私はきっとね

ドコでだってダレとだって

うまくやっていける自信があるの

でもそれが居心地が良いかと言われれば

そうでないときの方が圧倒的に多いんだろうなぁ。

ちがうの

ちがうの

ちがうの

違う

違う

こんなことが言いたいんじゃない

こんな自分でいたいんじゃない

こんな絵を描きたいんじゃない

こんな文字で描く景色だってどこかで見たことのあるもので

こんな文章で誰かを救えるなんて思ってない

ちがうの

ちがうの

わかって

そんな言葉だけが口をついて出てくるのは

まだまだ私が弱いせいと

ここにいる私を誰も見ていないせい

あなたが

あなたがあなたがあなたがせめて

朝の私とバス待ちの私と授業の合間の私とぼんやりしている私とバイトに行く前の忙しい私と疲れた私と洗い物をしている私と髪を乾かしている私と眠りに落ちていく私を

優しいその目で追いかけてくれたなら、と

ただあなたを側に置いておきたいだけなの

穏やかな午後だった。はずなのに、私は小さな言葉一つにずたずたにされたまましっとりと雨宿りをしていた。

すらすらと地面に吸い込まれていくような雨。水で書かれた線が視界を裂いていく。

握りしめていたショルダーバックは水に濡れて重い。その肩に食い込む感触すらも敏感な19才の私には苦痛で仕方なかった。

サンダルの先から覗く指先には綺麗にペディキュアが塗られている。

けれどそんなものがなにかのジンクスになるわけでもないってことを私は知っている。

爪の隙間に雨水が入り込む。

そのまま、

私はどっぷりとよどんだ水に沈んでいくような感覚に酔っていた。

河原町はアーケードだから、このまま歩いて電車に乗って帰ることだってできる。

けれど、私は雨宿りという行為が好きだった。

始まりは突然で、終わりは予想ができないけれど、必ずやってくる。

意外な形で終わらされることもある。

ちょうど今日のように。

あいつが傘を持ってやってきたのは私がそこに立ちすくんでから20分くらいたってから。

正確にはもっと短かったのか、それとも長かったのか。

私はぼんやりとしたまま人の流れと雨だけを見ていたから、分からなかった。

あいつは私の方をまっすぐに見ようとしないまま

まだ白い粉がついたままのビニールがさを広げて

私の手を引いて雨の中に歩き出した。

あいつの手の熱さと、こみあげてくる爆発しそうな感情と、べったりと張り付いた前髪が

どうしようもなく心地よくて

歩き続けるあいつのびしょぬれになったスニーカーだけを見つめながら

早足で横断歩道を渡った。

ぽつぽつと雨が窓に当たる

最後の曲が終わったCDプレーヤーをとめに行くことも

顎を乗せたしびれた腕をどけるのも

冷えた膝を暖めるのおっくうなまま

窓枠にもたれながら雨を見ていた

結露した窓から滴が髪を伝って染みこんでくる

体から沸き立つ熱気で窓が曇る

私は冷たい窓に頬をぴったりとつけて

目を閉じて

この目に映る場所以外にも世界があるっていう神話を信じられるようになった矢先、

信じられないほど哀れな体裁を装わざるを得なくなった。

私があの人の「私の目に映らない世界」での行動を全く把握していないように、

あの人も私の「あの人の目に映らない世界」での行動を把握していなかった。

切り口はあまりにも鮮やかで

戦慄を覚えるほど鮮やかで

思わず塞いだ口の片隅から「寂しい」と

小さな音符がこぼれ落ちる

いらない

同情?

それは言葉への甘え

女は強い

強くて 強くて

鉄の柱のよう

触れると冷たくて 堅くて

中に何を隠しているのかなんてわかりっこないの

そのくせこつんとたたくと

心地よい鐘のような響きをあげる

熱い愛に溶けて

根本から折れることなんてお見通し

倒れた体で恋人を叩きつぶして

跳ね返った血は体についてサビになる


もゥだめだワ

内側と外側が

解離していく

心のどっかで自分をかばいたいと思っているから

どうしようもなく弱くなってみたり

強がってる ことを宣伝したり

人に見える努力をしたり

浮かない顔をしてみたりしている自分を

側で優しく把握してくれる人が居たなら、と。


何度優しい言葉をかけられるより

ただ一輪の花をそっと

家に届けてくれたなら、と。

フラフラした頭を抱えたまま

狭い路地を歩いていたはずなのに

いつの間にか海岸を歩いていて

薄暗くなった海の向こうの方から

とぎれそうな命の呼吸みたいに

波に揺らめいて夕日の一線がほのかに香った

カッターシャツのボタンを一つ一つ丁寧にハズして

暗くなった海岸を

履き古したローファーも二つとも脱いで手に持って

暗くなった海岸を

髪が揺らめいて

貝殻が指先にあたって

耳に海鳴りが響いて

潮風が体を通り抜けていくとき

私は独りだ、って

改めて思ったの

私はこの文章に

「本音」という牙を剥いて挑む

もし私が「孤独」という言葉を知らなかったら

この今のぽっかりした

それかべったりとした不快感と優越感を

形容することもなくただ

くるりの「スーパースター」を聞きながら

バイトの準備をしているだけで