2005年9月
紅葉舞う季節の到来。
有る町の片隅の教会のドアの外で小さな少年が隙間からドアを除く姿…。
山に面したその教会は、人里離れた場所に立っており、昔から孤児を引き取っては立派な少年、少女を育て上げ、皆から慕われる神父が住んでいた。
神父の名は『アドゥーソン•タイラー』。
周りの人達は『タイラー神父』と呼び、皆が慕い敬った。
この教会で育てられた孤児達は12歳になると里親に引き取られることになっているのだが、今日はその日にあたる。
雲一つないこの日、里親に引き取られることになっていたのは来月12歳になる少女、名前を『ディアナ•ローズ』といい、いつも真っ赤な小さいカチューシャを付けてクシャクシャの笑顔が印象的な女の子であった。
彼女は両親が4年前に交通事故で亡くなっており、二人兄妹であったが6つ歳上の兄は当時孤児として教会に入る条件を満たしておらず、泣く泣く妹は教会へ、そして兄は遠くの里親に引き取られ別々に暮らすようになっていたのだ。
彼女は兄からもらったその真っ白なカチューシャが大のお気に入りで、いつも肌身離さず付けている。
そんな彼女ももうすぐこの教会を出なければいけない年齢になり、タイラー神父は献身的に彼女の里親を探していた。
その甲斐もあり、とうとう彼女も里親に引き取られることになったのだ。
別れの日の前の晩、ベッドが隣同士だった少年と彼女は夜遅くまでヒソヒソと今迄の思い出を語り合い、夜明けまで話し合っていた。
少年は彼女とずっと仲が良かったわけではない。
しかし、これまで一つ屋根の下で何年も過ごしてきた事を考えれば、不思議と淋しさも込み上げ、自分の話をしては彼女の話も真剣に聞き、心より彼女のこれからの幸せを願うばかりだった。
少年が印象的で一番覚えている少女ディアナの言葉はだた一つ、
「将来はお兄ちゃんと一緒に暮らしたいんだ」
この言葉があの夜で一番覚えている言葉だった。
明くる朝、不思議と少年はいつもの起床時間よりも1時間ほど早く起きてしまい、まだみんなが寝静まっている中でどうしても眠れないため、外を散歩することにした。
この日は本当に天気が良く、彼女を送り出すのは最高の日に間違いないと思いながら少年は鼻唄まじりで歩いた。
…そんな少年も来年で12歳、その時はこの教会を出なければいけない。不安はもちろんあるが、今は彼女の門出をお祝いしよう、そんなことを思っていた。
…そんなことを考えているといつの間にか宿舎より少し離れた教会へとたどり着く。
まだ夜が明けたばかりで誰もいない教会の前に。
近くに住む信教者達もこの時間に教会に訪れることはなく、誰もいない静かな礼拝堂のある教会は明かりもなくシンと静まっている。
…はずだった。
いつもは煌々と明かりがついている教会だったが、誰もいない時は明かりも消され暗いはず。
しかし、こんな時間にもかかわらず、教会のステンドグラスからは少し弱々しい明かりが漏れているように見える。
少年はタイラー神父がもう来てるのかな?なんてことを考えていたが、何か少し寒気を感じる…。
教会の入口まで近づくとドアから明かりが漏れており、そしてロウソクのようなもので灯されたであろうその明かりはユラユラと揺れ、時折人影のようなモノを映し出していた。
ドアをそのまま開けても良かったのだが、少年は身体に得体の知れぬ悪寒を感じ、そっとドアの隙間から礼拝堂を覗いたのだ。
中を覗くと明かりは僅かにロウソクが灯っているだけ。
目が慣れるまでは何も見えない…。
夜が明けたとはいえ、まだ空は薄暗く、教会の中まで太陽の光が届いてさえいない。
だが、そんな薄暗い中でも僅かに人の気配がする…。
そして耳をすますと、何かテーブルから水をこぼしたような、水滴が床に滴り落ちるような、そんな『ピチャピチャ』と言うような音がずっと聞こえている。
毎日訪れ、そして祈りを捧げた教会の礼拝堂…。
だがそんな行き慣れた場所だからこそ感じるものは『違和感』、ただそれだけ。
…僅かな明かりの中、少年は目を細めよく見てみると、誰かが片膝をつきながら座り込み、何かゴソゴソと動いている。
「神父…?」背格好や髪型、そして服装など、後ろ姿とはいえ、紛れもなく『タイラー神父』そのものであった。
しかし、こんな時間にこんな場所で何をしているのだろう…?
タイラー「神よ…。もうすぐあなたの元へ淑女を清らかなままお送りいたします…。そして………」
…?なにか話している?
カランッ…
何かが神父の手元から床に落ちた。
「あれは…?…カチューシャ?」
神父の手元から落ちたものには見覚えがあった。
色は違っていたが、あの形は間違いなくディアナのカチューシャ…。それが何故神父の手元から床に落ちたのだろう。
ゴトン…
そしてカチューシャだけではなく、丸いサッカーボールのようなものが…、しかしボールとは思えない重量感の音を出し、またしても神父の手元から床に落ちた。
…しかし、数秒も経たずボールではないことに少年はすぐに気付いてしまった。
少年は『目が合ってしまった』のだ。
神父が床に落としたサッカーボール大の『モノ』と。
「ディ…アナ…?」
思わず声が出ていた。
少年は気付いた。そのボールのようなものがボールではなく、身体のない『ディアナの頭』だということを…。
…そして先程見たカチューシャは間違いなくディアナのカチューシャであると…。
ただの色違いではなく、真っ白だったはずのカチューシャが『血』によって真っ赤に染まっていただけなのだ。
彼女の血によって。
『ディアナ』はこちらをじっと見ている。瞬きもせずに。
タイラー「…おまえか」
「…!?」
驚愕、目眩、混乱、恐怖…。様々な感情が少年の頭に、身体に、そして心に絡みつき、身動きが出来ない状態に陥ってしまった。
そしてドアを開けたタイラー神父が言ったのだ、「…おまえか」と。
「あぁ…ああ…」
声を出そうと思っても言葉は出ない。逃げようと思っても指一つ動かない。
タイラー神父の口の周りは真っ赤に染まり、その手には真っ赤に染まった小さな子供の腕を持っている…。
タイラー「…見てしまったか…。それじゃあ『家族ごっこ』も今日で『終わり』だ…。ジョジョ…」
「うぅ…うああああああぁぁぁ…ッ!!!」
2015年9月
「……ああぁぁぁッ!」
自分の叫び声で目が覚めた。
リヴ「…よう。やっと目が覚めたみたいだが、また悪い夢か?」
コーヒーを淹れながら彼はそう言った。
金髪で髪が長く、身体の線が細い彼の名前は
『リヴ•ペリー』。
現在ルームシェア中であり、先に目が覚めていた彼はコーヒーを淹れながらそう言った。
「…またか……。ごめん、この時期になるとどうしても『あの夢』を見てしまうんだ」
夢にうなされ、今目を覚まし、茶色のヘアーに緑の瞳の彼の名前は、
『ジョルト•ジョースター』
現在大学在中の21歳であり、生活費節約のためにリヴ•ペリーと一緒に暮らしている。
彼の子供の頃のアダ名は、
『ジョジョ』
今はそう呼ぶものはこの世界にはもう誰もいない。
…ただ1人を除いて。
to be continued