ガチャ
ルームシェアをしているリヴがジョルトの部屋のドアを開いた。
もう既に11時を過ぎていたし、今日は学校も休みとは言えそろそろ起こさねばと思ったからだ。
リヴ「…いない。もう起きて出掛けてたか…。……ん?」
いつもは感心するほどに綺麗に片付いているはずのジョルトの部屋が今日は散乱していた。
昔の新聞の記事や雑誌の切り抜きがされているファイルがそこら中に転がっている。
リヴ「…あいつ、まだこんな物を持ってたのか…」
そこに置かれている記事は古いものばかり、1番古いものは10年前のもの…。
2005年9月18日付 新聞
【殺人鬼タイラー神父(38) 逮捕】
そこに書かれている記事は、当時一斉を風靡し、新聞だけではなく、雑誌やテレビなどにも特集されるほどセンセーショナルな事件だった。
当時、タイラー神父は教会を孤児院代わりに利用し、戦争や貧困で困っていた孤児達を引き取り育てていたのだ。
だがその神父は子供達を殺し逮捕されたのだが、何よりも世間を賑わせたのが、『殺した事』ではなく『殺し方』だった。
彼は引き取り育てた孤児達を、
『生きたまま喰らう』ことで絶命させていたのだ。
この事件が発覚し、逮捕されたのが2005年9月17日7時28分。
当時、近隣の住人が信仰の祈りを捧げる為に向かった教会にて、神父とまだ小さな子供が倒れているのを発見し警察に通報したところ、現場の状況より逮捕に至ったのだ。
彼らは二人とも真っ赤な鮮血にまみれ、眠るように倒れていたという。
動機は未だ不明のまま。
タイラー神父の話す事は全て意味不明、支離滅裂であり、精神異常の疑いがあったが、精神鑑定は『正常』であった。
どうして孤児を引き取っていたのか、どうして子供達を喰らっていたのか、全てが謎のまま事件は解決となり、神父は『死刑』を求刑されたのだ。
…以上が10年前に起きた事件であり、現在のジョルトにとって最大のトラウマとなっている。
リヴ「…ジョルトのやつまた『面会』に行ったのか。…それじゃあ今日は戻ってこないか…」
軒晒しの建物はもうただの廃屋にしか見えず、ここが以前は教会だったなんて礼拝堂に残る十字架を見ない限り誰も思わないだろう。
ジョルトは以前自分が育った教会に来ていた。
毎年この日は必ず教会へと向かうようにしていたのだ。
…心が、身体が『あの日』を忘れないようにするために、そして目に焼き付けるためにジョルトは必ず訪れるようにしているのだ。
誰も人が住まなくなった建物は、あっと言う間に朽ち果ててしまい、年々元の姿を失い続けている。
礼拝堂…、この場所に掲げられていたキリスト像も今では無くなってしまい、残るのは沢山の椅子と、ボロボロで変色してしまった讃美歌用のピアノが一台のみ…。
ジョルト「…ここは少しずつ廃れていくのに、僕はあいも変わらずここにきてしまうな…」
子供の頃はこうなるとは夢にも思わなかったし、ここまで「憎しみ」っやつが根深く、そして持続するなんて思ってもみなかった。
…けど全てを忘れて生きることなんて『出来ない』ことはわかっていたし、「復讐」だけが今のジョルトの『生きる理由』でもあるのは間違いない。
ジョルト「…懐かしい。…とはまた違う感覚だな。なんていうか、薄れてきた気持ちを、そして『あの日』の感情をもう一度蘇らせてくれるような…」
…?
礼拝堂を目的もなく歩いていたジョルトは急に立ち止まり、自分の異変気付いた。
ジョルト「…なんだ?左手が急に痺れだした…。……!?クッ…!」
痺れていた左手が急に大きく震えだし、ジョルトの意思では動かせない程、上下に動き大きく暴れ出した。
ジョルト「なに…!?き…急に僕の左腕が…!?」
暴れ出した左腕に振り回されたジョルトの身体は、引きづられるようにボロボロのピアノの前まで動かされたが、ピアノの前に立つと嘘のように暴れるこをやめた。
ジョルト「何が起きてる…?!いったい僕の左腕はどうなったんだ。思うように動かせない…!」
ポロン ポロン🎶
…!?ピアノの前に着いた途端大人しくなった左腕は、ジョルトの意思とは関係なく勝手にボロボロのピアノの弾きだしたのだ。
ジョルト「…クッ!どうなってるんだッ!?僕の左腕は…!やめろ…ッ!」
必死に右腕で『勝手に動く左腕』を抑え込もうとするが、左腕は力強く鍵盤を弾き続ける。
ポロン ポロン……ポロンッ
…!!
ギイッ…、ギギギギィ…
突然左腕が思うように動いたかと思うと、ピアノの弾くのをやめた。その途端、今ではもう飾られていないキリスト像のあった壁が引戸のように開いた…。
ジョルト「…な、…なにが起こったんだ?左腕が自由になったと思ったら………。隠し部屋…なのか?」
よく見るとそこには地下へと続くような階段があり、先は真っ暗で1メートル先も見えない状態だった。
ジョルト「……ここは………?」
コツコツコツコツ
「…ん?」
独房の見廻りをしている看守は、ある独房室からメロディーのようなものが聴こえてきた。
タイラー「ーンーンンーン🎶」
「…アドゥーソン•タイラー。鼻唄をやめろ」
タイラー「…ん?ああ、これは失礼。『たった今』嬉しい事が起きてね。ついつい鼻唄を口ずさんでしまったよ。フフフ…」
「…お前、まさか『スタンド能力』を使ったんじゃああるまいな?」
タイラー「フフフ…。さて、どうだろうね。でももしそうだとしたら『あの子』が『あの部屋』を見つけったってことだから喜ばしいことだよ…フフフ…」
薄暗く明かりのほとんどない独房室に、静かにタイラーの笑い声だけが響いていた…。
タイラー「…さあ、全てを知る時がやっとこれから来るんだよ。……『ジョルト』」
To be continue