石と火山弾で埋め尽くされた道を
ひたすら登っていきます。
樹も生えない厳しい岩礫地に
群生するのは高山植物のオノエイタドリのみ。
ちょうどオレンジ色の花を咲かせていました。
あっぱれな生命力ですね。
浅間山に登るのではなく、
今や私たちは浅間山の中にいて、
浅間山を登っています。
至近距離から見る浅間山は
限りなく水平に近く広がっています。
賽の河原までは、
言わば、浅間山登山の序奏のようなものでした。
今はこれまでとは比較にならないほどの苦しさ。
10歩進んだだけで、息切れがして、
そのたびに休まなければならず、
後から来た人全員に抜かれました。
なぜ、こんなに苦しいのか。
道が急なことだけでは説明がつかないのです。
標高2千メートルを超えて空気が薄くなったことが
その理由ではないかと思います。
本当に、どうして登りきれたのか、
今でもわかりません。
森林限界を超えると、
ずっと先まで見通せるようになります。
あの人のいるところまで、
あの上まで、と目標がはっきり見えていたことが
励みになったのではないかと思います。
釜山の噴火口から500メートル手前のところに
到着です!
立ち入り禁止の看板のところに着くやいなや、
ヘナヘナとすわりこんでしまいました。
ガイドマップには登り90分と書かれていましたが、
私たちはゆうに2時間はかかりました
(娘はもっと早く行けたのですが、
私に合わせてゆっくり歩いてくれました。)
釜山から前掛山へと
先を急ぐ登山者が多いのですが、
私はもう疲れ果てておなかがすいていたので、
信州名物の「おやき」をほおばり、
お茶を飲んでしばらく休んで
呼吸を整えました。
ここから先は、今までと同じような道だったら、
行かない、どんな道か少し歩いてみて
先に行くかどうしようか、考えようと思いました。
立ち上がってまた歩き始めてしばらくすると、
噴火時の避難用シェルターが見えてきました。
そうして、釜山を屏風のように取り囲む前掛山と、
その稜線を歩く人の姿が見えました。
頭上に広がる広大な空に向かって、
一直線に伸びる山の稜線、
そして、そこを歩いていく小さい小さい人の姿。
自然の大きさに比べ、人は何と小さいことでしょうか、
しかし、その歩みの何と確かで美しいことでしょうか。
私もあのシルエットのひとつになりに行こう、
そう思ったら、もはや歩みを止めることなど
考えられませんでした。
いつもは下界で正面から見ている前掛山の
裏の姿を初めて見ました。
屏風のようにゴツゴツと岩山が切り立ち、
いくつもの臼歯のような岩石が
がけの途中から突き出ています。
山頂までもう少し…
ついに、前掛山山頂です(2524m)!
前掛山頂上付近で、
私たちに正しい道を教えてくださった
赤と黄色のシャツのおじさんに
会いました。
私たちを見ると、
満面の笑みで
「おめでとうございます!」と
声をかけてくださいました。
どんなにうれしかったことでしょうか。
初心者の私たちを
よく登ったね!と
祝福してくださったように感じました。
前掛山の目の前には
噴煙の上がる釜山が見えました。
巨大な山の影が
谷底に映っているのを見たときには
驚愕しました。
雲が自分の下にあり、
その雲がゆっくり右から左に
移動してくるのも見えました。
標高2500メートルを超えると
景色はまるで別次元です。
前掛山から釜山に向かって降りる途中、
はるか下に
群馬県嬬恋村のキャベツ畑が見えました。
帰りの道です。
疲れすぎていて足がよろけ、
ストックを使っても
何度もすべったり
ころびそうになったりしましたが、
何とか無事に下山できました。
浅間山荘に着いたときは
4時近くになっていました。
標準行程7時間のところ、
10時間近くかかったことになります!
時間はかかりましたが、
とにもかくにも、
自分の力で登り切ったことには
変わりありません。
一歩一歩が大事なんだということを
身に沁みて感じました。
次から次へと移り変わる
変化に富んだ素晴らしい景色を堪能し、
大満足の浅間山登山でした。












