修正版【文系理系論】なぜ女子は文系を選びがちなのか?数学力に男女差はあるのか? | 栗山家の日常

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6/29:記事の後半を大幅に修正改変しました。

 

文系理系の話で、よく議論になるのが「なぜ日本は理系に女子が少ないのか?」というテーマですよね。

 

これについて、「へえ~!なるほど~!」と思った記事をご紹介します。

 

質問サイトQuoraで「男性の方が理数に強い傾向にあるのは何故ですか?」という質問に対して、経済学者の方が「それは誤解だよ。むしろ女子だってできるよ。ただし…」と国際的な統計データをもとに丁寧に説明している回答です。

すっごい長いけど、めちゃめちゃ面白くて、目からウロコぽろぽろ落ちたので、みんな頑張って読んでください。

 

 

読みました?

 

リンク先ゆっくり読んでられないお忙しい方も多いと思うので、取り急ぎ、冒頭だけ引用しときます。

「男性の方が理数に強い傾向にある」のではありません。「女性の方が人文社会系にも理数にも強いが、女性は比較優位のある人文社会系に進む傾向があるので、理数は男性が多くなって、男性が理数に強いように見える」のです

 

ご質問者のお考えとは実は逆で、女子は読解力が男子より優れていて、さらに理数系科目全般でも男子より優れています。

いわゆる理系に男性が多いのは、女性が理系が苦手なのではなく、女性は文理のどちらでも優秀になれるのに、男子にはそういったオールマイティーは珍しいためです。

 

つまりこう言うことです。比較優位の理論にもとづくと、女性は「人文科学系や社会科学系の科目は優で、自然科学系の科目は 良だから、長所をもっと伸ばして人文社会系の技能を活かすことにしよう」と考えます。

一方、男子は「自然科学系の科目は良で人文社会系の科目は可だから、長所をもっと伸ばして自然科学系の分野に行こう」と考えます

 

「比較優位の理論」で女性は理系能力も優秀であるにもかかわらず、自分の中で得意感のある文系を選ぶ傾向があるという説明です。

 

なるほど納得感があります。

 

 

しかし栗山さんは一次ソースを確認も忘れませんでした!

回答者様は「読解力も理数系も女子の方が優れている」と書かれてますが、どうやらそれは世界全体の平均的の話で、グラフよーく見ると、そしてよーく読むと、国によって差が出ていて、日本はあてはまらないみたいですが!?!?

 

回答者様が貼っているグラフもよーーく見ると、日本においては、読解力は女子の方がスコアが高いけど、理数系は男子が高いのですよ!

 

 

ううむ…これは深堀りして調べてみたい…

 

栗山は謎を解き明かすべく、ジャングルの奥地へと向かった!

 

 

PISAという「世界の15歳の子どもを対象に3年に1度行われる国際的な学力調査」をご存知でしょうか?

全世界で60万人の生徒が参加し、日本では全国の高校1年生約6000人が参加した大規模調査です。

ちなみに2025年の調査協力校を募集していますので、もしかすると今年中学3年の子は来年受けるかもしれませんね、ワクワク!

https://www.nier.go.jp/kokusai/pisa/pdf/2025ft/pisa2025ft_01_leaflet.pdf

 

 

直近では2022年に行われ、2023年に結果が発表されました。

文科省がまとめた概要はこちらで見られます。

https://www.nier.go.jp/kokusai/pisa/pdf/2022/01_point_2.pdf

 

 

前々回のPISA2018年版になってしまうのですが、OECDが男女差についてまとめたレポートを作成公表しています。

最新版も見たいな~と思ってレポートを待っているのですが、なかなか出てこないので(2018年版もレポートが公表されたのは2020年のようです)、とりあえず今回は2018年版の男女差レポートの内容を、私なりに整理してシェアしたいと思います。

 

報告はすべてこちらから見られます。

Girls’ and boys’ performance in PISA 2018

 

 

まず、読解力と数学的リテラシーの得点人数の男女別分布図がこちらになります。

 

 

これを見てわかることは、読解力は女子の方が、全体的に男子より高得点に寄っているということ。

数学的リテラシーは女子の方が中央値は高いけれど、高得点帯は男子の方がやや多いということ。

 

 

このグラフと、次に挙げる国別データをリンクするために、OECDが規定したレベル1~6の補助線を入れてみました。

(読解は72点刻み、数学は62点刻みでレベル分けして分析されているようです)

 

 

さてここまではOECD平均79カ国平均の間違い(要するに世界平均)の話でした。

確かに「世界的に数学的リテラシーは男女に優位な差はない、むしろ女子の方が中央値が高い」と言える結果になっていると思います。

 

 

【追記6/19】

さて、最初に公開した記事に貼り付けていたデータの意味を勘違いしておりましたので、一度非公開にしておりました。最初に貼っていたグラフの正しい意味については後述します。

ただしグラフにつける注釈を間違えていただけで、

「ほとんどの国で数学上位は男子の方が多い」

「日本人の場合、下位層では男女に有意差はないが、上位層は有意に男女差がある」

という事実は変わりません。

 

そして最新版PISA2022の男女差データをみつけたので、そちらに差し替えていきます。

 

 

各分野ごとに「スコアレベル5以上の上位層」の男女差をまとめたグラフがあります。

 

 ※注

ここでいう「上位層」は「PISAでスコアレベル5以上のスコアを取れる層」を意味しています。人数が多いので「上位層」と言っても「東大に合格できる層」という意味ではなく、数的には「MARCHや日東駒専(←適当です)以上」くらいの大きな区切りをイメージしてください。

 

 

【記号の意味】

●〇男子

▲△女子

 

なお、記号●▲が濃い紺色で表示されている場合は、「男女のスコアに有意差がある」ことを意味しています。男女差がない結果の場合は、淡い水色〇△で表示されています。

 

 

【読解力】日本は上段左から4番目

読解力上位層はすべての国で女子の割合が高い

日本では上位層で男女差はない

 

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【科学的リテラシー】日本は上段左から2番目

上位層で男子の割合の方が高い国の方が多い

日本では上位層で男女差は優位にある

 

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【数学的リテラシー】日本は上段左から2番目

男子の割合の方が高い国の方が多い

日本では上位層で男女差は優位にあり、その差は世界で1番ある模様

(マカオ日本と同じくらい差がありそうだけど別枠扱いになっている模様)

 

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日本は3分野いずれも世界トップレベルです!

 

男女差についてはPISA公式によるとこのようにレポートされています。

 

Gender differences in performance
Boys outperformed girls in mathematics by 9 score points; girls outperformed boys in reading by 17 score points in Japan. Globally, in mathematics, boys outperformed girls in 40 countries and economies, girls outperformed boys in another 17 countries or economies, and no significant difference was found in the remaining 24. In reading, girls, on average, scored above boys in all but two countries and economies that participated in PISA 2022 (79 out of 81).

In Japan, the share of low performers is similar among boys (13%) and girls (11%) in mathematics; in reading, however, the share is larger among boys (11% of girls and 17% of boys scored below Level 2 in reading). When it comes to top performers, the share is larger among boys (27%) than among girls (19%) in mathematics; in reading, however, the share is similar among girls (13% of girls and 12% of boys scored at Level 5 or 6 in reading).

Between 2012 and 2022, performance in mathematics remained stable both among boys and girls in Japan.

 

https://www.oecd.org/publication/pisa-2022-results/country-notes/japan-f7d7daad/

 

 

 

 

 

まとめると…

 

 

【日本の成績男女差】

<数学>

平均点:男子>女子 9点男子の方が高い

上位層:男子27% 女子19% 男子の割合が大きい

下位層:男子13% 女子11% 男女同程度

 

<読解>

平均点:男子<女子 17点女子の方が高い

上位層:男子12% 女子13% 男女同程度

下位層:男子17% 女子11% 男子の割合が大きい

 

 

という結果が出ています!

数学上位層は男子の方が多いのはやっぱりという感じです。

読解下位層に男子が多いのも国語苦手な男子多いのでこちらもやっぱりですが、上位層では男女同程度(女子が1%高い)というのはちょっと意外でした。読解は上位層でももっと女子が差をつけると思ってました。

 

 

そしてここからは数学的リテラシーにフォーカスしていきます。

上に貼ったグラフの数学的リテラシー国別一覧表、見づらいので縦向きにして、上位の国だけ切り取ってみました。一覧表で別枠扱いされていた中国も参考として上にくっつけました。

 

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この表を見ると、多くの国で、男子の方が女子よりも数学の高得点の割合が高いというがわかります。

(ごく一部の国で女子の方が高い)

 

アジア勢は他国から頭ひとつ抜けていますね。

シンガポールはそこからさらに頭5つくらい抜けてますが、国全体が東京23区みたいなところなのでスコアが高くなるのも当然という感はあります。

 

 

【PISA2018&2020男女差レポート 数学リテラシーまとめ】

 

●世界的な平均点分布を見ると、数学的リテラシーの男女差はない。むしろ中央値は女子の方が高い。

●ただしスコアレベル5以上の上位層では、男子の方が点数が高い割合が大きい。

●さらに日本においては、上位層においては男女に有意差があり、その差は世界一大きいと言える。

 

 

 

 

【データにつけた注釈間違えてた件】

このグラフに勘違いして間違った注釈つけちゃってたんですが、ただしくはこういう意味だと思います。

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「スコアレベル5以上の生徒を抜き出し、さらにESCS度の高い層と低い層の成績を比較し、得点との関係を分析したグラフ」というのが本来の意味じゃないかと思います。(違ったらすいません…)

 

ESCS度とは…

 

◆社会経済文化的背景(ESCS;Economic, Social and Cultural Status)

PISA調査では、保護者の学歴や家庭の所有物に関する生徒質問調査の回答から「社会経済文化的背景」(ESCS)指標を作成。この値が大きいほど、社会経済文化的水準が高いとみなしている。ESCSの値の高低により生徒を4群に分け、3分野の得点との関係などを分析。

 

つまり、誤解を恐れず乱暴にまとめると「恵まれた家庭」かどうかという指標かと思います。

 

改めてこのグラフを読み取ると、

 

●成績上位の子達の中でも、(当たり前ですが)恵まれた家庭の子達の方が数が多い

●恵まれた家庭の子でも、女子より男子の方が多く、有意に差がある

 

ということになるかと思います。

家庭の教育や経済の水準がそれなりに高く、それが同程度であっても、女子より男子の方が数学の成績が統計的に高くなりやすいと言えるのかな。

だとすると、女子親が「同じ塾の同じ上位コースに通っているのに、どうして男子の方が多いの!?成績良いの!?うちだって同じだけ時間やお金かけてるのに!」と思うことがあったとしても、ガッカリしないで、よくあることだから…て思っておくと良いのかもしれない。

 

 

こんなところでしょうか。

記事の中身大幅に改変いたしましたが、リブログもいただいたので同じURLになるように再投稿します。