『あんのこと』 なんばパークスシネマ | ジョニー暴れん坊デップのA部屋

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※なんばパークスへ。映画『あんのこと』初日初回に観に行ってきた!!

 

・eiga.com 作品情報 『あんのこと』

■解説

 「SR サイタマノラッパー」「AI崩壊」の入江悠が監督・脚本を手がけ、ある少女の人生をつづった2020年6月の新聞記事に着想を得て撮りあげた人間ドラマ。
 売春や麻薬の常習犯である21歳の香川杏は、ホステスの母親と足の悪い祖母と3人で暮らしている。子どもの頃から酔った母親に殴られて育った彼女は、小学4年生から不登校となり、12歳の時に母親の紹介で初めて体を売った。人情味あふれる刑事・多々羅との出会いをきっかけに更生の道を歩み出した杏は、多々羅や彼の友人であるジャーナリスト・桐野の助けを借りながら、新たな仕事や住まいを探し始める。しかし突然のコロナ禍によって3人はすれ違い、それぞれが孤独と不安に直面していく。

 「少女は卒業しない」の河合優実が杏役で主演を務め、杏を救おうとする型破りな刑事・多々羅を佐藤二朗、正義感と友情に揺れるジャーナリスト・桐野を稲垣吾郎が演じた。

2024年製作/113分/PG12/日本/配給:キノフィルムズ/劇場公開日:2024年6月7日

オフィシャルサイト

 

 

■スタッフ

監督  脚本 入江悠 製作総指揮 木下直哉 企画 國實瑞恵 エグゼグティブプロデューサー 武部由実子 プロデューサー 谷川由希子 関友彦 座喜味香苗 撮影 浦田秀穂 照明 常谷良男 録音 藤丸和徳 美術 塩川節子 スタイリスト 田口慧 ヘアメイク 大宅理絵 金田順子 音響効果 大河原将 編集 佐藤崇 音楽 安川午朗 音楽プロデューサー 津島玄一 助監督 岡部哲也 キャスティングテスター 杉野剛 制作担当 安達守 ラインプロデューサー 山田真史

 

■キャスト

■インタビュー 

 河合優実が語る、佐藤二朗・稲垣吾郎だったからこそ生まれた感情

 プランをゼロにして、その場を“生きる”芝居

 先行きの見えないコロナ禍の中で実際に起きたある事件をベースに、過酷な運命に翻弄される少女の姿を描く映画「あんのこと」が公開を迎えた。彼女が直面する現実、そしてその結末は私たちに何を問いかけるのか?河合優実、佐藤二朗、稲垣吾郎が思いを語った。(取材・文/黒豆直樹、撮影/間庭裕基)

――ろくに学校にも通えず、母親に売春を強要され、薬物中毒に陥っている少女・杏。この役を引き受けるにあたって、迷いや逡巡はありませんでしたか? 「やってみよう」と思えた決め手を教えてください。

河合:実は、私がこの作品について知らされた時は、既に引き受けることが決まった状態だったんです。最初は入江(悠/監督)さんの作品ということしか決まっていなくて、そこから少しずつ企画が固まっていき、脚本ができて、改稿を重ねていったという感じで、徐々に自分の中でどんな作品かという解像度が上がっていきました。なので、最初に脚本を読ませていただいた時点で「やるかやらないか」という選択肢は既になかったんですが、「この役を自分が請け負う」という気持ちは最初の段階で固まっていました。最初に読んだ時、自分のところにこの話が来たからには「大丈夫ですよ」と役に対して言いたいような気持ちがありました。ものすごく大変な役であり、ものすごく大切に触れなくてはいけない題材なんだということがわかっていたからこそ、その裏返しとして「大丈夫だ」と自分に言い聞かせていた部分もあったのだと思います。

――佐藤さんが演じた多々羅は、そんな杏を更生の道へと導いていくベテラン刑事ですが、情に厚く愛嬌を感じさせる部分と闇を併せ持った人間の複雑さを体現したような存在です。

佐藤:刑事であり、薬物更生の自助グループを主宰しているんですが、非常に“グレーゾーン”にある男なんですね。ただ、それでも彼の杏を救いたいという気持ちは本物だったと思うんです。

それは一見、矛盾するように思えるけど、同じ人間にそういう部分が同居しているというのはすごく人間らしく、生々しいことだと思いましたし、そんな男を「演じてみたい」と思いました。役者として「そそられる」役でしたね。

――稲垣さんが演じた桐野は、多々羅の活動を追いかけるジャーナリストです。

稲垣:僕が演じた桐野の目線でこの物語に入っていく方も多いと思いますし、だからこそ物語の展開にショックを受ける方も多いと思います。僕自身、桐野としてなるべくフラットに物語に入っていくという部分は意識したところでもありました。映画の中で、コロナ禍のさなかに緊急事態宣言が発令されるというのを見て、2020年のことですが、それが少し前のことのように感じられたんですよね。それを“不謹慎”とは言わないですが、人間はそうやってつらいことを無意識に忘れようとする部分があるというか、忘れようとしているわけではないけど、忘れかけている自分がいるんだというのを感じました。一方でこの映画の物語も実話をベースにしているわけで、最初に脚本を読んだときは、かなり重いテーマではあるけど、目をつぶってはいけない、ここにあったことをきちんと心に刻んで生きていかないといけないとも思いました。

 少し引いた見方になりますが、俳優の仕事というのは、他にいくらでも代わりはいるわけで、この役をできる人は僕以外にもたくさんいるんですよね。そんな中で、この役を自分に与えていただけたことはすごくありがたかったし、正直「なんで俺をキャスティングしてくれたのかな?」とも考えました。そういうこと、思いません(笑)?

佐藤:思う! 思う! 「よくこの役を俺に持ってきたなぁ」って(笑)。ただ、パブリックイメージにない役をもらえるって役者として嬉しいよね。「僕のそういう部分を見たいんだ?」という喜びがあるよね。

稲垣:そうなんです。キャスティングしてくださった方の意図や気持ちがすごく伝わってきたし、入江監督ともそういうお話をさせていただきました。

――本作のマスコミ向けのパンフレットのストーリー紹介の部分には、杏について「希望はおろか絶望すら知らず」とあります。そんな彼女が多々羅や桐野との出会いとともに変化していくさま、その後の現実の厳しさに打ちひしがれる様子など、それぞれで別人のように違う表情を見せるのが印象的でした。

河合:本当にいまおっしゃっていただいたようなことを自分なりに考えながら、演じてみたという感じなのですが、特に最初の部分に関しては、他の世界を知らないから薬を中心に日常が回っているというだけで、それが物心ついたころから当たり前で、たまに(母親に殴られる)痛い時間がある――そういう毎日を過ごしている人に見えるようにしようと考えていました。それができたら、その後の多々羅や桐野に会ってからの変化や成長というのは、撮影をしながらできるんじゃないかと思っていたので、その前の最初の段階をどうするかというのはすごく時間をかけて大事につくっていきました。

佐藤:最初、彼女は絶望さえしていなかったというのは、本当にその通りで、すごく印象的ですよね。桐野や多々羅と会って、“希望”を知ってしまったからこそ、(その後に直面する様々な現実に対し)絶望があるわけなんだよね。逆に言うと、あのふたりに会ってなかったら絶望さえ知らなかったんだよね、それが普通だったから。多々羅が杏の生活保護の申請に付き合って、(冷淡な職員の反応に対して)怒るシーンについて、入江監督が「全てをあきらめていた人が、ちょっとだけ希望を見つける」という意味のことを言っていて、多々羅のあの時の熱量は、人生をあきらめていた彼女の目に見える景色に色をつけさせるくらいのパワーが必要だったということなんですよね。

河合:「あきらめない人がいるんだ」ということを、彼女は初めて見たのかもしれないなと思いました。

――いまもお話に出たように、杏の成長や変化を語る上で、多々羅の存在を欠かすことはできませんが、人間の複雑怪奇さを凝縮したような彼の存在について、どのようなことを感じましたか?

佐藤:先ほども言いましたが、僕はそれこそが人間だと思いますね。例えば“神経質”とカテゴライズされた人がいたとしても、あるところではものすごく無頓着だったりするかもしれないし、人間って本当に複雑で面倒な存在だと思います。

稲垣:誰にでもそういう要素はあるし、誰もがなりうるよねって思いました。

佐藤:だから面白いと言えるしね。

河合:外から見た時、多々羅の行いは決して許されるものではないと思いますが、だからこそ、本を読みながらすごく難しいなと感じました。ただ、実際にこの役を演じてみて、多々羅が杏を「助けたい」と思った気持ちであったり、杏が多々羅に助けられたということは絶対に本当だと思うし、それは撮影しながらも感じていました。それを裁くのではなく、あの時間――多々羅の存在が杏にとって“光”だったということを映せるのは、映画にしかできないことで、ニュースや裁判では伝わらないことだと思うし、多々羅という存在、この事件を映画で描いた意味がそこにあるんじゃないかと思います。

――改めて佐藤さん、稲垣さんから見て、本作における河合さんの演技に関して、すごさを感じたところなどを教えてください。

佐藤:役の捉え方に嘘がないというか、本当のことをこぼさない部分というのはすごいなと思いましたね。特にこういう過酷な役ですからね。きちんと役を捉えて、嘘なく、自分の技量に逃げることなく演じる――ただひたすらにその人を“生きる”ということはすごくしんどいことだと思います。

――ご一緒されて特に印象的だったシーンはありましたか?

佐藤:予告編にも出てきますが、(再び薬物に手を出してしまった)杏が泣き叫んで、多々羅が「大丈夫」と抱きしめる高架下でのシーンがあるんですが、あのシーンの撮影の前に、彼女が急に俺の手を握ってきたんですよ、両手で。そのとき、自分が何を言ったのか俺は覚えていないんですが、手を握られたことだけは覚えていて、一緒に受けた取材で優実ちゃんは「手を握って、二朗さんの体温を感じたほうがこのシーンはうまくいくと思ったから、『変な人だと思われるかもしれない……』と思って勇気が必要だったけどやってみた」と言っていたんですね。これは全然、良い人ぶるわけじゃなく、偉ぶるわけでもなく、河合優実があの時、なぜ俺の手を握ったのかが自分にはすごくよくわかったし、後輩の俳優にそうされたからには「絶対にこのシーンは良いものにしなくちゃいけない」と思いましたね。

河合:今回、本当に二朗さんが多々羅だったからこそ出せた感情、稲垣さんが演じる桐野だったから出た表情というのが全てのシーンであったと思います。そういうものをできるだけ素直に感じて、出せるようにと手を握ってみたり、いろんなことをしましたが、もちろん、そんなことしないほうが楽なんですよ。

佐藤:勇気も要るしね。

河合:そうなんですよ(笑)。いま思い返すとよく言えたなって……。

佐藤:俺もびっくりしたよ。

河合:二朗さんに負担をかけることにもなるし……。

佐藤:いやいや、負担ではないよ。実際、あのシーンの2日後くらいに優実ちゃんに直接「感謝している」と言いました。

稲垣:そのシーン、現場で見たかったです。

(後略)

■映画レビュー

評価:4.5 「あんという人間を見るべき」 ちゃーるすとんさん

2024年6月14日・・・フィクションでありながら、事実に基づくとして始まるこの物語は、シャブ中の少女が成長し、社会復帰しようとする物語。過酷な家庭環境のシーンや、ドラッグからなかなか抜けられないシーンは河合優実の演技の素晴らしさが際立つ。見ているだけでこちらも泣けてくる。
 そんな彼女が、警察に捕まるんだけれど更生しようと一生懸命に生きる姿もまた素晴らしく心に刺さる。河合優実の演技はぶっ飛んでてもすごいんだけどこういう闇深い役がめちゃくちゃ合うな、、凄い。マジで。その生き様にまた涙する。心が抉られる。
 そんな彼女のストーリーと、警察、記者のストーリーが交差するので情報量が多いんだけれど、河合優実の演技に完全に感情移入してしまっているのですんなり入ってくる。そしてここでまた泣けてくる。ラストにかけてイベントの畳み込みがあり、ラストは最高に重いので、マジで気が滅入る作品なんだけど、これは見るべき映画です。彼女の演技もそうだし、事実としての出来事もそうだし。実際の記事がネットで見れるようですが、見ない方が映画に入り込めるでしょう。

※佐藤二朗さんがとにかく圧巻だった!一貫して同じキャラクターを演じきっているのに、前半は「飾らない、熱くて人情派な人」に見え、後半は「がさつで、下品なダメ人間」へと印象が180度変貌する。ああ、でも人ってそういうもんかもなー、と観終わった後しみじみ感じたりするんだわいなー。

 

●予告編

 

・Hanako 「自殺とは、他殺である」|河合優実主演・映画『あんのこと』を通じて戸田真琴さんが感じた、実在の人物を描くことの怖さと希望の光

 この作品は、売春、虐待、薬物中毒、PTSD、そして新型コロナウイルスによる断絶、様々な問題が苛烈にひとりの少女を襲い続ける様を描く深刻な社会派映画である。と同時に、人と人との繋がりによって差し込む光について真摯に肯定しようとする美しい映画だった。

杏はたしかに生きていた

 シャブ中で“ウリ”の常習犯である杏が、客らしき男性から事前に代金をもぎ取ろうとするシーンから物語は始まる。薬物中毒の発作で昏倒した男性を尻目に、ホテルからの逃亡を図るも叶わなかった杏は警察に捕まり、多々羅という刑事と出会う。つかみどころがなく得体が知れない、だけれど杏にもわかるよう手を差し伸べる多々羅との交流によって、杏は徐々に自分を取り戻すきっかけを手繰り寄せていく。私たちは、常に変動し続ける時代や価値観によって善悪も安全性や人生の持続可能性さえも振り回されるとても弱い生き物である。親も周囲の人々も、国も行政も、労働環境も街も、自分自身でさえも、たしかな正しさなど持ち合わせてはいない。あるのは、それぞれが掲げる「正しさ」と名のついた不安定な価値観であって、それが真に誰にとっても正しさとして機能する万能なものというわけではない。

 誰かにとっては乗り越えられることも、別の誰かにとっては、とりかえしのつかない選択をする最後のひと押しになってしまうこともある。今あなたが「少し不便だけどこのくらいどうってことない」と乗り越えたハードルが、誰かの命をうばったかもしれない可能性について思いを巡らす必要があるということだ。本作の制作までに監督の入江悠は、コロナ禍で2人の友人を亡くしたとインタビューで答えている。生きながらえている自分と越えられなかった人たちの間にあるものについて、監督とスタッフ陣、そして主演を務めた河合優実が霊力にも近い精神力を尽くして探し求めたのだということが、映画の持つ張り詰めた空気、隙のない作り込み、そして随所に映り込んでしまう美と祈りによって現れている。

わたしにとっては、少なくとも

 

 これまで、「社会派ドラマ」という名目でどれだけの実在の人々が物語の中に組み込まれ、観客の興奮によってその尊厳を消費されてきただろう。本来、実際の事件をモティーフに物語をつくることは負の面がとても大きいものである。もちろん話題性もあるし、事件を風化させない、事実に思いを馳せてもらうための社会的意義もあるだろう。しかし、その内容がどんなに真実と遠ざかってしまっても、死者は訂正やクレームが言えない。その事実一つで、実際の事件をモティーフとして扱うことに、まず生者の我々は遠慮するべきなのだ。また、被害者や被害者遺族、そのまわりの人々が現在進行形で生きている社会の中で、その事件をもとにした物語で生み出された収入はどこへいくべきなのだろうという、未だ答えの見つからないジレンマも残されている。

 事件、事故、もっと大きな規模で言えばカタストロフの中を我々は生き、しばしば創作の種にしてきた。起きてしまった何かについて、検証や考察、対話や吐露、ときには芸術作品として、あらゆる方法を駆使して昇華していくのは自然なことだが、決してその元になった悲劇を「あってよかった」などと読み取るべきではない。しかし、そこを逆転させてしまう人もいる。悲劇によって亡くなった人に対して、「大切なことを教えてくれた」などと言っているのを聞くことも、最悪なことに少なくはない。私たちは普段、どれほどニュースの中の「死亡1名」という文字に、興奮も見下しもなく、ただ正面から本気で向き合っているのだろうか。

 『あんのこと』を信用できる点は、この映画が描くべきことを一点に絞って、決してずらさないその姿勢だ。それは、「わたしにとっては、少なくとも」という個人的視点の強固さである。この映画は、あらゆる「私」の尊厳を、強く、明確に保護しようとしている。例えば、物語中盤でその人間性を疑われることになる多々羅だが、作品内で善悪のジャッジは下されない。その姿勢は、杏のモティーフになった、実在した女性に対してもっとも強固に向けられている。

 悲しいことに、あまりにも身近にありふれているにもかかわらず、しかし、いまだセンセーショナルな扱いを受ける売春やDV、薬物中毒、自殺といった事柄について、必要最小限に、ファンタジーや制作サイドの願望を織り交ぜないよう留意しながら撮られているのがわかる。

 この作品は、特定の結論や思想に誘導させるという手癖を、おそらく意識的に避けている。実在した“彼女”の尊厳を守りながら、「被害者」としての側面よりも彼女が「生きていた」という事実の持つ光の面を作品に残そうとしたのだろう。

(中略)
 自殺とは、他殺である。ありとあらゆるものごとや人々が絡み合った結果、殺されたのだ。その事実を自殺と呼んでいるだけだ。殺人の罪は、散らばっても散らばっても、途方もなく重たい。シンプルに裁くことが不可能になるほどに、複雑な手際によって実行された、他殺であることは確かなことなのだ。
 私たちは、他者を知ることで少しだけその人の人生を生きられる。ほかの人生の質感を知り、どんな世界を見ているのかを想像する。同じように、映画を見れば登場人物の人生を少しだけ生きることもできる。生きる、生きる、生きる。死んでしまった人の人生も少しだけ生きる。たとえ、完全ではなくとも。さまざまな生が、今日もあなたに混ざっていく。想像する手がかりを集める。この先、ニュースの「1名死亡」の文字は、あなたに一体何を見せるだろう。

※稲垣吾郎演じる、苦悩する記者という役柄は、こないだ観た『ミッシング』の中村倫也演じるTV局ディレクターと被る。何を報道すべきなのか、人としてどっちを選択すべきなのか?これは容易には結論の出ない命題であるーーー。

 

☆著名人コメント

    

※ジワジワ胸を打ちます。見終わった直後よりも、数日経った今のほうが余計に。。。

 

・みなみかわのシネマバカ一代  Y君について

 忘れられない友人がいる。

 小学校のときにY君というクラスメイトがいた。ちょっとヤンチャだけどどこか憎めない笑顔の男の子でいつも素足だった。Y君のお母さんを数回見たことがある。とても派手な服装でソバージュのパーマをあてていた記憶がある。お父さんは見たことがない。母親参観や運動会で、Y君は基本的にひとりだった。集合写真でみんながお母さんと一緒に撮ってる写真も、Y君がひとりで気まずそうに写っていた。当時は「ああY君のお母さんは仕事で忙しいんだなぁ」とのん気に思っていた。

 そんなY君は私立中学に進学した。私の地域では私立中学に行く人間など数えるくらいしかおらず、そんなに成績がよかったわけではないY君が試験に通ったのはみんなの謎だった。しばらくして中学2年になったとき。突然Y君が私の通ってる公立中学に転校してきた。転校してきたY君はパッキパキのヤンキーになっていた。Y君の黄色に近い金髪と鋭くなった眉毛、そしてあのあどけなさが消えた暗い目を見て、私立中学は退学になったんだろうなと察しがついた。当時、私が通っていた中学にもヤンキーが多かったがY君はヤンキー度が濃かった。なんといっていいか、みんな小学校から知ってるからヤンキーになる過程を見てるわけで、カッコつけてグレてる奴もいたし、モテたくてグレてる奴、先輩に憧れてヤンキーになる奴もたくさんいた。

 ただY君は家庭に問題があったんだと思う。必然的にグレていた。芯からグレていた。わけもわからずグレていた。わかりやすくいうとタバコやバイクは笑えてもシンナーは笑えないみたいな話である。これ以上はたとえようがない。ヤンキーの怖さというより、底知れぬ不幸さがあった。私はY君のその部分がなんだか怖く関わらないようにしていた。そして高校に進学し地元のみんなとは少し疎遠になるが、風の噂でY君は見事にそのまま鑑別所か少年院に行ったことを聞いた。当然私には何もすることなどできないし、私だって自分の人生で精いっぱいだった。

さらに時が経った。大人になって久しぶりに地元の友達と飲んでいると、あるエピソードを教えてくれた。

地元友「俺な、18歳で免許取ってたやん? で、どこから聞いたのかYから連絡あってさ、『出所したから迎えに来てくれへん?』って」

「嘘? 行ったん?」

地元友「暇やったし行ってん。でさ、Yを車に乗っけてYの家に行ってん。ほんならな、家の中なんもなかってん。母親どっか行ってんて」

「……嘘?」

地元友「じゃあYがな、軽い感じで『俺、親に捨てられたわ』って言ってきてさ、俺に笑いかけんのよ。俺何も返されへんかったわ」

 とても悲しかった。Yはかなり悪事を重ねたんだろう。でも私の脳裏にはお互い半ズボンでふざけ合う小学生Y君の屈託ない笑顔があった。

 

 映画『あんのこと』を観た。

 21歳の主人公・杏は、幼いころから母親に暴力を振るわれ、10代半ばから売春を強いられて、過酷な人生を送ってきた。ある日、覚醒剤使用容疑で取り調べを受けた彼女は、多々羅という変わった刑事と出会う。大人を信用したことのない杏だが、なんの見返りも求めず就職を支援し、ありのままを受け入れてくれる多々羅に、次第に心を開いていく。

 

 過酷な人生を強いられている杏(あん)。生きると逃げるのはざまで揺れ動きながらも、懸命に前に進もうとする彼女を河合優実さんが、自身に問題がありながらもバランスを保ちながら「ある空間」を運営していた刑事を佐藤二朗さんが熱演。

 楽しい映画ではないし「おもしろい」映画とも言い難い。でも私のような親に、家庭に、恵まれた人間こそ観てほしい。いや観るべき映画だと思う。「あん」のまわりにいる最低な人間を軽蔑しながらも、Y君を傍観するだけだった自分も同じである。子供ながらにその不幸さに気づき距離を置いていた。私の知ってるヤンキーは今大人になってきちんと働いてる人がほとんどである。ほとんどのヤンキーは不幸ではなかった。帰る家があったから。

 あんもY君も、帰る家がなかったのだろう。Y君は今どうしてるだろう? 元気だろうか?少しでも幸せを感じていたらと願います。

※身につまされ映画評。なかなか新しい切り口だねえ~~。

 

★感想:みなみかわ、映画評なんてやるんやー

 

☆オマケ 月替わり企画「日めくり」カレンダー 

6月は【エルフ荒川語録♪】

 

★6月7日(金)

『毎日勝負服ー!二番の服やったらイヤーーーー!!!!!!』

(ミッキーって絶対ダル着でディズニー来ないじゃないですか。

うちらは常にミッキーって思ってこ!衣装は全部お気に入りラブラブ

 

・インスタ 荒川の投稿

 

  • ディズニー、夢をありがとう💙🏰💙

    4月20日王様のブランチ🫅❤️❤️トレンド部
    ぜひよろしくお願いします💖💖💖💖💖💖💖

    藤森さん、NOAさんありがとうございました😍💖🌸💙💙
    #トレンド部らぶ🥹🩷🩷🩷

    いい天気で最高‼️‼️‼️‼️‼️‼️
    #晴天推し

    一枚目マネージャーさんが不意撮り(?)してくれてた😭💙💖💙💖💙
    ずーっと自撮り部な私、歓喜(笑)
    インカメうますぎてどんだけ大人数でも全員写せるからいつも右手が携帯を離れることはないので(笑)嬉しかった🥹🥹

    編集済み · 

  • 可愛すぎる😍

     

※勝負服、サイッコーーー!w目がハート目がハートラブ音譜