なんとか、出航時間には間に合った。
受付で、乗船手続きを済ませて、衣服を船内仕様に変える。
乗船に向けて、着替えと荷物を整理していたのだけど、
持ってきたはずの歯磨き粉が見当たらない…。
「アレ…」ちょっと慌てた。
僕は、歯ブラシにはちょっと意識が高い。
プラークコントロールをしないと一日が終わらないのだ。
なので、慌ててコンビニを探して駆け込む。
運良くセブンイレブンの在庫整理品の歯磨き粉が、安く売られていた。
船内で食べる、弁当や夜食などを買い漁り、乗船ゲートへ。
バイクの乗船者は、僕を含めて5人。以外に少ない。
もちろん、他の連中はハーレーやネイキッドタイプの排気量があるバイクで
原付などはいるはずもなく、僕ひとり。
なぜかバイカー達はとても、厳つい風貌の人しかいない
ギャングの集会に紛れ込んでしまった好青年という図だ。
まだ時間はあるし〜と思い
ちょっとフェリーターミナルの建物の中を散策していたら
いつの間にか
みんな(バイカーたち)が乗船してしまっている!
出航時間までは、まだあったのだけれど、どうやらしきたりとして
乗船開始になったら、早めに乗るのがココの礼儀らしい。(よくわからないけど…)
慌ててエンジンをかけて、甲板へ。
船から降ろされた鉄板のレールを登るのだけど、なんせ初めての経験。
ドキドキする…。
「ちょっと大きき目にまわってください」と係員の人に言われる。
大きめ? こうかな… 軽く旋回して、
甲板を登ると誘導されて、船内の駐車スペースへ。
鉄板を無事登りはじめると、以外に早く登り終えてしまった。
”もう少し、登りたかったな…”と子供のような欲求がこみ上げてくる。
その後
係の人の手によって、アドレスに毛布が掛けられ、その上から船の揺れで倒れないようにロープで固定される。
これで、アドレスも寒くないな… などと思う。
この時、自分に愛犬を可愛がる如く、
バイクを愛おしく思う気持ちがあることに気が付いた。
僕もバイク王のCMに出れるだろうか。
荷物をもって船内に入ると、またテンションがあがる。船は、何度か乗ったことがあるのだけど、日本海側の船は初めてだ。
気のせいか、物静かな人が多い気がした。
室内に入って、くつろぎタイム…。
と思いきや、女性乗務員さんが、チケット確認しに入ってくる。
チケットを見るなり、「お客さん、部屋が違います!」と窘められる。
しまった… ツーリストJを予約したつもりが
大部屋である雑魚寝部屋を予約してしまった!変更ができるそうなので、船内
のフロントで差額を支払い、チケットを購入。
再び、自分の部屋へ帰ると、安堵感からか疲れが…。
徹夜で走っていたので、お風呂にもはいりたいのだけれど
いや…かったるいな~…
かったるい16世… 精一杯に絞り出したギャグだ。
「ピンポンパンぽーん♪ ただいまより、ビンゴ大会を行いますので、ご参加の方は……」
どうやら、噂のビンゴ大会が始まるらしい。
いやいや…疲れてるから、ビンゴ大会なんて……
気が付くと 僕はビンゴ会場にいた。
もらえるものは、もらいたい。
そんな、おばちゃん気質の自分が嫌になる。
結果、以外に早めにビンゴをして、
”北海道米ゆめぴりか”がもらえた。
隣に座っていた、家族づれのおばさんに、「やったわね!」と祝福をもらい
会場をあとにする。
再び部屋に戻ると
薄い壁から聞こえる おじさん団体の声を聞きながら
しばらく金縛りに遭ったかのように、動けずホゲーーっとしていた。
(※ホゲーは、ボケーの最上級)
薄い壁から「よし!風呂入りに行こう!」と、おじさんが言っているのが聞こえた。
そこから、30分ほど経っただろうか、
「じゃー俺も風呂入ろう…」と
思い立ち、お風呂へ向かう。
船内の浴槽からは、航行中の海が見える。けっこうな面積の窓ガラスが設置さ
れているのだけど、
丸見えじゃないか…… 俺が丸見えじゃないか……
そう思うも、ここは大海原の中だ。
人に 見られる心配はないだろう。。
カモメさんたちには、サービスだ
浴室に入り
頭を洗い、体を流していると、なにかのタイミングで浴槽のおじさんと目が合う。
会釈をかわすと、ちょっとした会話を交わした。
その方は、60代前半の方らしく、年の割にはほどよい筋肉がついていた。
どうやら普段は、ジムに通っているらしく、今回もそのジムの仲間でグループ旅
行にきたという。
「僕は、大阪からきているんだけど、いろんな日本の山々を登ったりしてきた
よ。北海道の山も、登った。大雪山とか…」
色々と山の、話をしてくれたが名前は覚えきれなかった。
だけど、北海道を一周するという話をすると、親身に色々教えてくれた。
途中で、また知らないおじさんが会話に加わってきたり、なんだか旅っぽくて楽
しかった。
その大阪のおじさんは、なぜか風呂を上がるタイミングも同じに合わせてくれて
脱衣所でも会話は続いた。
そのジムのグループは、男と女4:4みたいなことを言っていた。しかし、その中
に奥さんは入っていないらしい。
「え、なんで奥さんつれて来ないんですか?」と尋ねると
「いや、女房を連れてきても、こういうのはあまり好きじゃないからさ」とおじさん。
いつも、感じることなのだけれど、遊び上手で夫婦仲が上手くいっている人は、
奥さんとの距離の取り方がうまい。
ふつうなら、遠出の旅行であれば夫婦一緒と思ってしまうのだけれど、
そうではないらしい。
お互いの趣味が合えば別だが、好きでもないことにまで合わせてムリクリ一緒
にいることはない。
これが、遊び上手なおじさんの言い分。
そんなおじさんと、ふやけた体でお風呂を出ると、
「俺こっちだから」と、とても豪華で高いラグジュアリーな客室へ。
お~。。お金ないって言っていたのに、いい部屋に泊まってるんだ…と思って別れると
しばらくして、おじさんが出てきた。「こっちじゃないわ…」
どうやら、天然らしい…。
一人の寂しい時間を、埋めてくれたおじさんに感謝して
別れると部屋に戻る。
少し、体を横たえて休息。
せっかくだから、船外の甲板デッキへ。
ほ~、へ~…と一通りみる。
戻ると食事にありついた。

のり弁のお米は、新潟県産のコシヒカリ。
旅に出ても体に気をつかい、サラダをチョイス。
ドレッシング、ハム、卵は別売り。
遠くに聞こえる笑い声と、薄い壁からダダ漏れのおじさんグループの声を
聴きながら眠りにつく。
「さっき、どこいってたんだ?」
「風呂だよ、若いのと話してたからさ」
と聞き覚えのある声。。。
さっきのお風呂のおじさんだ。
なんだ、隣だったのか…。
壁を隔てたすぐ隣がおじさんの寝床のようだ。
しばらくて、隣の部屋も静かになると
そのおじさんがいびきを かきだした。
そのいびきの五月蠅いこと。。。
でも不思議と不快さはなかった。
知り合いだと、少しのことは大目に見れる。
これって不思議だ。 近所問題なりも、付き合いがあるかないかで
心持ちが随分と違うものだ。
よし、今日はおじさんのイビキをBGMにして眠りにつくとしよう。
30分後、僕は「うるせーな…」と呟いた。