ほら セイシェルの夕陽が
今 海に沈んでくわ
真っ赤なインク 海に流してる
あなたにも見せたいわ

 

セイシェルの夕陽 松田聖子 1983年

この曲は"ひとり旅"の曲。

彼とケンカして"ひとり旅"なのかもしれないし
一緒に旅に行く予定だった彼が
何かの理由で来れなくなったのかもしれません。

ただ、この"ひとり旅"で彼女は
"彼がいかに大切だったか"に気づき、
彼への思いで心が一杯になるのです。

海に沈む真っ赤なセイシェルの夕陽。

あなたにも見せたいわ

沈む夕陽の美しさと
一人でそれを見ている寂しさで、
彼女の目には涙が浮かびます。

少し大人っぽく熱い紅茶を飲みながら、
彼宛ての絵葉書に"追伸のキス"をして。

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これも名曲といわれる
「セイシェルの夕陽」。
聖子の夏アルバム「ユートピア」の
アルバム曲です。

「マイアミ午前5時」「セイシェルの夕陽」は
夏の海のリゾート地が舞台。
両方ともすばらしい曲だと思います。

今回も僕の妄想を交えた小ネタ集でいきます。

1) セイシェルってどこにあるの?

アフリカ東海岸沖の赤道に近い島国です。
今は"セーシェル"と呼ぶのが普通みたいです。
当時は"セイシェル"と呼んでいました。

これは僕が高校時代(1980-82)に使った地図帳。
セイシェルと記載され、首都はビクトリアです。


現代地図帳 二宮書店 (昭53 文部省検定済)

2) きっかけは筒美京平の絵葉書

松本隆はTBSのラジオ番組「風街ラヂオ」で
こう語っています。

(セイシェルは)アフリカ大陸の東海岸の方、
海賊がいっぱいいるところですね。
僕(セイシェルに)行ってないんですよ、本当は
筒美京平さんが行ってて、絵葉書くれたんですね
それが真っ赤なんですよ、夕陽の絵葉書で。
絵葉書見ながらね、いいな、行きたいな、

と思って、詞ができたっていう

京平さんの思いが、こうやって
二転三転して現実になっていくって面白いね。


松本隆 風街ラヂオ #46「松本隆×松田聖子②」

(2025/2/16)
https://www.tbsradio.jp/articles/93725/

松本隆がセイシェルに行っていないという
ことはさておきまして、

この「セイシェルの夕陽」は
大村雅朗の作曲で曲先ですが、
曲をつくる前の段階で、
この筒美の絵葉書に描かれていた
"真っ赤な夕陽"をコンセプトにすることが
決まっていたのではないかと思っています。

この推測が正しければ、
生涯1度も聖子に曲を提供していない
筒美京平
のコンセプトが
大村雅朗、松本隆らの手を経て
松田聖子が歌う曲となったわけです。

筒美京平の聖子の曲はないけれど、
この曲は
"筒美京平コンセプトの聖子の曲"。

その意味で「セイシェルの夕陽」は
面白いと言えると思います。

3)「セイシェルじゃない!」

この曲のレコーディングに苦労した話。
前回「マイアミ午前5時」の記事で書きましたね。
一部再掲します。
インタビュー動画もYoutubeでも見つけたので
貼っておきます。

 

聖子のインタビュー
(「セイシェルの夕陽」については1:26から)
「Video Bible 〜Best Hits Video History〜」
(1995年)より

あと「セイシェルの夕陽」の時も、
やっぱ調子が悪くて
(若松プロデューサーに)
「セイシェルじゃない!」
とか言われて、
「あの夕陽のきれいな感じがないじゃないか」
とか言われて
「ふぅううう…(泣)」って感じで、
もう泣いちゃうって感じで
あの2曲すごく印象にある。


このあと「セイシェルの夕陽」の
作編曲者である大村雅朗が
気分転換として車で聖子をマクドナルドに
連れて行って、レコーディングがうまくいった
という話を前回の「マイアミ午前5時」の記事で
書きました。

さて、ここまで厳しく聖子を叱った若松Pですが、
彼の著書「松田聖子の誕生」にこう書いています。

このとき私はマイアミもセイシェルも

行ったことがなかったが

松本隆さんの説明を聞き、

素敵なところなんだなと
想像しながらレコーディングしていた


うーん... それであの言い方はひどくない?
(松本隆もセイシェル行ってませんでしたけどね)

やはり頑張った聖子を褒めるべきでしょう。

4) 白い貝殻のブレスレット

「セイシェルの夕陽」の歌詞には、


白い貝殻 拾い集めながら ブレスレットを作るわ

とあります。

"白い貝"と言えば、次の曲を思い出すのは
僕だけではないでしょう。

 

白い貝のブローチ (Silhouette) 松田聖子
作詞 松本隆、作曲 財津和夫、編曲 戸塚修

松本隆が初めて松田聖子に提供した曲
3rdアルバム「Silhouette」に収録されています。

「白い貝のブローチ」は別れの曲ですが、
サンセット(夕暮れ)、夏、海、白い貝など、
「セイシェルの夕陽」との共通点があり、
"赤い夕陽" と対照的な "白い貝" は
夏の海の愛情を示すアイテムに思えます


別れの曲の「白い貝のブローチ」の最後は、

白い貝のブローチを海に捨てて泣いたの

ですが、

「セイシェルの夕陽」では

白い貝殻 拾い集めながら ブレスレットを作るわ 

です。
これは彼に対する愛情を示していると思うのです。

5) 松本隆の"ひとり旅"の曲

前述の
「松本隆 風街ラヂオ」#46「松本隆×松田聖子②」
で、「セイシェルの夕陽」について
松本隆はこうも述べています。

わりと聖子さんに、ひとり旅の詞書くよね。
メソメソしてる人が好きなじゃないのね。
凛々しい人が好きなの。『風立ちぬ』くらいから


そう、松本隆が作詞した「風立ちぬ」も
「セイシェルの夕陽」と同じ"ひとり旅"の曲
です。

もうひとつ興味深いのは
石毛礼子が歌う「旅の手帖」
これも松本隆作詞の"ひとり旅"の曲です。

以下の記事で簡単に

「風立ちぬ」と「旅の手帖」の2曲を

比較してみました。

 


「風立ちぬ」は"別れの旅立ち"
「旅の手帖」は"青春の旅立ち"


の曲ですが、内容的に
「セイシェルの夕陽」は「旅の手帖」に近い

と思います

興味ありましたら是非「旅の手帖」の記事も
読んでみてください。

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「セイシェルの夕陽」は松田聖子の7thアルバム
「ユートピア」のアルバム曲。

作詞 松本隆、作曲/編曲 大村雅朗

1983年6月1日リリース。

1997年に早逝した名アレンジャー

大村雅朗の作曲。
聖子に提供した作曲の数は少なめだが、
SWEET MEMORIES」を始め、
真冬の恋人たち」(Candy)、
マンハッタンでブレックファスト

(Windy Shadow)
などの名曲がある。
なかでも「セイシェルの夕陽」は

大村雅朗が一番好きな曲だという。

Drums: 島村英二
E.Bass: 高水健司
E.Guitar: 松原正樹
Keyboards: 山田秀俊
Computer programmer: 松武秀樹
Harp: 山川恵子
Flugelhorns: 数原晋
Strings: 加藤絃楽グループ
Chorus: 山田秀俊、山川恵子
 

セイシェルの夕陽
(SEIKO CALL 〜Live'85〜)
結婚休業前最後のコンサートツアー

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島をめぐる白い船が
岬をまわって消えてゆく

ワラの屋根のバンガローに
今夜は一人で泊まるのよ

樹のハンモック そっと揺らしながら
この絵葉書を書いたの

ほら セイシェルの夕陽が
今 海に沈んでくわ
真っ赤なインク 海に流してる
あなたにも見せたいわ

もしあなたがここにいたら
きっとロマンスが生まれたわ

離れてみてわかったのよ
大切な人は誰かって

白い貝殻 拾い集めながら
ブレスレットを作るわ

ほら セイシェルの夕陽が
今 海に沈んでくわ
世界のどんな場所で見るよりも
美しい夕焼けよ

ほら セイシェルの夕陽が
今 海に沈んでくわ
私は熱い紅茶飲みながら
何故かしら涙ぐむ

「セイシェルの夕陽が」絵葉書に
「海に沈んでくわ」追伸の
「セイシェルの夕陽が」キスをして
「海に沈んでくわ」…


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以下は松田聖子の過去記事の一部です。
聖子の記事はこれで23個め。