ベルリオーズ : 幻想交響曲 | JohnnyClassic

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ロック・ヴォーカリストJohnny が、厳選し紹介する
次世代にも引き継いで行きたいクラシックの名盤選集です
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【指揮】 クラウディオ・アバド

【演奏】 シカゴ交響楽団

【録音】 1983年

 

私自身、割と夢を見て覚えている方で、起きてから半日経っても、その夢の雰囲気を引きずっている時もあります。翌日にはまた違う夢で薄れていきますが。奇妙な夢を見るのが怖くて、眠りに落ちるのが不安な時すらあります。と言っても、眠たさでストンと落ちてしまうのですが(^^;)

 

夢に出てくる女性は、不思議な事に、これまで見た事もない顔の女性であることが多く、過去の女性であることもあります。過去の女性…私も色々とありました。実のところ、ベルリオーズの様に、劇団の女優さんに何度か花を上げた事もありました、ベルリオーズ同様、全く取り合ってもらえませんでしたけどね(笑)。思い返すと、酷い対応をされたなあ、なんて思います(プンスコ)。なので今はもう、な~んとも思っていませんけどね。

 

さて、3歳年上の女優ハリエットに純潔さを求め、まさに恋焦がれていたベルリオーズでしたが、その後、醜聞なども聞くに及ぶと、いわゆる愛が憎しみに変わるというやつで、「主人公の青年が麻薬の中毒で朦朧とし、その幻想の中で彼女を殺害し、自身は断頭台に引かれていく」という、NGワードばかりの普通に考えたらドン引きというか怖すぎる曲を書きます。が、曲中に現れる彼女のテーマが、実は音楽史の中では、「固定楽想」というものを生み出した画期的な事柄となります。

 

数年後にこの曲を耳にしたハリエットは、自身の事を現した曲だと気付き(演奏会用の説明のパンフレットもベルリオーズ自身が書いていたので、文章で見ても伝わったのかも)、不思議な事に、引くどころか、そこまで思ってくれているなんて、となり!?なんと二人は結婚する事に。

 

よく、男友達同士で、「頭の中をのぞいてくれたら、どれだけ思っているか、好きな女性に分かってもらえるのになあ」なんて話をします。男の見てくれが良くなくても、女性にとってはやっぱり、一番思われるのが一番幸せな様に思うんですよね。中途半端にお金や条件で選んでも、その後上手くいかないでしょう。

 

まさにハリエットは、ベルリオーズの思いを分かってくれたわけで、そこは男としては、良かったなあ、と思います。が、子供も出来た後、別居となります。まあこの辺りは、若い人が勘違いしがちな、結婚は決してゴールでなくあくまでスタートだという事です。どんな美女と熱々だったとしても、実生活の中では必ず冷めてきます、そういうもんです(苦笑)。別居後にハリエットは亡くなり、ベルリオーズはまた再婚します。が8年後にその奥様も亡くなります。

 

また、ハリエットへの思いが叶う前には、別の女性と婚約をしていましたが、その母親から、娘は他の男と結婚します、という手紙を受け取り、彼女と相手と親族ともども殺害しようと計画していました(母親への憎悪はわかる、酷いな)。ところが向かう馬車の中で、海の波の音を聞いているうちに心が落ち着き、引き返すことになったといいます。そんな人達と関わって自分を落とす必要はなく、目の前の事に囚われ過ぎなかったのは良かったですね。

 

と、彼のお話ばかりになっていますが、この交響曲は、先の通り、ハリエットへの愛と憎しみが渦巻く中で書かれたものです。第1楽章は出会い、第2楽章は舞踏会、第3楽章は孤独、第4楽章は断頭台、第5楽章はあの世での再会、という構成になっており、第5楽章は更に4つに分かれます、このCDでもちゃんとチャプターが振られていますね。

 

第1楽章は彼女のテーマがメインで明るく、出だしとしてはいいですね。第2楽章は優美で好きです。特に、最後の締め方ですが、アバドは、弦楽の音を優美に伸ばして締めています、ここが大きなポイントです、こういう解釈は少ないですね。殆どが、バシっ!と締めて終わるのですが、それだと何だか最後だけ厳しい感じになってしまいます。最後を穏やかに締める事で、終始優美な雰囲気の楽章として聴けます。

 

第3楽章、実はこれが退屈で苦手です、なくても良かったんじゃなかろうか。幻想交響曲が苦手な人(=私)は、この楽章がある事で、冗長な5楽章形式になっている事が要因かもしれません。単体の管弦楽曲として聴けば悪くないかもしれませんが、第3楽章が16分以上もあるのは辛いですね。

 

第4楽章は、テンポが良く、チャイコフスキーの悲愴の第3楽章と似た雰囲気の様に思います。チャイコフスキーは、ロシアにやってきたベルリオーズの歓迎会で式辞を読んだそうです。断頭台に上がるのは最後のところの雰囲気で伝わってきますが、それまでは勇壮な音楽が楽しめます。が、残念なことに、殆どの盤がこの楽章のテンポは遅いんですね。アバド盤はスピード感があって良いです。またこの楽章は一番盛り上がる楽章なので、アバドは反復して6分台に仕上げています。他の盤はテンポが遅くて4分台です。アバドはブラームスのでも反復して長くしがちですが、ここでの反復は的確です、テンポも良いので聴いていて飽きる事はなく、むしろここにクライマックスの照準を合わせてきている感じです。

 

その分、第5楽章は少し退屈になってしまいます。第3楽章が要るのであれば、第4楽章で終わっておいても良かったのでは、と思います。フィナーレの締め方は、アバドはとても良いです。他の盤と聴き比べましたが、やはり他の盤の殆どは遅く、勢いに欠けています。第2楽章の締め方、第4楽章のテンポ、このフィナーレの締め方で、アバド盤を選んだというところです。

 

楽団はシカゴ、ショルティから借りてというところですが、金管陣に全く不安がないので、そのフィナーレも安心して任しているのがわかります。この辺りがシカゴで録音した理由かな、とも思います。ショルティは70年代に録音しています。かつて、このブログではそちらを挙げていましたが、やはり少し剛直過ぎるのと、演奏時間も殆どの楽章でアバドの方が短くて聴きやすいですね。やはり後出しジャンケンの方が勝つでしょうか。

 

当初のCDでは、とても遠い音像でぼやけた感じで、幻想だから?なんて思ってました。ショルティとシカゴのLONDONへの録音はとてもクリアでしたしね。グラモフォンはLONDONよりは柔らかい音にはなりますね。アバドとロンドン響のグラモフォンの一連の録音と同様、音があまり良くない印象があったので選ばなかったのですが、最近、Ulitimate Hi Quality CDとしての発売のを買い直して聴いてみると、とても良い音で驚きました! 特にリマスターはされていないのでしょうが、UHQCDの良さを実感しました。広島の「平和の鐘」の音も以前所有していたCDよりクリアに聴こえてきます。私が以前所有していた1000円のCDとは原盤が違うのかもしれませんね。

 

という訳で、音が良くなり、アバドが、他の盤とは異なる特徴を打ち出して、それが良い結果となり唯一無比となっているこの盤が、自身の中では決定盤です。ジャケットも幻想の中では一番好きですね、昔、最初に購入した際は、このジャケットに惹かれて購入したものでした。