こんにちは。
前回の続きから記載していきます。
今回は主に治療の流れと注射薬について記載していきます。
治療開始時
前回の記事に記載し忘れていたのですが、不妊検査後、実際に治療を開始する前に個室でインフォームドコンセントを受けます。インフォームドコンセントとは、ざっくり説明すると自身の病態、治療の内容と流れ、治療を受けることにより発生する利益と不利益、当該治療を受けない場合のその他の選択肢、治療費、使用する薬剤などについて文書を用いて医療関係者から詳細な説明を受けます。治療を受ける当人達はそれら文書を持ち帰り、じっくり中身を確認して内容に同意できる場合には同意した証として自分の署名をして病院に提出します。この一連の流れをインフォームドコンセントと言います。
幸い、私達の行った病院は英語が通じるところだったので同意説明文書も説明も英語で対応してもらいました。ドイツで体外受精する場合には色々オプションで追加できる技術もありますので、お財布と相談しながら、それらオプションも受けるか説明文書を読みながら検討しました。
体外受精の流れ(前回の続き)
前回の記事で生理開始日に服用する飲み薬を紹介しましたが、今回は注射薬を紹介します。
生理開始日に病院に電話をして16-19日後に次回来院日の予約を入れます。
来院日当日まで、錠剤の飲み薬は服用を続けます。
当該来院日では自分と配偶者の採血と女性は膣エコー検査があります。
この日の採血では女性の場合はホルモン値の他、配偶者(男性)も含めHIVやHBV、HCV等の検査もされます。これらのウィルス検査は体外受精を実施する病院でドイツの法律で決まって実際しなければならない項目のようで、病院に支払う費用とは別に検査所から請求書が来て支払うかたちになります。
私は保険がきいたのか、約€12でしたが、旦那さんは無保険なので約€90でした。
病院で採血と膣エコーを受けると医師からValleteの服用は今日で最後、明日から注射薬を一つ開始するように言われました。この辺りも人によって開始時期は異なると思いますので、私の体験談はあくまで参考程度にしていただけますと幸いです
体外受精の治療で最初に処方された注射薬は以下のものでした。
Decapeptyl IVF 0.1mg/ml: トリプトレリン酢酸塩。
これちらは、ゴナドトロピンという性腺刺激ホルモンを放出する類似の合成ホルモンで、継続して使用することによりダウンレギュレーションによって黄体形成ホルモンや卵胞刺激ホルモンのレベルを低下させます。つまり、自然な体内のホルモン作用による卵胞の成熟や排卵を防ぎます。
こちらは医師から毎日決まった時間に一本、下腹部(おへそより下の皮下脂肪が多い部分)に皮下注射するように指示がありますので、毎日リマインダーを設定して打ち忘れがないように気をつけましょう。一回でも打ち忘れると治療がやり直しになる可能性があります。
打ち方については、病院のスタッフさん(たぶん看護師さん)から教えてもらえますが、日本の病院程丁寧な説明はないです。言語が英語でお互いに第二ヶ国語だったためかもしれませんが、「こうもって、お腹の肉を摘んで、こうして、こうして、はい!終わり」と言った感じで説明1分くらいで終了します。練習の機会もありません。
また、日本の病院で言われるような逆血確認や角度付けて打つとかの説明はありませんでした、針が短いせいか90°に注射針は刺すみたいな感じでした。
心配な方は、日本語で検索すると日本の病院やクリニックが作成したこのような注射薬の打ち方をビデオで公開してますので、そちらを見てから注射してもいいかもしれません。
ただし、添付文書をみるとこの注射薬の打ち方はドイツの看護師さんが言ったとおり90°に刺して打つとあるので、その点は日本の一般的な注射薬と打ち方が異なるのかもしれません。
ちなみに、私はドイツの看護師さんに教わったとおりに打ちましたが特に問題ありませんでした。
医師からは室温保存と言われましたが、薬剤師さんや添付文書からの情報では冷所保存(2〜8℃)とあったので凍結しないように吹き出し口から離れたところに冷蔵庫で保管します。
このようなホルモン剤はペプチドできていて凍結してしまうと使えませんのでご注意下さい。
また、針や薬剤は既にシリンジに装着、装填されてますので針の準備などありませんが、特に薬局でアルコール綿とかももらえないので、消毒液なんかも別で購入しておいた方がいいです。
痛みの程度は予防接種と同じくらいです。針は細く短いですが、打つ時の痛みはあります。打った3種類の注射薬では1番痛かったです。
ちなみに、なるべく痛みを和らげる方法としては打つ予定の30分くらい前に冷蔵庫から出して薬剤の温度を室温になるべく近くすると痛みを抑えられます。
また、注射器には空気が入っているので、針先を上にして注射器を指で弾いて空気を集めて、針先から薬液が出るまで押し子を押して打つ前に空気を抜きます。
副作用には他の薬と同じように添付文書に色々書いてありますが、私は特に気になる副作用はなかったです。
ちなみに、この注射薬は医師から中止の指示があるまで継続して使用します。
次に、Decapeptylを打ち始めてから5日後くらいに再び病院に行って、採血と膣エコーを実際します。
その日のホルモンレベルによって、医師から以下の薬剤の開始をいつから、どのくらいの量で始めるか指示があります。
Puregon 600 IE/0.72ml: フォリトロビン ベータ。
こちらの薬は卵胞刺激ホルモンです。Decapeptylの投与によって自分の自然なホルモンで卵胞を成熟させられない状態ですが、こちらの薬を打ち始めると卵巣にある卵胞が成熟していきます。
こちらの薬剤は以下の写真にあるようにペン型の注射器に自分で薬剤や針をセットして使用します。こちらも基本的に冷所保存になります。
針と薬剤は黄色い箱に入っており、こちらは薬局で購入しますが、ペン型の注射器は病院からもらいます。日本では薬局ですべて提供されますが、ドイツでは別々に提供されるようです。
針の付け方と薬剤の装填に方法は至って簡単です。写真はありませんが薬剤の装填は黄色い筒の部分を回して分解し、中に薬剤をセットしたら黄色い筒を被せて回し締めて完了です。
針は毎回新しいものを使います。薬剤をセットした後に下の写真のように針を刺して、
回し締めていきます。
キャプテンを外すと、更にもう一つキャップがあるので自分の指を刺さないように気をつけながら両方の人差し指でキャップを挟んで上に押し上げます(写真なし)。
最後に針の蓋が緩くなっているところから、蓋を上に向かって取り除きます。下の写真では背景の関係で針が見えませんが、実際には細い短い針がプラスチックの先端から出ています。
最後に手前にダイヤルを回して指示された用量に設定します。例えば、250と言われたら、250のところまでダイヤルを回します。
もし、行き過ぎてしまったら、逆にダイヤルを回さずに最後まで回しきってから押し子(ダイヤルのお尻部分)を最後まで押して下さい。逆にダイヤルを回して用量を合わせようとすると、薬液が針から漏れ出てしまいます。
用量を合わせたら、下腹部の注射箇所を消毒して針を刺し、押し子を最後まで押し切ります。
この時も逆血確認不要で、90°に刺して注射します。
この注射薬は針がかなり細いので痛みは殆どありません。この薬も毎日一回決まった時間に下腹部に皮下投与します。
この薬を打ち始めてから特に注意が必要な副作用にOHSS(Ovarian Hyperstimulation syndrome: 卵胞過剰刺激症候群)があります。一般的には毎月片方の卵巣から成熟した卵胞が一つ排出されますが、薬剤でこのようにコントロールすると両方の卵巣に複数の卵胞が存在して同時に成熟を始めます。そのため、通常ではありえないくらい卵巣が大きくなるので捻転(卵巣が子宮と繋がっている箇所が捻れる)が起こったり、お腹や胸に水が溜まってお腹の張りや息苦しさ、吐き気、急激な体重増加や尿量が少なくなるといった症状が現れることがあります。
そのため、この注射薬を開始したら激しい運動や重い物を持ったりといったことは禁忌で、少しでもこのような症状が見られたら医師に連絡します。私が行っていた病院では、このような時のために患者さんに医師の緊急ダイヤル番号が共有されていました。
この注射薬を開始すると2日に一回くらいのペースで来院が必要になります。来院時は採血と膣エコーをして医師が卵胞の成熟具合を確認して、この注射薬の用量を決めていきます。
そのため、この薬は人や使う時期によって用量が異なります。
ちなみに、こちらの注射薬も使用中、特に気になる副作用はありませんでしたが、採卵日が近づくにつれて、いつもより卵巣が張っているような気はしました。
最後に、採血と膣エコーの結果から採卵日が決定すると医師から以下の注射薬を処方されます。
Brevactid 5000 I.E.: 絨毛性ゴナドトロピン。
このホルモン剤は排卵を促すために使用されます。採卵手術の時間から遡っていつ打たなければならないか、医師から指示がありますので指示された時間に寸分の狂いなく打ちます。打つ時間はこの薬はとても重要なので、10分打つのが早かった、遅かったということがないようにしましょう。
ちなみに、こちらの薬は室温保存になります。針、溶解液、薬剤、注射器、アルコール綿すべて一式まとまって箱に入っています。
こちらも病院では丁寧に説明されませんので、心配な方はネットで注射薬の調剤の動画などを参考にやってみると良いと思いますが、私の方からも少し説明したいと思います。
まず、道具と薬剤を準備します。
アンプルをカットする時には青い○がある箇所を手前にして、アルコール綿で消毒します。濡れてるとやりずらいのでしっかり乾かしてから、親指を赤い線と青い線の間くらいにおいて親指と人差し指でアンプルの上部を握り、利き手でない方でしっかりアンプルの胴体部分を固定します。
斜め後ろに引っ張るようにして思いっきりやると綺麗にアンプルが割れます。この時、指を切ったりする方もいると思いますが個人的には後ろに引っ張るようにして割ると指を切りにくいと思います。
針は2種類あるので、太くて長い方を最初に注射器にセットします。この時に注射器のてっぺん(針をセットするところ)や針の緑色のプラスチックの内側に指やその他が触れないように気をつけます。
針をセットしたら、写真はありませんがアンプルの出口近くの窪み(アンプル開口部に向かってカーブしているところ)に針を固定して、アンプルを少しずつ傾けながら薬液をすべて吸います。なんだか、ごちゃごちゃ言ってしまいましたが、とりあえず溶解液が全部吸えてれば大丈夫です。
以下の写真は薬液を全部吸い終えたとこです。この後、溶解液が針先から出るまで押し子を押して空気を抜きます。
その後に、バイアルのゴム栓部分を消毒して垂直に針を刺します。垂直に刺さないとコアリングといってゴム栓が薬剤の中に入ってしまうことがあるので注意して下さい。
バイアル内にはそのまま押し子を押して溶解液を入れることができます。全部入れたら、注射器とバイアルを片手で固定して机にアンプルを置いたまま水平にゆっくり回して攪拌します。全部溶けたのを確認したら、バイアルを上部、注射器を下部になるように逆さにして、押し子を引いて薬液を全て吸います。
ここでもごちゃごちゃ言いましたが、とりあえず粉末が全部溶けて注射器で薬液を全部吸えてれば大丈夫です。
最後に、針を付け替えて準備完了です。この一連の流れがあるので、打つ時間になる前に余裕をもって準備をしておいた方がいいです。
打ち方は他の薬と同様に、下腹部をつまんで、しかし角度を付けて針は半分程まで刺して皮下投与します。
こちらの薬剤もPuregon同様に重大な副作用にOHSSがあります。少しでも気になる症状があったら重症化する前に医師に連絡しましょう。
その他
針の捨て方:
注射器の針ですが、例えば日本では針は基本的にキャップは針刺し事故の観点から締め直さないですし、使用後の針は医療廃棄物になるので自宅のゴミ箱に捨てることはできません。
専用の容器や針が突きでないような容器にまとめて入れて薬局に持って行くのが一般です。
私は注射薬を処方されたときに、薬局の人に針の捨て方を確認したんですが、普通に黒いゴミ箱で良いよと言われ、「そんな、バカな。。」と思いました。
ちなみに、おそらくアメリカ人(英語)と思われる方が「私は針を一般ゴミに捨てることに抵抗がある」と言って病院にまとめて持参してるのも見ました。
よくよく調べると薬局で針を捨てる容器も売られているようなので、そちらを購入して針を捨て、さらにその容器を黒いゴミ箱に捨てるというのが一番安全なようです。
なお、ドイツでは使い切らなかった薬剤は一般ゴミに捨ててはならないと言われているので、余った薬剤は薬局に持って行った方がいいと思います。
注射時の一般的な副作用:
注射後は少量ですが出血しますし、刺す箇所によって内出血することがありますが、注射薬の使用を中止したら1〜2週間程で治るので心配無用です。
※私は元々医療系の背景(薬剤師)があり、それまでの経験や知識と添付文書(ドイツ語)を翻訳して読んで今回の記事を記載しています。しかし、ドイツで医療資格があるわけではないく、生殖医療の専門でもないので、こちらの記事は参考までに医師の指示に従ってお薬は使用又は中止するようにして下さい。
次回は、採卵手術とその後に続きます。
ではでは。:)