くことなく睨み合っている。



いや、正確にはジョルトは睨んでいるが、タイラーは静かに微笑みながらジョルトを見つめているだけだった。


まるで公園で遊ぶ我が子を見守るような親の表情で…。














タイラー「…もう少し話していたかったが終わりの時間のようだ。楽しかったよ、ジョジョ。次は来年とは言わずまたすぐにでもきて欲しいものだね」















ジョルト「…待ってろ。僕は必ずいつかあんたを……殺す」













タイラー「…んー!良い表情だ。そんな君が大好きだよ、ジョルト!いつかきっと私を殺しに来るんだよ。…私の今の楽しみは君に会うこと。さっき叶ったがこれまでの私の目標は君の声を聞くことだった。…そして私の今の『夢』はね、法ではなく『君に殺される』こと。これを考えるだけでワクワクして夜も眠れないのだよ」


















ジョルト「…狂ってる」




















「…おい!何故ガラスが割れたのかわからないが、もう面会時間は終わりだ!房に戻れ…ッ!」










看守は無理やりタイラーを椅子から立ち上がらせ、先ほど入ってきたドアの方へ連れて行こうとした。










タイラーは後ろを振り返りながら、ガラスの散らばった面会室の様子とは裏腹に静かに落ち着いて話す。











タイラー「最後に言っておくが、私を殺す時はさっきのガラスを割ったように『スタンド』を使うことなく、君のその素手で殺してくれないか…?…フフフフッ」








そう言いながら、タイラーはドアの向こうに連れて行かれていた。

そしてドアが看守によって閉められる瞬間放った最後の一言。




















タイラー「…ああ、そうだ。君にはまだ伝えてなかった思い出があったね。私が好きだったあの娘『ディアナ』は…」































タイラー「とっても『美味しかった』よ」























ジョルト「…………ッ!」













ガシャン…!








看守によって面会室のドアは閉められ、最後に一言言い放ったタイラーの姿はもう見えなくなっていた。






















…この面会室に残ったのは、ジョルトの姿と、割れたガラスと爪で出血したジョルトの血の匂いだけだった。












to be continued