あなたと一緒の時 は

私は私のすべてをあなたにあげる

けど 家でひとりぼっちの こんな夜には

私は誰かの それか私の ちいさな宝物に姿を変える  

 私たちをつないでいるのは

小さな指輪でも アルバムにつまった景色でもない

ほんの薄っぺらな 視線のくみ交わし

ほんの お調子者のきまぐれ

 そんなおぼろげな積み重ね

一枚一枚のコトの葉

 ね、わかるでしょう

歌え、歌え、と彼が言うの

あなたは知りながら傷ついてゆく

ハンプティ・ダンプティが壁に戻れなかった本当の訳を知っている?

去った人は戻らないって言ってたのはあなた

そして去った人を思って泣くのでしょう?

それなら生きてるってなんなのかしら

 つまんないジョークだっただけのことなの

すべて終わり。そこで。ジ・エンドってやつ。

エンド・ロールが流れていって

センチメンタルな歌詞が右横に浮き上がるの

そして何度も繰り返し繰り返しこう言うわ

「僕らが王者だ」とか

「ダーリン そばにいてくれ」とかね

それを見終わってからすそを払って映画館を出ればいいのよ

 それで一応すべてが終わるの

そんな毎日を過ごせばいい。

去った人は戻らないとか

もうあのころの元気はないとか

そんなモノはすべてあの映画館のエンド・ロールに流してしまえばいい

泣きたい 泣きたい 泣きたい


親と電話すると

いつも泣きたい

あたしじゃ無理なのかな?

もっと先と現実をみなきゃだめなのかな?

したいことばっかり言ってたってやっぱり無理なモノは無理なんだ

無理無理

無理なんだなー

わかってなかったなー

はぁぁ

あなたを幻惑の向こうに連れて行こう

そこであなたが何を見るのか

私には手に取るようにわかるから


灰色の空の向こうに星があるなんて

あなたは知っていても感じられないでしょう

生きる事なんてそんなものよ


見えない力にすがって生きてるのよ

見える霧の中をまさぐりながら歩んでいるのよ

それは知っていたでしょう

けれどあなたは感じられないから

今そんなに息が苦しいのよ


彼が姿を消してから一ヶ月が経ったの

彼が私の世界から居なくなると、

世界というのは私に見えている部分だけなんだって

改めて気付いたよ


桜色の風に巻かれて

ふわりと舞うあの子は

母親のような笑みをたたえていた


彼が姿を消してから一ヶ月


彼が 姿を 消してから

今日で一ヶ月と一日

私は痩せたり太ったりを繰り返しながら

戻らない足音を耳の片隅に聞きながら

振り返ったり立ち止まったりを繰り返し

朝、濡れた頬に指を滑らせては

ぼんやりとカーテンの向こうの朝を夢見るのです

実際の人生が妄想以上にドラマチックであることは

瞬間瞬間に感じるモノであったりする


あの空気に包まれてしまいたいって思った日も

今は遠い遠い夜の太陽のような位置にある記憶で


裸足で濡れた柔らかい草の上をただひたひたと歩いていたように

髪はぐっしょりと濡れて

薄いワンピースはべったりとはりついて

視界は悪くて今にも目がくらみそうだった


正面から朝日がちらりと光を投げたとき

私は正直何が起こったのかよくわからなかった

むしろなにか攻撃的なモノだと思った


ぺらぺらのトレンチコートのウエストをぎゅっと縛り

袖をまくって

細身のストレートジーンズに

すっきりとしたパンプスを履いて

長めの髪を揺らめかせながら

春風の中を早足で歩いていく

そんなひとに 男の子が惹かれるのはよくわかります

あなたがとてもデリケートな人だってことは知っていたし、実際私がああ言ったことであなたがこういう行動にでるっていう恐れは少なからずあったんだけれど

やっぱりそうしちゃうと私としてはだいぶ悲しいね。

デリケートな人の扱いには、私の兄のことでかなり慣れてはいるのだけれど、

やはり底には寂しさがつきまとうモノなのよね。

兄はとても頑固な人だったし、そして誰より弱かった。

けれど少なくとも私よりは強かったし、そして優しい人だった。

ご飯の味が薄いと言うからお醤油を持っていってあげると、もう食べない、と言ったりね。

そういうところがことさら分厚い人に対しては

私のような柔軟な人は非常に困惑するし、ときどき見捨ててしまいたくなるくらいうんざりすることもあるけれど

基本的には私は兄が好きだし、兄も私がいなくて寂しいと言うことを、日記の中にだけ書いたりしているの。

だから、その日記というのはきっとあなたの周りの“実在”の人間には読まれてはいけないモノだったのよね。

私はそれには感づいていたし、あなたのそういう行動によって兄の記憶が呼び出されることは夜明けに月が白くなるって言うことくらいわかっていたのに

やはりああ言うしかなかったことはわかってほしいの。

だって私はあなたのことを知りたいし、

誰かの助けが欲しいって思っているときに(それは“私の”助けが本当に欲しい時に限るのだけど)

すぐに気付いてあげるためのツールになるって私は思っていたから。

でもやっぱりあなたは私の期待の混じった予想よりも過去の経験に基づく悲しみをふくんだ方の予想に従って行動してしまったわけだから、

やっぱりそれは私の読みが足らなかった、

もしくは、私のあなたへの歩み寄りが後3歩ほど及んでいなかったってことを示しているのだと思うのだけれど。

私がとても深刻な話を、「例えばもし・・・」って相談したとして

相手がそれを本当は私におこっている事実だって感じ取ってくれて

それに気付いたことを私に気付かせないように

うまく答えを返してくれることなんて

実際の世界ではあまりおこらない奇跡的なことなんだって

私は知っているわけ


今日のお昼下がり

からになったコーヒーカップと 形の崩れたおしぼりと 氷が丸く溶けたお冷やグラスをトレンチに乗せて

台拭きでテーブルを綺麗にした後に

ふと自分の頬に手を当ててみたの

午後の日差しの反射でとても顔が熱かったから

そのときにふと思ったの

あぁ、私はとても綺麗なんだって。

肌にははりがあって

うすく均等にファンデーションが塗られていて

うっすらと残るチークの下から本当の赤みが浮かび上がっていて

その手触りは霧吹きで作った虹のようで

私はそれを独り占めしているんだ、って思ったの

そして、はやく恋人を作らなくちゃ、って思ったの

私はね

なんだかよくわからないけど

歌詞カードと洋書の和訳が好きなの


どちらも、なんだかそのままでは存在していないような

宇宙の言葉のような気がして



ある作家をその人は愛す。

彼のように街を歩き、彼の描く女を愛す。

彼のように夜を過ごし、彼のように酒を飲む。

彼が吸うタバコを吸い、彼のように街を見下ろし、彼のように首を傾げながら、彼のような言葉をつぶやいては、いつの日かまるで自分が彼であるかのように錯覚してしまっていることに気付き、

また彼のように当惑し、そしてまた彼の作品を読みあさる。